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これを見れば名画がよく解る!!

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』より

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』より

美術鑑賞は旅の大きなテーマ。各国に点在するひとりの画家の作品を追いかけたり、ひとつの美術館を一日かけてじっくり見たり。絵画には作者のバックストーリーがあり、美術館には建物が重ねた歴史がある。 画家が主役となった作品を見ると、いかに一枚の名画が映画を1本撮らせるだけのさまざまなメッセージを発信しているかが伝わってくる。作者の名は知らなくても、誰もの記憶に残る個性豊かな絵を描くクリムト、フェルメール、モディリアーニ。19世紀末のウィーン、17世紀のオランダ、20世紀初頭のパリ、それぞれの場所で、モデルとの間で葛藤し時代との距離を模索しながら1枚1枚の作品を仕上げていった画家たち。彼らの生き様を通して時代の空気と、彼らが生きた場所が絵画の後ろに見えてくる。実在の画家の実在の作品をモチーフに、クリエーターたちが創作した映画を観れば、見慣れた絵がこれまでとは違った輝きを増し、その作品が描かれた場所を訪れてみたくなるはずだ。 そして画家だけでなく絵画を所蔵する美術館もまた映画の主役となる。現代のパリ・ルーヴル美術館、歴史のうねりを感じさせるサンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館。ドキュメンタリーで、フィクションで監督たちが描こうとするのは、画家の魂(=作品)の棲家、美術館で絵画の周辺にいる人たちの物語だ。

文=山中 久美子

『クリムト』/クリムト

■作品データ
監 督:ラウル・ルイス
出 演:ジョン・マルコヴィッチ

2006年10月28日より
Bunkamura ル・シネマにて公開

『クリムト』/クリムト

”クリムトと旅する19世紀末のウィーン文化”と解説にあるように、本作はクリムトが生きたウィーン・ルネッサンスの時代が描かれている。絶大な力を持っていたハプスブルク家が衰退するのをよそに新しい伝説が生まれた時代。精神分析のフロイト、交響曲の大家マーラー、クリムトの弟子でその死を見守ったエゴン・シーレ。クリムトを会長とした若い芸術家集団“ウィーン分離派”の誕生の様子は、若い先駆者に対する時代の嫉妬はいつの世も変わらないものなのだ、ということを感じさせる。「モデルに触れないと絵を描けない」とうそぶき、浮名を流しながら永遠のミューズ(理想の女)を捜し求めていたクリムト。死の床での回想という形で語られる物語はアーティストの精神世界を覗き見しているような錯覚に陥る。美術史博物館、レオポルド美術館、分離派館ほか、クリムトの作品が所蔵されているウィーンへ飛んで、映画の中では見ることのできなかった彼の作品を確認してみたくなる作品だ。クリムトの最期を看取り同じ年に死去したエゴン・シーレを描いた『エゴン・シーレ 愛欲と陶酔の日々』を観ると、同じ時代を生きたシーレの視点でのウィーンが見えてくる。クリムトを演じるのはクセのある個性派ジョン・マルコヴィッチ。

『クリムト』/クリムト
『クリムト』/クリムト

『真珠の耳飾りの少女』/フェルメール

■作品データ
監督 ピーター・ウェーバー
出演 コリン・ファース、スカーレット・ヨハンソン

オランダ、ハーグに近い古都、デルフト。17世紀に画家フェルメールが生涯を過ごした街だ。現存する作品は30数点といわれる謎に包まれた経歴ながら彼の作品に魅せられる人は多い。映画の原作者トレイシー・シュヴァリエもそのひとり。「青いターバンの少女」を見たトレイシーが生み出した画家とモデルとの物語。フィクションではあるが、舞台となった17世紀のデルフトの様子や、当時フェルメールのようなオランダ・フランドルの画家たちが置かれていた状況は史実に基づいたものだろう。デルフトを訪れ自分も絵画の中の登場人物になってみたい、そんな空想(妄想?)の世界へと導いてくれる作品だ。光と時間を作品に描き込んだといわれるフェルメール。運河や水辺の多いオランダでは、光が他の場所とは違う働きをするという仮説を検証した『オランダの光』をあわせて観るとまた興味深い。フェルメールを演じるのは静かなセックス・アピールを持つコリン・ファース。

