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ドイツ鉄道の旅

Text & Photos by NODA Takashi

ドイツは、美しい自然の中に旅情あふれる落ち着いた街並みが点在し、鉄道で周遊するにふさわしい国だ。世界遺産も文化遺産を中心に新登録を含めて30カ所ある。ここでは、そのうちのいくつかをドイツ鉄道(DB)に乗ってまわるプラニングを紹介してみたい。

ICE-T、ライプツィヒ中央駅にて

ICE-T、ライプツィヒ中央駅にて

ドイツ 地図

美しきライン河の流れとケルンの大聖堂

  • ▼ライン渓谷上流中部 (登録年:2002年)
  • ▼ケルン大聖堂 (登録年:1996年)
地図

ドイツの旅は、日本からの航空機が到着するフランクフルトから始まる。まずは、空港駅からコブレンツ経由の特急列車インターシティ(IC)[*table:911]に乗ってケルンへ向かおう。この駅からはケルン方面へ向けてDBご自慢の高速列車ICE[table:910]も走っているが、ICEはトンネルが多い新線を疾走するのでライン河の美しい車窓風景は楽しめない。ケルンまで、ICはICEの倍以上の2時間以上という所要時間がかかるけれど、従来からある風光明媚なライン左岸をのんびりと走っていく。

マインツからコブレンツまでの区間はライン河に沿って古城が次々と現れ、ブドウ畑やローレライの奇岩など見どころも一杯だ。このライン河中上流域は、世界遺産に登録されている。時間に余裕があればローカル列車に乗り換えて途中下車するのも楽しいが、車窓から景色を眺めたり、食堂車でビールやワイン片手に景色に見とれるだけでも充実した時が楽しめるだろう。

ライン河を少々離れ、ボンを過ぎるとまもなくケルン中央駅だ。その駅前にそびえ立っているのが有名なケルンの大聖堂。これも世界遺産に登録されている。せっかくだから神妙に中を見学し、体力に自信があれば階段で尖塔の上まで昇ってみたい。ケルンの街並みやすぐ下を流れるライン河、そこを鉄橋で渡る列車が手に取るように眺められる。

ライン河畔ボッパルトを走る2階建てローカル列車

ライン河畔ボッパルトを走る2階建てローカル列車

大聖堂とケルン中央駅

大聖堂とケルン中央駅


*本文中の[table:000]は、トーマスクック ヨーロッパ時刻表のテーブルナンバーに対応しています。

バルト海の女王リューベック

  • ▼ハンザ同盟都市リューベック (登録年:1987年)
地図

ケルンからは、ICE[table:810,825]やICでハンブルクへ向かう。4時間前後の旅だが、直通列車は多くない。ハノーファーやドルトムントでの乗換えとなるが、ICE、IC同士の乗り継ぎは同じホームの反対側へ何歩か歩くだけという便利さ。DBの機能的な便利さも体験してみたい。ハンブルクからは、北欧へ向かう「渡り鳥コース」[table:825]をたどって古都リューベックへ。デンマークへ向かう国際列車はシーズンには満員となるので、あえて快速列車(RE)に乗ってみよう。それでも50分ほどの旅だ。リューベックが近づくと、教会の尖塔がいくつも見えてくるが、このリューベックは街全体が世界遺産に登録されている。

中央駅を出て少し歩くと、街の玄関ホルステン門が見えてくる。中世の旅人のように門をくぐって街に入ると、茶系に統一されたしっとりとした佇まいにタイムスリップしたような感じにとらわれる。多くの教会、文豪トーマス・マンゆかりの地、名物マルチパンなど楽しみは一杯だ。

車窓から尖塔が見えてくると間もなくリューベック

車窓から尖塔が見えてくると間もなくリューベック

街のシンボル、ホルステン門

街のシンボル、ホルステン門

ベルリンの博物館の島

  • ▼ベルリンのムゼウムスインゼル(博物館島)
    (登録年:1999年)
  • ▼ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群
    (登録年:1990年、92年拡大、99年拡大)
地図

ハンブルクに戻って、ベルリン方面へ向かうICE[table:840]に乗車する。2時間半弱ノンストップでベルリン・ツォー駅着。首都ベルリンには、博物館の島と呼ばれる場所がある。川の中洲にペルガモン博物館、旧ナショナル・ギャラリーなど4つの博物館が集まったところだ。ドイツのというよりは世界の貴重な文化遺産が圧倒的な迫力で展示されている。また、西の郊外ポツダムにはサンスーシー宮殿がある。夏の離宮として建てられたものだが、美しい庭園は散策にもうってつけだ。

フリードリヒ大王の愛したサンスーシー宮殿

フリードリヒ大王の愛したサンスーシー宮殿

博物館島にあるベルリン大聖堂

博物館島にあるベルリン大聖堂

古典主義の都ワイマール(ヴァイマール)

