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スイスの伝統を守る魅力的な村々 アッペンツェル
アッペンツェルはスイス東端にある村。6割近くの村人が農業(牧畜や酪農を含む。スイス全体の平均値は4パーセント)に従事していて、今でも保守的な生活を貫いている。
ベルナー・オーバーラントやヴァリスの谷を訪問する際の観光ルートに組み入れにくい場所だが、チューリヒからは案外近い。スイスの「古きよき村」を訪れてみた。
市庁舎のある村のメインストリート
唯一のランツゲマインデを開催
アッペンツェルは保守的な村だと書いたが、女性の参政権が認められたのは1991年からのこと。そして、毎年4月の最終日曜日には、ランツゲマインデと呼ばれる、有権者全員が集まる青空議会が開催されている。1997年以降はスイスでも、ここアッペンツェルの村でしか開催されていないそうだ。

ランツゲマインデでは、議長が演壇に立って議題を提出。広場に集まった有権者たちはそれに対して挙手で賛否を投じるスタイルとなっている。儀式的な要素も色濃く残っており、正装してサーベルを身につけて出席する男性の姿も見られる。

村の博物館ではランツゲマインデの模様を記録した映像を観ることもできる。観光局も同じ建物に入っているので、情報収集を兼ねて立ち寄ってみるといい。

ランツゲマインデはこの広場で開催される
ランツゲマインデに参加する男性像。サーベルを身につけている
アッペンツェルの自由への闘いを描いたレリーフがある
色彩豊かな建物を見よう
アッペンツェルはランツゲマインデが開催されることとともに、彩豊かなペイントが施された民家があることでも知られている。家々がこのようにペイントされるようになったのは20世紀初頭のこと。村を歩いているとペイントのない民家もあるが、それが元々の姿だそうだ。

ランツゲマインデ開催の広場に面するホテル。
こちらも広場に面するホテル。明るい色使いだ
18世紀建築の民家。こちらの面には細かい装飾が施されている
同じ家の裏側は非常に地味。村を歩くときは家々の両面を見てみよう
ペイントされた家々も珍しいが、アッペンツェルには、昔の制度のおかげで変わった造りの家を見ることができる。それは2世帯が同じ建物に住まう家で、外壁のデザインの違いから2軒が独立していることが見て取れる。昔の税金制度では、ひとつの建物に対してして税金をかけていたので、複数の家族で使うと税金が割安になった。そのためこのような家が造られた。

1軒分の建物を3世帯で使った家。さすがに3分割の家は少ない
こちらも2世帯で使っている家。教会のすぐ前にある。裏側を見ることをお忘れなく
アッペンツェルの伝統にふれる
アッペンツェルではランツゲマインデのほかにも重要なイベントが行なわれている。 女性が伝統衣装を着て行進する「"Use Herrgottstaag" (Our Lord's Day)」や、子供たちも参加する「牧上り(家畜をアルプに連れていくお祭り)」のときは、参加者が民族衣装を着用する。そのため、村には衣装を作る工房が何軒かあり、今でも手作りの装飾品を製造・販売している。

アッペンツェルの伝統衣装を作る4代目の職人Rogerさん
手作りのものはけっこう高価だ(ベルト1本が百フラン以上)
牧上りの祭りの際にチャンピオン牛に付けるカウベル
またアッペンツェルで忘れていけないのが、名物のチーズ。このチーズは「Appenzeller Cheese」として紹介されており、スパイシーな味わいが特徴だ。熟成期間が増えるほど、味にコクが出てくる。お店で3カ月もの(銀ラベル「マイルド」)と5カ月もの(金ラベル「スパイシー」)、7カ月もの(黒ラベル「エクストラ」)の3種類を試食したが、ちょっとくせがあるかと想像した金ラベルの「スパイシー」チーズが一番おいしく感じられた。おみやげ用に真空パックしてくれるので、日本まで持ち帰るのも安心だ。

チーズとおみやげ物を扱うお店。町の入り口にある
チーズは試食も可能だ。アッペンツェルのチーズはスパイシーな味わい
鉄道駅から歩いてくるとついついお店に入ってしまうが、観光局の建物の向かいにある教会ものぞいてみてほしい。カトリック教会のこの教会の内部は装飾で満たされており、天井画も見事だ。天井には、スイスで初めて取り付けられたという電気式のシャンデリアがある。
この地方の伝統的な行事や重要なイベントが描かれている
教会の内部は僧職で満たされている。天井画の大きさはスイス最大だそうだ
春は黄色の絨毯に
アッペンツェル近郊には3000mを超える山はないが、なだらかな丘陵地に点在するシャレーを見ながらの列車移動はとても気持ちがいい。晴れていたらアッペンツェルの近くの村にも足を延ばしてみよう。電車は30分から1時間に1本の割合で発着している。
特に4月から5月にかけては、タンポポに覆われ濃い黄色の絨毯になっている牧草地を見ることができる。車窓からの景色でも充分にきれいなのでお見逃しなく。
アッペンツェルと各地を結ぶ電車も鮮やかな赤い色。ザンクトガレンへも1時間足らずでアクセスできる。
斜面に点在する家々は、昔、巨人がセンティスに居を移す際にこぼしていったものという伝説がある
2005年06月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部