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厳選23/シナイ山(エジプト)

シナイ山(エジプト)

※地図をクリックすると拡大表示します。

写真/岩崎歩 文/ぬくいゆかり

天涯の黎明
シナイ山で迎える太陽

日蔭のない乾いた大地にそそり立つ山が、灼けた肌を晒して続く。表面に一本の樹木も生えることを許さぬ厳しい山々。日本では決して見ることのできない荒々しい風景が、そこには広がっている。

そんな昼間の光景とは打って変わって濃藍の闇が広がる真夜中の2時から、シナイ山への登山が始まる。かすかな月灯りを頼りに、山頂にたどり着くまでは徒歩で約3〜4時間。登山が難しい人にはラクダで登れるコースもあるが、その場合でも800段ほどの階段が最後の関門として待ち受けている。

エジプトに位置するシナイ山は、アラビア語でモーセの山の意をもつガバル=ムーサと呼ばれ、旧約聖書の「出エジプト記」で荒野をさまよったモーセが十戒を授けられたと伝わる場所だ。そしてここからの御来迎を拝むため、世界中の多くの人々が山頂を目指す。

標高2285mの頂き。そこから眺める人工物のほとんどない天と地は、まさに「天涯」と思える空間だ。どこまで続いているのか、漆黒の虚空を凝視するとそのまま吸い込まれそうになる。天を仰ぐ人、祈りを捧げる人、それぞれが静かに夜明けを待つ。

人々が瞬間揺れ、どよめきが起こった。東方の空が紫に、そして赤みを帯びたオレンジ色に変化してゆく。薄雲の切れ間から、とうとう太陽が弧を描き始めた。放物線の弧が大きくなるにつれ、太陽の放つ光が夜風に冷えた体を柔らかく包み込んでゆく。瞬きもせず見つめていると光を浴びた周辺の山々も、徐々にその山容を現してゆく。

下界では急峻に見えた山々が、朝日に照らし出されると薄淡の何ともいえぬ優しげなピンク色を帯び、柔らかな稜線を浮き立たせてゆく。それは昼間の姿とは正反対の、地球のパワーを内包した母なる大地の大らかさを湛えている。圧倒的な太陽と、幾千年も存在し続けるシナイの山々と。原始の世界を思わせる、それは黎明の風景だった。

【アクセス】
カイロからバスで7時間30分。最寄りの空港はリゾート地のシャルム・イッシェーフ。登山の基地は聖カトリーナ。
【ツアー情報】
ダハブやシャルム・イッシェーフなどのリゾート地からツアーが出ている。聖カトリーナの各ホテルや旅行会社でガイドやラクダを申し込むことができる。
2006年6月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部