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韓国の古都・慶州を訪ねて 〜新羅の栄華と仏教美術〜

Photos by SATO Kenichi Text by HATTORI Akihiro

韓国南部の古都、慶州(キョンジュ)は新羅の都だった町。千年の時を経て残る新羅の遺産は、現代人が見ても新鮮な感動を呼ぶ素晴らしいものが多い。2000年の世界遺産登録の際も「慶州の歴史地域」という形で市内全域が登録されたわけだが、これは大小さまざまな遺跡が点在する慶州の特徴を表している。慶州郊外にある「石窟庵(ソックラム)と仏国寺(プルグクサ)」も1995年に世界遺産に登録されているが、新羅の遺産であることには変わりない。ここでは王朝の栄華を偲ばせる新羅の遺産や仏教美術を紹介してみたい。

仏国寺・大雄殿(本殿)前の多宝塔(奥)と釈迦塔(手前)。多宝塔の形はほかに例を見ない

仏国寺・大雄殿(本殿)前の多宝塔(奥)と釈迦塔(手前)。多宝塔の形はほかに例を見ない

▼慶州の歴史地域群(登録年:2000年)

石仏の宝庫、南山(ナムサン)

まずは今まであまり知られていなかった南山(ナムサン)から。南山はその名の通り慶州の南側に広がる山々で、標高はおおよそ400〜500mくらい。新羅後期に作られた石仏があちこちに点在する聖なる山だ。新羅の人々は清浄なる地を求めて山深く分け入り、そこに仏の姿を刻んだのだという。
現在の南山は韓国人の山歩き好きも手伝って、ハイキングの1日コースとして地元の人に親しまれている。旅行者でも時間があれば石仏巡りをしながらの南山横断ができるのでトライしてみたい。ただし、売店や休憩所はないので、歩きやすい靴や食料と水、常備薬といった最低限の装備は欠かさずに。

七体の磨崖石仏がある七仏庵。書出池からここまでなら割と楽に行ける

七体の磨崖石仏がある七仏庵。書出池からここまでなら割と楽に行ける

南山は韓国各地からハイカーが訪れる有名スポット

南山は韓国各地からハイカーが訪れる有名スポット

小高い崖上にある神仙庵。人ひとりがやっと立てる場所だが、眼下の眺望は素晴らしい]

小高い崖上にある神仙庵。人ひとりがやっと立てる場所だが、眼下の眺望は素晴らしい

肌に刻まれた磨崖大仏。よくも彫ったものと感嘆せざるを得ない

肌に刻まれた磨崖大仏。よくも彫ったものと感嘆せざるを得ない

仏の国を具現した仏国寺と石仏の傑作・石窟庵

  • ▼石窟庵と仏国寺(登録年:1995年)

地球の歩き方「韓国」04-05版の表紙にもなっている仏国寺(プルグクサ)。慶州特産の花崗岩で土台を組み上げ、その上に木造の楼閣が建てられている。その特異な姿はあまりにも有名だ。注目したいのはその構造。地上が人間界で、石段の上が仏の国ということになっている。石段を上って“極楽浄土”の世界に行くと、その境内にはユニークな形の多宝塔と直線的な釈迦塔が建っている。本殿などは文禄・慶長の役の際に焼き払われて後代に再建されたものだが、これらの石塔は新羅時代からのもの。釈迦塔の中からは世界最古の木版印刷物といわれる無垢浄光大陀羅尼経が発見されている。
仏国寺からさらに山あいの石窟庵(ソックラム)へは仏国寺門前の駐車場から1時間おきに出ている有料シャトルバスで。バスを降りて、10分くらい山道を歩くと石窟庵が見えてくる。といっても、現在では入口には木造の建物が設置され、外からは石窟の中をうかがうことはできない。石窟自体も保護のためにガラス張りとなっており、近づいて石仏をながめられないのは残念だ。それでも、薄明かりの中に浮かび上がる白い石仏がやさしく微笑んでいるのを見れば、来てよかったと思うはず。

