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旅の孫の手
第8回
アジアン・エナジーの源に触れる「マーケット散策」の醍醐味

山積みの野菜やハーブが並ぶ(ゲイランセライマーケット)

目の前を通り過ぎていく現地の人々のライフスタイルに興味を抱いたのが、私のマーケット散策のきっかけである。どんな国や街にも、観光客の溢れる煌びやかな世界の裏側に、ほっとするような昔ながらの風景、日常がある。タイ、マレーシア、シンガポールなど東南アジアのマーケットは、アジアらしいエネルギッシュなシーンに溢れている。その国の気候風土に寄り添う人々の素顔や行き交う姿に飾り気のない素朴な暮らしを感じることができる。そんな場所が「マーケット」だ。

もっとその国のことが知りたい、そして人々とふれあいたいと思うリピーターの中には、私のようにマーケット散策を楽しむ人が増えているようだ。今回の「旅の孫の手」では、初心者の方でも安心して、気軽に散策が可能なシンガポールのマーケット散策を提案したい。

初心者コースとしておススメな国、シンガポール

治安・衛生面ともに定評があり、アジア初心者にも気軽に楽しめる国、シンガガポール。まず、アジア・マーケット散策の出発地点として訪れるには、比較的馴染み易い国だろう。中国系を中心に、マレー、インドその他の民族で構成される多民族国家は、モザイクのような文化の集合体。いくつか点在するマーケットを大別すると、まず大規模なチャイナタウン・コンプレックス、リトルインディアのテッカセンター。その他、郊外のマーケット、時折開かれる夜市などがある。グルメ・キャピタルを自負するシンガポール・グルメの礎を体感してみよう。

バス停前の露天で売られる茶葉卵や点心(クレメンティの夜市)

バス停前の露天で売られる茶葉卵や点心(クレメンティの夜市)

中心部にあるコンプレックス(複合)型マーケットへ

Chinatown Complexは、地下で生鮮食料品を扱う「ウェット・マーケット」。文字通り、コンクリートやタイルの床は水で流され、塗れている。臭いがほぼ気にならないのは、そのせいだろう。さまざまな店が区画ごとに溢れんばかりの食材を積み上げ、威勢の良い商いの声が響く。客はまとめ買いをする地元の人、そして年配客が中心で、観光客の姿はほとんどない。通路を進むと、日本にある野菜でも異なる形状や色のものがあり、発見の連続。まさに、リアルな食物図鑑だ。

建物内の1Fは衣類・雑貨などを扱うフロア、2Fはフードコートとなっており、平日も夜遅くまで多くの人で賑わっている。砂糖キビを専用圧搾機のローラーに通し、フレッシュジュースを搾ってくれるSugarCane(砂糖キビ)ジュースなどは自然な甘さで素朴な味わい。そこに、レモンをギュッと絞ってもらえば、さらに爽やかで美味。揚げパンなどと一緒に味わえば気分はすっかりローカル(地元っ子)だ。周辺には、調理器具・食器を扱う店、乾物の専門店などもあるので、参考までに歩いてみると良いだろう。

リトルインディアの、テッカセンター。ここも同様にウェット・マーケット、衣類・生活雑貨などの店、フードコートが混在するコンプレックスだ。現地のタイ人女性シェフ曰く、「休みになると足を運ぶこともある」。チャイナタウンとは全く異なり、当然インド系市民の姿も多い。スパイスやお香の香りが立ち込める街には、チャイナタウンとは異なる全く別の顔がある。 

郊外型マーケットにも足を伸ばそう

ゲイランセライマーケットは国の東海岸地区にある。低い天井のせいか、狭い通路は蛍光灯の光があっても薄暗い。生鮮食料品も売られているが、ここではスパイス・調味料店に注目してみよう。チキン、フィッシュなどカレーに入れる具材を告げると、お店独自のブレンドでパウダーを調合してくれる。ステンレスのお玉で手際よく袋詰めされ、一瞬にして特製カレーパウダーができあがる。その他、マーケットの片隅ではオタ(魚のすり身を葉に包んで焼いたもの)、バナナの揚げ物なども売られている。マーケット散策といっても、見るだけでなく、本場ならではの味を楽しんでみたいもの。バナナは揚げ立てで、衣はカリカリ。そのアツアツを紙で包み、頬張りながら散策を続行。