真珠の耳飾りの少女
真珠の耳飾りの少女
『真珠の耳飾りの少女[通常版]』
販売元: メディアファクトリー
価 格:3,990円(税込)

『モディリアーニ 真実の愛』/モディリアーニ

■作品データ
監督:ミック・デイヴィス
出演:アンディ・ガルシア、エルザ・ジルベルスタイン

長い首と細面の顔、瞳のない目、独特のフォルムで描かれたモディリアーニの肖像画は一度見たら忘れることができない。ピカソ、ダリ、ユトリロ、シャガール、藤田嗣治・・・、世界中からアーティストが集まってきた20世紀初頭のパリ。モンパルナスのカフェ、“ラ・ロトンド”は天才芸術家たちの溜まり場だった。映画の中で語られるのは絵のモデルとなった妻ジャンヌとの関係、そして対象的な生き方を選んだピカソとの対立だ。物語はフィクションとされているが、登場人物は実在の画家たち。才能と情熱、エゴをぶつけ合いながら創作活動に没頭する彼らの姿を見ていると、見慣れた名画のもうひとつの顔が見えてくる。モディリアーニはなぜ肖像画に瞳を描かなかったのか。芸術家としてひとりの男として真実の愛を求めた彼の苦悩が浮かび上がる。ジェームス・アイボリー監督の『サバイビング・ピカソ』も参考にエコール・ド・パリを感じてみてはどうだろう。モディリアーニを演じるのはラテン系の魅力を放つアンディ・ガルシア。


『モディリアーニ 真実の愛』
発売元:アルバトロス
価 格:4,935円(税込)

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』/ルーヴル美術館

■作品データ
監督:ニコラ・フィルベール
出演:ルーヴル美術館の人々

約35万点もの所蔵品を誇るルーヴル美術館。このドキュメンタリーは観光客の絶えない表舞台のルーヴルではなく裏方として働く1200人ものスタッフを追った作品だ。案内係、修復師、清掃員、警備員…。これだけ多種多様な人々がルーヴルに関わっていることに驚かされる。ナレーションはほとんどないが、登場人物の生の会話があまりにも自然で、監督がいかに対象者との信頼関係を築いてこの作品を撮ったかがうかがえる「モナ・リザ」や「ミロのヴィーナス」の普段着の顔(?)も垣間見られる。あまたある美術品をエスプリの効いた編集で見せるあたりはさすがフランス人。ルーヴルの展示が来館者を途方に暮れさせるほど多いのは、名作を探して彼らが館内を歩くことによって、知的刺激を体験して欲しいからだというキュレーターの言葉に頷いた。

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』
発売元:IMAGICA
販売元:レントラックジャパン
価 格:5,670円(税込)

『エルミタージュ幻想』/エルミタージュ美術館

■作品データ
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:セルゲイ・ドレイデン、マリア・クツネツォワ
(c) 2002 Hermitage Bridge Studio & Egoli Tossell Film AG

(c) 2002 Hermitage Bridge Studio & Egoli Tossell Film AG

建都300年を超えるサンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館は、1703年にロシアのピエール大帝によって建設された。所蔵品数300万点、1作品に1分間時間をかけると5年かかるという広大な美術館。時間のない旅人にエルミタージュの歩き方を提示してくれるのが本作だ。案内役は19世紀に実在したフランス人外交官キュスティーヌ。彼を案内役に監督自身が持つカメラがエルミタージュに入って行くという筋立てだ。