仏国寺山門前には世界遺産を示す石碑が誇らしげに鎮座する

仏国寺山門前には世界遺産を示す石碑が誇らしげに鎮座する

外から見た石窟庵。本来は入口の建物はなく、夏至と冬至には石窟の中に太陽光が入り込み、石仏の顔を照らす構造だったという

外から見た石窟庵。本来は入口の建物はなく、夏至と冬至には石窟の中に太陽光が入り込み、石仏の顔を照らす構造だったという

仏国寺の石段は極楽浄土への階段。白っぽい手すりは1970年代に復元されたもの

仏国寺の石段は極楽浄土への階段。白っぽい手すりは1970年代に復元されたもの

石窟庵内は現在撮影厳禁。慶州民俗工芸村内の新羅歴史館では写真のような精巧なミニチュアがあり、その構造を理解できる

石窟庵内は現在撮影厳禁。慶州民俗工芸村内の新羅歴史館では写真のような精巧なミニチュアがあり、その構造を理解できる

華麗な出土品とユニークな陵墓

慶州は伝統ある新羅の都だが、新羅の遺産が代々大切に守られてきたかというと、そうではない。王朝が代わると前代のものをことごとく焼き払って“リセット”してまったことや、儒教を奉じた李朝による仏教弾圧、加えて秀吉軍や後金(清)による侵略などで目に見える形で残っているのは焼き払えなかった石造物くらいというのが実状だ。市内中心の古代天文観測施設「瞻星台(チョムソンデ)」を見ても、ただぽつんと建っているだけで、それがどういう環境でどう使われたのかを想像するのは難しい。
そうしたなか、新羅の華麗さを物語るものが陵墓からの出土品。市内にある大陵苑内の天馬塚ではきらびやかな金冠や金帯のレプリカと、その出土状況を見ることができる。余談だが、天馬塚を含めて、新羅の陵墓には被葬者が特定できないものが多い。解明の手がかりになる史料がすべて失われてしまっているからだ。

市内にぽつんと建つ瞻星台。天文台だったというが、周囲には当時の状況をしのべるものは何もない

市内にぽつんと建つ瞻星台。天文台だったというが、周囲には当時の状況をしのべるものは何もない

天馬塚から出土した金冠のレプリカ。細かな細工が光り輝く様子は実に見事

天馬塚から出土した金冠のレプリカ。細かな細工が光り輝く様子は実に見事

国立慶州博物館で早わかり

慶州の遺跡巡りは、最初に遠くのエリアを攻めるのがコツ。1日しか旅程を取れないなら、朝は仏国寺と石窟庵、あるいは南山をじっくりと見て、午後から市内を駆け足で回ると効率的だ。最後は国立慶州博物館で、いままで見聞したことの総ざらい。陵墓や庭園付き離宮跡の雁鴨池(アナプチ)から出土した遺物のほか、近郊の山々から収集した石仏などの仏教美術を鑑賞することができる。遺跡の現状だけを見ると華麗な新羅王朝絵巻を想像するのは難しいが、ここで出土品や復元図などを見れば千年前の慶州が頭の中に新しく蘇ってくるはずだ。

慶州博物館入口。夏は20:00、冬でも17:00まで開館しているので(入場は閉館1時間前まで)、実際の遺跡を見終わってからも見学できる

慶州博物館入口。夏は20:00、冬でも17:00まで開館しているので(入場は閉館1時間前まで)、実際の遺跡を見終わってからも見学できる

各所から集められた石仏の屋外展示。頭部がないのは李朝時代の廃仏によるもの

各所から集められた石仏の屋外展示。頭部がないのは李朝時代の廃仏によるもの

■ソウルから慶州へ

鉄道の場合、韓国高速鉄道KTXで東大邱まで行き、そこで蔚山か浦項行きの列車に乗り換える。ソウル〜東大邱間は1時間40分強、東大邱〜慶州は1時間強。ソウルから直通の慶州経由蔚山・浦項行きセマウル号も1日1本ある。東大邱〜慶州間で早朝深夜を除くと列車本数は1日17本。バスは地下鉄3、7号線339、734「高速ターミナル」駅下車すぐの京釜線高速バスターミナルから30〜40分おきに便がある。所要時間は4時間15分。

■釜山から慶州へ

鉄道でも行けるが、本数が少ないのでバスがおすすめ。地下鉄1号線終点の34「老圃洞(ノポドン)」駅直結の釜山総合バスターミナルから便がある。高速バスは1時間おき、市外バスなら10分おきという気軽さ。所要時間は1時間30分。金海空港からも慶州経由浦項行きのバスがあるので、飛行機で着いて釜山市内に寄らずに慶州に行くこともできる。

■南山(ナムサン)

アクセス:おすすめの「七仏庵」や「神仙庵」へは東側の書出池から約2〜3時間。線刻磨崖仏や磨崖大仏へは西側の三陵ゴルから約2〜3時間。東西横断はアップダウンが多く休憩を含めて5〜6時間以上は見ておきたい。

■仏国寺と石窟庵

アクセス:市内(慶州駅、高速バスターミナルなど)から市内バス10、11番に乗り仏国寺下車
住所:慶州市進洞15
TEL:054-746-9913
URL:http://www.bulguksa.or.kr/

▼大陵苑(天馬塚)
住所:慶州市皇南洞
TEL:054-772-6317

▼国立慶州博物館
住所:慶州市仁旺洞
TEL:054-746-9913
URL:
http://gyeongju.museum.go.kr/

大陵苑・天馬塚の入口。付近には大小さまざまな古墳があるが、未発掘のものを含め多くは被葬者がわからない

大陵苑・天馬塚の入口。付近には大小さまざまな古墳があるが、未発掘のものを含め多くは被葬者がわからない


2004年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部