  • ▼ヴァイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群(登録年:1996年)
地図

ハンブルク始発のICE[table:840,850]に再度ベルリン・ツォー駅から乗車すると、列車は何もない平原を淡々と南下する。2時間弱で、バッハゆかりのライプツィヒ着。ここで別のICEに乗り換えて、西に向かうフランクフルト行きに乗ると50分ほどでワイマールに停車する。

ワイマールは小さな町だが、かつてここに集った文化人の数は相当なもの。しかもそうそうたる人物ばかりだ。国民劇場の前にはゲーテとシラーの銅像が立っているが、この二人を軸に、音楽家リストなども活躍した。彼らゆかりの建物を訪ね歩くだけでも、歴史の重みや文化の豊かさを存分に感じ取ることが出来るだろう。 また、1919年から25年まで、バウハウスのワイマール時代の歴史を物語るバウハウス博物館も世界遺産に登録されている。

国民劇場前のゲーテとシラー像

国民劇場前のゲーテとシラー像

マルクト広場に面して建つ市庁舎

マルクト広場に面して建つ市庁舎

ドイツのベニス、
バンベルクの美しい街並み

  • ▼バンベルクの街(登録年:1993年)
地図

ライプツィヒに戻って(*1)、ミュンヘン行きのICEに乗りかえて2時間半。列車は南ドイツ・バイエルン州に入り、小さな街バンベルクに停まる。街の中心は駅から少々歩かなければならないが、レグニッツ川に沿って並ぶ街並みは「小ベニス」とも呼ばれる。また石畳の道を歩いていくと丘に聳える大聖堂も見えてくる。世界遺産に登録されたこの街は、独特のラオホビールや、世界的に有名なバンベルク交響楽団でも知られている。小さいけれどきらりと光ったものを持った街であり、数時間の滞在ではもったいない場所だ。

*1 最短を選ぶなら、ワイマールからイエナ経由でバンベルクへ。
イエナでは西駅からイエナ・パラディエス駅への市内移動が必要

川沿いの家並みはまさに小ベニス

川沿いの家並みはまさに小ベニス

バンベルク駅

バンベルク駅

ヴュルツブルクの司教館

  • ▼ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場(登録年:1981年)
地図

バンベルクからICE[table:875]に乗ること35分で、マイスタージンガーの街ニュルンベルク。ドイツ鉄道発祥の地でもあるが、ここからハンブルクやフランクフルト方面へ向かうICEに乗り換えて50分でヴュルツブルクに到着だ。ICEの全国ネットワークにとって中継駅の役目も果たす要の駅であるが、この街は、有名なロマンティック街道の起点でもある。それにふさわしく、この街のシンボルとも言うべきレジデンツ(司教館)とその庭園が世界遺産に登録されているので訪ねてみよう。

レジデンツの基本設計はバロックの天才建築家バルタザール・ノイマン 写真提供:(c)ドイツ観光局

レジデンツの基本設計はバロックの天才建築家バルタザール・ノイマン
写真提供:(c)ドイツ観光局


ヴュルツブルクからICやICE[table:920]に乗ると1時間でフランクフルトだ。こうして時計回りにドイツを一周して世界遺産を訪ねる旅は終わる。すべてICEをメインとした列車の旅。多くの列車を乗り継いだが、ドイツ鉄道の比較的正確なダイヤとネットワークの万全さには安心して身を任せることが出来るだろう。

■ドイツの世界遺産を列車で巡るには

こうしたDB(ドイツ鉄道)の旅に欠かせないのがユーレイルパスやジャーマンレイルパスなどの鉄道パスだ。ICEやICは、建前はともかく、実際には予約なしで乗れるので気ままな自由旅行には欠かせないアイテムだ。わざわざ切符を求めて長時間駅の窓口で並ぶという時間のロスを避けるメリットは計り知れない。

▼鉄道パス&乗車券
http://www.arukikata.co.jp/eurail/
▼ジャーマンレイルパスの料金と購入
http://www.arukikata.co.jp/travel/europe_rail/jp/germanrail.html

野田 隆(のだ たかし)

名古屋市出身。東京都内の高校で、英語とドイツ語・ドイツ文化を教えるかたわら、休暇を利用してヨーロッパを旅し、紀行エッセイや記事・写真などを発表している。 日本旅行作家協会評議員。著書に『ドイツ=鉄道旅物語』(東京書籍)『ヨーロッパ鉄道旅行の魅力』(平凡社新書)『地球の歩き方 BYTRAIN ドイツ&オーストリア鉄道の旅(共著)』(ダイヤモンド社)など

http://homepage3.nifty.com/nodatch/

2004年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部