スパイス・調味料などを扱う食材店 /フードコートのナシパダンの人気店

スパイス・調味料などを扱う食材店             フードコートのナシパダンの人気店

隣接フードコートには、ナシパダンの人気店がある。フードコートながら、盛り付けは鮮やかで美しく、食欲を刺激する。野菜や豆腐などをふんだんに使った、お惣菜の盛り合わせといったところだろう。大き目のプレートに少しずつ並べてくれるので、マレー料理のいろんな味にトライしたい旅行者には最適だ。

生活用品などを求める人で賑わうクレメンティの夜市

生活用品などを求める人で賑わうクレメンティの夜市


どこへ行っても、行列の長さは人気のバロメーター。その店も、昼時には長い列ができ始めていた。(なお、このマーケットは老朽化に伴い05年12月に改装工事が始まる予定。マレーの文化を色濃く表す地区に立つマーケットは、近隣住民にも信頼が厚い。興味のある人は、改装前に訪れてみると良いだろう。)
さらに、過去の散策体験の中で印象深かったのは、郊外の街であるクレメンティに立った夜市、ナイト・マーケットだ。食器から衣類、玩具をはじめ、漢方薬、はたまた驚きなのはピカピカの車までが販売されていた。普段着の人々が楽しむ姿を眺めていると、夜市が東南アジアに根ざす伝統習慣、娯楽の場でもあることを実感する。

マーケットの風景。それは、土地の暮らしを映す鏡だ。「マーケットを旅する」ことが、その国の文化や習慣の理解や関心を持つきっかけになる。マーケットでのやりとりや小さな発見の数々が今まで感じていた印象をすっかり塗りかえてしまうこともあるだろう。そこには観光客向けではない素顔があり、地元の人との交流はかけがえのない旅の思い出となる。おきまりの観光コースから少し外れただけで、「予想通りの旅」が「忘れられない旅」へ変わることもある。

写真&文:佐々木恵理(ささき・えり)

約10年間のアジア系航空会社勤務を経て、フリーライターに。在職中は、エアラインのプロダクト・サービス紹介を中心に、プレスツアー、TV撮影などのコーディネート、現地への同行取材も担当。また、さまざまな角度から就航都市の魅力を発掘、発信することにも力を注ぐ。現在は、機内誌をはじめ、旅雑誌などに寄稿中。 

シンガポールのマーケット散策 3つのポイント

1.マーケット散策は軽装で

北緯1度9分、ほぼ赤道直下のシンガポール。 当然、長時間のウォーキングとなると水分補給、日除け、適度な休憩は必要。マーケットに屋根はあるが、歩きやすく涼しい軽装がおすすめだ。

2.その日の旅のルートを決めたら、ルート上に近いマーケットを探そう

マーケットは観光名所ではなく、生活の場。気付かず通り過ぎることもあるだろう。短期滞在なら、特に効率よく周りたい。旅のルートを決めたら、ホテルの人に尋ねるか、政府観光局現地ビジターセンターなどで情報を入手してみよう。ほとんどのホテルでは、市内の数箇所が掲載された現地の無料地図が入手できる。

<参考>
■チャイナタウン地区:
Chinatown Complex(チャイナタウン コプレックス)335  Smith St.
(最寄駅:MRT チャイナタウン)
■リトルインディア・セラングーンロード地区:
Tekka Centre(テッカ センター)665 Buffalo Rd.
(最寄り駅:MRT リトルインディア)
■イーストコースト・マレーヴィレッジ地区:
Geyland Serai Market(ゲイラン セライ マーケット)
Jalan Pasar Baru/Geylang Serai(最寄り駅:MRT パヤレバ)

3.五感で満喫する

初めての体験であれば、散策だけでも十分刺激的なはずだが、手軽なトロピカルフルーツなどを買い、実際に味わってみよう。五感で感じた喜びや驚きは一層深い思い出となって残るはずだから。スーパーマーケットよりも、さらに格安に手に入るだけでなく、地元の人との交流を楽しめる。なお、果物の王様ドリアンは、ホテル・公共の乗り物等への持ち込みは不可で注意が必要だ。

郊外ベドックの公団下に立った露天 D24ドリアンは根強い支持を集める

郊外ベドックの公団下に立った露天 D24ドリアンは根強い支持を集める

◎お勧めプラン◎
心強い案内人で充実の散策を

目にした食材、その調理法など、色々と疑問に感じることが多く不完全燃焼してしまいそうな人のためにお勧めプランがある。現地料理教室を主宰するCookery Magicでは、マーケットへの買出しから行動を共にし、調理体験がセットになったクラスを設定してもらうことができる。(事前予約が必要・英語のみ)

Cookery Magic:
2005年7月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部