島の北部、ポンテ・レッチアからバスティアに向かう途中にかかるアルバヌ橋を渡る列車
「コルシカ」と聞いて、すぐ場所やイメージが浮かぶ人は、相当のフランス通だ。なにしろ「ナポレオンの故郷」だということくらいしか情報がなく、イタリアの島だと思っている人だっている。しかし、一度訪れたなら誰もがその美しさを絶賛し、再訪を願わずにいられない。そんな知られざる魅力をたっぷり味わえるのが、島を縦断して走る「コルシカ鉄道」だ。青い海と、清清しい山の風景を両方味わえる島の鉄道は、夏の旅にふさわしい。
写真=伊藤智郎
文=坂井彰代
フランスの秘境、コルシカ島
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世界遺産として登録されているスカンドラ自然保護区は、釣りが禁じられるなど、環境保護に力が注がれている |
コルシカ島は、イタリア領サルデーニャ島のすぐ北に位置している。かつてはジェノヴァやトスカーナ共和国の領内に含まれていたこともあり、家並みや町の名前に、どこかイタリア的な響きが感じられる。面積は 8,680 平方キロメートル、地中海の島としてはシチリア、サルデーニャに継いで 3 番目に大きい。「イル・ド・ボーテ(美の島)」の異名をもつこの島は、手つかずの自然が残るフランスの秘境でもある。
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かつてイタリア領であった歴史背景をもつこの島の住民は、独自の言葉を話し、独立心が旺盛なことでも知られる |
コルシカ鉄道の出発地
ニースやマルセイユからの船が着くアジャクシオの港。コルシカ鉄道の駅(右奥)は港の近くにある |
コルシカ鉄道は住民の日常生活に欠かせない交通手段だが、夏にはヨーロッパを中心に多くの観光客が利用する路線となる |
コルシカ鉄道の出発地となる町は、アジャクシオ、バスティア、カルヴィの 3 つ。いずれも海に面した港町で、フランス本土と船や飛行機で連絡している。たとえばアジャクシオの駅は港からすぐのところにあり、バスティアまで、時刻表の上では 3 時間半ほどで結んでいる。「時刻表の上」と書いたのは、まあ 1 時間くらいの遅れは「許容範囲」だということだ。
アジャクシオを出発した列車は、町を抜けて、深い森のなかへと入り、どんどん高度を上げていく。覆いかぶさるように茂る木々をかきわけ、時には線路を横断する牛たちに道を譲り、列車は山岳地帯へと入っていく。
山と渓谷を走る路線
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エッフェルが設計したヴェッキオ橋を渡る列車。ルートの大部分が険しい山岳地帯であるコルシカ鉄道では、橋の建設も重要な課題だった |
コルシカ島の大きな特徴は、大部分が山岳地帯であるということ。かつて作家モーパッサンが「海に立つ山」と呼んだように、海のすぐ間際まで絶壁が迫る。そのような野性味あふれる自然のなかに敷かれたのがコルシカ鉄道だ。 山と渓谷が多いから、自然とトンネルや橋も多くなる。ルート上には 76 もの橋があり、沿線のハイライトともなっている。なかでも、 1892 年に完成したヴェッキオ橋は、エッフェル塔を造ったギュスターヴ・エッフェルによって設計されたものとして名高い。高さ 94 メートルの鉄橋を渡るのは、なかなかスリリングな体験だ。
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山間の小さな駅から「出発進行」! 乗り継ぎ駅では長く待たされることもあるが、のんびりとした時間の流れに、そのうち慣れてしまう |
山と海、両方の絶景を楽しむ
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海のすぐそばにあるアルガジョラ駅。終点カルヴィまでは 20 分、海景色を堪能できる景勝路線だ |
コルシカ鉄道が、ただ山岳地帯だけを走る列車ならば、「夏列車」としての魅力は今ひとつかもしれない。このルートのユニークな点は、山と海、その両方の絶景を味わえることだ。延々と続くかと思われる荒涼とした岩山を下降すると、その先には青い海が広がっている。特に、アジャクシオからカルヴィに向かうルートは、長い時間海岸線をたのしめる絶景ルートだ。そして、港町から始まった列車は、再び港町で長い旅の終点を迎えるのである。
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終点のカルヴィ駅。夏の間は近くのリゾート地までトラムも運転する |
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