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中欧二都市(ウィーン、ブダペスト)にエリザベートの面影を訪ねる

今春、シシィの愛称で知られる皇妃エリザベートの元居住空間を公開する博物館がウィーン王宮のなかにオープンした。それに伴って、ハプスブルク家の美貌の皇妃エリザベートが、最近また注目を浴びている。美貌の皇妃と聞くからには上品な立ち居振舞いの箱入りのお嬢様を想像するだろう。しかし、彼女は皇妃でありながら、宮廷のしきたりや社交界の付き合いを嫌い、また、趣味としては馬術や詩作を好む「自由奔放」という言葉がよく似合う皇妃だったのだ。「籠の中の鳥」になることを拒みながらも、そうはさせまいと縛りつける宮廷にて、彼女は人生に失望し、死にあこがれさえしたのだった。 皮肉なことに、彼女は高位高官を嫌うアナーキストによって暗殺されてしまうという悲劇的な最期を遂げている。そんな伝説深い彼女とゆかりの深い世界遺産の

ハプスブルク家の皇妃エリザベート(1830〜1898)。舞踏会衣装に身を包み、ダイヤモンドで髪を飾っている(提供:オーストリア政府観光局/撮影者)

ハプスブルク家の皇妃エリザベート(1830〜1898)。舞踏会衣装に身を包み、ダイヤモンドで髪を飾っている (提供:オーストリア政府観光局/撮影者)


町がウィーンとブダペストだ。すでに滅亡したハプスブルク王朝のノスタルジー香る二都市にエリザベートの面影を重ねて旅をしてみたい。

ハプスブルク家の本拠地ウィーン

  • ▼ウィーン歴史地区(登録年:2001年)
  • ▼シェーンブルン宮殿と庭園群(登録年:1996年)
皇室の夏の離宮としてエリザベートも滞在したシェーンブルン宮殿

皇室の夏の離宮としてエリザベートも滞在したシェーンブルン宮殿

ウィーンは、ハプスブルク家の栄華とともに繁栄した町だ。優美さを漂わせながらも堂々とした町並みは、何度訪れても飽きさせない魅力がある。国立オペラ座を始め、シュテファン寺院、王宮、国会議事堂、市庁舎、ブルク劇場など、リンクと呼ばれる環状道路沿いには、歴史を感じる美しい遺産が散りばめられている。

また、リンクから少し離れたところには、ハプスブルク家の居城であったシェーンブルン宮殿がそびえたち、今もきれいに手入れがなされているその広大な庭園は、四季折々の花で訪れる人の目を楽しませてくれる。
しかし、宮殿や庭園がどんなに豪華絢爛で美しくあっても、王宮の規律のなかで生きる苦痛から、エリザベートは決してウィーンを愛することはなかった……。
ウィーンの誇るべき歴史と文化を象徴するものとして、1996年に「シェーンブルン宮殿と庭園郡」、2001年には「ウィーン歴史地区」が世界遺産に登録されている。

カフェ巡りや買い物を楽しめる王宮までの道(グラーベン)

カフェ巡りや買い物を楽しめる王宮までの道(グラーベン)

シシィ博物館で見るエリザベートの素顔

2004年4月、ウィーン旧市街にある王宮内に、シシィ博物館がオープンした。ここは皇妃が宮廷で使った豪華な調度品を見せる博物館ではない。彼女の日常的に使用した美容器具や人となりがわかるようなエピソードで溢れた大変興味深い館となっている。例えば、生前彼女が使用していたダイエット器具の置いてある部屋をのぞくと、彼女の美貌とスタイルが努力なしに維持されていたものではないことがわかる。身長173センチ、体重は45〜47キロという信じられないプロポーションを保つために毎日、木でできた吊り輪にぶら下がり、侍女もついてこられない速さで何キロもウオーキングをしたりしたという。また、断食療法として、何日もスープと果物、あるいは卵白を塩だけで味付けしたものを飲むという食事をとり続けたりもした。また、なんと彼女の暗殺に使われた凶器も展示されている。宮廷を嫌い、死にあこがれてさえいた彼女がテロリストによる暗殺されて死を遂げるとは、その悲劇的な結末を嘆かずにはいられない。

王宮内のシシィ博物館入り口

王宮内のシシィ博物館入り口

さらに中に入るとシシィの影絵が導いてくれる

さらに中に入るとシシィの影絵が導いてくれる

エリザベートの愛したハンガリー

  • ▼ドナウ河岸、ブダ城地区とアンドラーシ通りを含むブダペスト
    (登録年:1987,2002年)

宮廷の堅苦しいしきたりを嫌ったエリザベートはウィーンにいることを苦痛に感じ、療養という名目でしょっちゅう旅行へ出かけていた。なかでもエリザベートが好んだ場所がハンガリーだ。名馬の産地として知られるハンガリーは、彼女が愛した馬術を楽しむ最高の場所でもあった。1866年、普墺戦争に敗れたハプスブルク家がドイツ統一から除外され、翌年オーストリア=ハンガリー帝国が成立したときには、皇帝フランツ・ヨーゼフとエリザベートはハンガリー王として君臨することになった。その戴冠式はブダペストのマーチャーシュ教会で行われた。当初、ハプスブルク家を快く思っていなかったハンガリー民族だが、ハンガリーの衣装に身をつつんだエリザベートの美しい姿を見たとたん、その態度はすぐに好意的なものに変わったという。「ブダペスト」は1987年、「ドナウ河岸とブダ王宮地区」は2002年に世界遺産に登録されており、ドナウ川沿いに広がる美しい町並みは「ドナウの真珠」と称えられている。

(上)独特の文様とその色づかいが美しいマーチャーシュ教会内部

(上)独特の文様とその色づかいが美しいマーチャーシュ教会内部

(右)ハンガリー王妃となった際の戴冠式が行われたマーチャーシュ教会

(右)ハンガリー王妃となった際の戴冠式が行われたマーチャーシュ教会

ウィーン、ブダペスト周遊旅行のすすめ

「漁夫の砦」という高台から見渡せるドナウ川の流れとブダペストの町並み

「漁夫の砦」という高台から見渡せるドナウ川の流れとブダペストの町並み

日本からウィーンへは、直行便が出ているのでアクセスもしやすい。ウィーンの市内をたっぷり観光して、コンサートなども楽しみたければ少なくとも3泊はしたいところ。ウィーン、ブダペスト間の移動は列車の旅がおすすめだ。ウィーンからブダペストへの国際列車は1日6本運行している上、片道約3時間で行けるので、日帰りもしようと思えば可能。

何泊かできるならば、ブダペストの市内観光のほか、エリザベートがハンガリーの居城として好んで訪れていたゲデレー宮殿(ブダペストより列車で約40分)にも足をのばしてみたい。 ウィーンやブダペストを旅していると、必ずエリザベートグッズ(絵はがきやお菓子などは色々な種類のものが見られる)に出合うのでそれを集めるのも一興だ。彼女の肖像が描かれたチョコ(シシィチョコはモーツァルトチョコと並んでウィーンの定番)、彼女の好物だったすみれの花びらの砂糖漬けなどを試してみては?

シシィの好物だったすみれの花びらの砂糖漬け(写真はカフェ・ゲルストナーのもの)

シシィの好物だったすみれの花びらの砂糖漬け(写真はカフェ・ゲルストナーのもの)

■ホーフブルク王宮見学

詳細:皇帝の部屋、シシィ博物館、銀器コレクション

2004年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部