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「地球の歩き方」30周年記念企画

ダニー・ボイル監督インタビュー


Danny Boyle  ダニー・ボイル監督

『スラムドッグ$ミリオネア』
ダニー・ボイル監督インタビュー

ハリウッド大作ではない、有名スターも出ていない非英語作品の映画がこれほどまでに多くの人に支持されたのはどうしてだと思いますか。

映画には人を引きつけるエネルギーがあると思うんだ。王道をいく映画を逃避にたとえる人もいるよね。もしそれが本当だとすれば、全ての映画の舞台は、砂漠や海辺や美しい場所になるだろう。でも実際多くの人は街に住んでいる。そして大半の映画も街が舞台だ。ぼくたちは街で起こる物語を欲しているんだと思う。この映画の舞台は、地球という星で最大級の街、ムンバイだ。それが中毒になるようなエネルギーを発散している。すべてのものが一緒くたになっていて、ルールがない。極端なもの間逆なものが隣り合って存在している。その混沌がこの映画にエネルギーを与えてくれたんじゃないかな。

そんな場所での撮影は大変だったのではないでしょうか。

ムンバイはぼくにとってはまるで海。いつも同じようでいて、毎秒ごとに変化している。ある場所を見つけ、そこで撮影することに決める。カメラを設置するつもりで次の日に行くと、全く様子が違っている。そして翌日にはそこに壁が現れるんだ! そうこうして、やっと映画を撮り始める。最初は見物客も数人だけだ。だがカメラをセットして振り向くと、文字通り数千人が後ろから見ているんだよ!
彼らは1日中、何が起こるか見続けるんだ。あんなに混雑していたら、身動きもとれないよ(笑)。

そんな環境の中、どうやってあれだけ疾走感のある映像を捉えられたのでしょうか。

街の恩恵を受けた。ムンバイにはエネルギーの巨大な波がある。1日20時間続く波だ。ぼくはできる限り、その感覚を取り込みたいと思った。それには同じ速さで動くしかない。あの街で生きるにはそれしか方法がないんだ。街に入り込み、その中に浸り、それを少しだけ捉える。台本どおりの統制された正確なシーンは撮れないとわかっていた。だがそれを補って余りある生命力を得られる。生きている感覚。あの街は命を称えている。死も暴力もたくさん存在するが、生命力溢れる感覚に圧倒される。だから我々がしようとしたことは、それを変えたり、コントロールしようとするより、むしろ、その生命力を捉えるために全力を尽くすことだったんだ。

監督のお気に入りのシーンは冒頭のスラム街のシーンだとか。

あるがままの姿を映し出そうとしたからね。西洋ではスラム街と聞くとすぐに「ああ、気の毒に」となる。だがスラムには素晴らしい場所もある。もちろんトイレだってちゃんとしてないくらい過酷な環境ではある。だが人々は自分の住む街を大切に思い、そこで育ち、家族を養い、仕事をする。ぼくたちはスラム街でたくさん撮影した。素晴らしい時を過ごし、素晴らしい人たちと会えた。彼らは楽しい人たちだ。助けてくれる人もいる。扱いにくい人もいる。それはどこでも同じだろ(笑)。壁のない、人間同士のつながりが持てた。だから僕にとって映画の中で一番好きなシーンなんだ!

アカデミー賞授賞式直前に来日した監督は、分刻みのスケジュールの中、カット・パイナップルのパック持参で取材に答えてくれた。「3時間寝れば大丈夫だから(笑)」と、熱くインドでの撮影の様子を語っていた監督。きちんとした自身の撮影ビジョンを持ち、周到な用意をしながらも、決してそれを押し通すのではなく、インドという場所に身をゆだねたというロケ現場。きっと、スクリーンに広がる映像の中には、カメラの後ろにいる何千人ものインドの人々の熱気が映りこみ、映画をパワーアップさせていたに違いない。

ダニー・ボイル監督

Danny Boyle
ダニー・ボイル監督

1956年イギリス、マンチェスター生まれ。スコットランドを舞台にした『シャロウ・グレイヴ』(95)、『トレイン・スポッティング』(96)でユースカルチャーの鼓動を捉え、英映画界を覚醒、全世界的衝撃を与える。その後、ハリウッド映画『普通じゃない』『ザ・ビーチ』を監督。イギリスに戻り『28日後…』『ミリオンズ』で、独自の映像感覚が復活。前作『サンシャイン2057』では、真田広之を起用。



スラムドッグ$ミリオネア

『スラムドッグ$ミリオネア』
“クイズ・ミリオネア”の答えは
全てインドのスラムにあった!?

世界中で人気のクイズ番組“クイズ・ミリアネア”。インド、ムンバイでひとりの少年が、あと一問で2千万ルピーを獲得しようとしている。スラム出身の無学の少年が全問正解できるはずがないと不正を疑われ、彼は警察に捕まって尋問を受ける。そこで彼が語ったストーリーとは…


監督/ダニー・ボイル『トレイン・スポッティング』
脚本/サイモン・ビューフォイ『フル・モンティ』
出演/デーヴ・パテル、フリーダ・ピント、イルファーン・カーン
配給/ギャガ・コミュニケーションズ 2008年イギリス映画

2009年4月18日全国ロードショー
映画公式サイト http://slumdog.gyao.jp/site/


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2009年05月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部