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スローフードっていったい何?

最近よく耳にするようになったスローフードという言葉。確か、食に関する運動だったような……? 聞いたことはあるけれどホントのところよくわからない、という人も多いはず。イタリアの食を語る上で覚えておきたいスローフードについてわかりやすくご紹介。

スローフードというフードはない

イタリアに住んでいて雑誌の仕事をしていると、よく「スローフードを売ってる食料品店教えて下さい」とか「スローフードなレストランを紹介してください」とか理解不可能な質問をされることがしばしばある。というのも最近日本ではフードに限らず「スローな」という冠言葉がやたら氾濫しているのでこういう言葉の使い方はごくごく普通らしいから。最近は日本の雑誌の見出しで「スローなインテリア」という?な言葉を見かけた。「スローな旅」というのもあったなぁ。

真っ赤なトマトはほとんどがソース用

真っ赤なトマトはほとんどがソース用

見直される伝統的な味

スローフード運動発祥の地イタリアだからといって「スローフードあります」という看板を掲げた店があちこちにあるわけではない。そもそもこの運動は世界中どこでも食べられるM社のハンバーガーを筆頭とするファストフードに対するアンチテーゼ。工業製品でなく昔ながらの製法、食材、地域性、風土などに根ざした伝統的手作り食品を見直し、再解釈することである。特に東西南北地形的に変化に富み、歴史的にも都市国家が独自の文化を生み出して来たイタリアでは街ごとにその食文化が違うといっても大げさではないほど千変万化、バラエティに富んでいる。

ズッキーニは花も料理に

ズッキーニは花も料理に


しかしながら昔ながらの味や製法が現代社会にそのまま受け入れられているわけでもなく、EUの食品規制で非衛生的と認められた食品は絶滅の危機に瀕している。例えばカビだらけの洞窟の中で熟成させるチーズや、虫入りのチーズ、動物の血を使った生タイプのサラミなどなど。伝統的であるということは現代の衛生観念からすれば非衛生的と思われる側面があることも事実だ。スローフード運動はこうした絶滅対象食品を救う「ノアの方舟計画」も推進している。

絶滅対象食品も復活

「プレシディ」と呼ばれる絶滅対象食品リストに指定された食品は、イタリア中のいわゆる「スロー系」のレストランやワインバーで珍重され、メニューを飾ることも多くなる。フィレンツェで言えば希少豚「チンタ・セネーゼ種」のサラミや生ハムと「ラルド・ディ・コロンナータ」という大理石の槽で熟成させた豚の脂が2大有名食品で、その知名度は高く、一般市民の間にも広く知れ渡っている。イタリア各地でさまざまなプレシディ食品を食べているが、そのつど思うのは、この2大食品はともかく、すべてのプレシディ=おいしいというわけでもない。絶滅するのはそれなりにわけがあるだ、とも思う。

イタリアを代表する生ハムのパルマハムをはじめ、サラミやソーセージなど種類は豊富

イタリアを代表する生ハムのパルマハムをはじめ、サラミやソーセージなど種類は豊富

イタリア人の食へのこだわり

自分の土地の食品、料理にこだわるということに関しては非常に頑固なイタリア人だけにこの運動はすんなりと受け入れられたが、「スローフード」という言葉自体は意外にも一部レストランやワイン関係者をのぞけばそれほど浸透していない。しかしその哲学は「国民総グルメ」なイタリア人の間にしっかりと根を下ろした点において、言葉とイメージが先行した日本とは正反対である。

土地の食品や料理を見直す時代だ

土地の食品や料理を見直す時代だ


ちなみにスローフード協会が発行するレストランガイド「オステリエ・ディ・イタリア」に掲載されているトラットリア、オステリア、食料品店はいずれも食材や伝統に対する強いこだわりを持つ店。機会があれば一度訪れて現場のスローフード事情を体験してみることをお勧めする。

Profile
池田匡克(いけだまさかつ)
ライター。フィレンツェ在住。
「地球の歩き方イタリア鉄道の旅」では1ヶ月に渡り東西南北イタリア中を電車で旅する。近著に「シチリア美食の王国へ」(東京書籍)、2004年8月末には最新刊「イタリアの市場を食べ歩く」(東京書籍)発売予定。
イタリア国立ジャーナリスト協会会員。
2004年08月