90分ノーカット映像で館内を紹介する中で、歴史とともにエルミタージュを駆け抜けた人物たちが登場する。ピョートル大帝、エカテリーナ2世、そして1917年に起こるロシア革命の影におびえるニコライ2世一家と幼い皇女アナスタシア。キュスティーヌのコメントは少々独断と偏見にも満ちているが、それがかえって新たな疑問や興味を喚起してくれる。美術品の鑑賞とエルミタージュの歴史を一度に体験できる90分の時間旅行。必見だ。

『エルミタージュ幻想』
販売元:紀伊国屋書店
価 格:5,040円(税込)

アンケート回答者の声 私にとって「映画と旅」とは

敬称略

◆映画の中へ入りたくて出かけたが映画は映画、自分は自分だった。ただそこで感じたことは自分だけのものになった。[Soni]

◆映画を観て行きたくなる場所はたくさんあります。残念ながらアメリカなどは個人で行けないような郊外が多いようですが。[ロミロミ]

◆映画を観ると、主人公になりきりその場を訪れたくなります。映画は夢を与えてくれますね。[匿名希望]

◆外国の映画を観ていると、そこに行きたくなります。青い海の映画とか観ると飛んでいきたくなるのをやっとのことで抑えています。 [うさぎのココ]

◆映画は旅の参考になる。 [匿名希望]

◆時間がなくてあまり映画を観ることも出来ませんが、私にとって癒しの大切な時間です。会社の休暇を利用して楽しい旅してみたいと思っています。[binmichiko]

◆いつまでこんな風に旅を続けられるのかな?と年齢的に不安を感じた頃に意図をせず偶然見た映画は、「旅」が人生に大きく影響するといった内容のものでした。人それぞれ「旅」から得る何かは別々ですが、「得られる何かが旅にある」と再確認出来た時、表現しきれない感動と自信に抑えきれないパワーが湧いてくるのを感じました。私の場合、誰に聞けば出るのか迷っていた「答え」を映画が教えてくれたようです。どんなに歳をとってもやっぱりバックパッカーを楽しみたいな…。 [つきなみ]

◆世界旅行を映画の中でしている感じですかね。[きらぞう]

アンケート回答者の声
私にとって「映画と旅」とは

敬称略

◆映画の場面が浮かんで、旅行が楽しくなる。[エド]

◆映画がきっかけで、その町を知るだけじゃなく興味を持つことができる。実際に旅行しなくても、旅行した気になるが、やっぱり行ってみたくなるんです。[匿名希望]

◆撮影されているところがどこなのかが簡単にわからないこともあるし、行くのが大変な場所のときもあるのでなかなかいきづらいですかね…(私が好きな映画がミニシアター系でマイナーなのも一因?)。映画にちなんだツアーとかがもっとあるといいと思います。 [匿名希望]

◆映画を観て実際に行ってみて、また映画を見直すと楽しみが大きいです。旅行の一つのパターンとして魅力ある方法だと思います。[TAD]

◆私にとって映画も旅もどちらも大好きなことです。その2つが合わさって自分の好きな映画の世界に行けたらホントに嬉しいなぁと思います。今は時間がなかなかとれないけど、いつか大好きな映画の舞台を自分の眼でちゃんと見たいと思います☆[まお]

『クリムト』関連

アンケート回答者の声
私にとって「映画と旅」とは

敬称略

◆旅のきっかけになっていいのではないでしょうか。

『真珠の耳飾りの少女』関連

アンケート回答者の声
私にとって「映画と旅」とは

敬称略

◆ニューヨークの5番街を歩いた時は自分が映画の1シーンに入ったような感覚を覚えました。我に返ると、道行く人たちそれぞれにドラマがあり、人生での出会いの重なり合いで世界が動いているということを気付かされました。日常と違う風景に出会う[=旅]とは自分が主人公の映画の一場面であると思います。[匿名希望]

『モディリアーニ 真実の愛』『パリ・ルーヴル美術館の秘密』関連書籍

『エルミタージュ幻想』関連書籍

2006年08月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部