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グランドティトン国立公園(2)

スネークリバーの川下り

レンジャー、大活躍

スネークリバーの川下りは、朝の10:00からスタートだ。上流のスタート地点まで車で移動する。使用する船は大型のゴムボートで、乗船者は8〜10名ほど。それをレンジャーが二つの櫂を使って操船する。流れは緩やかだが、相当な力量が必要そうだ。ボートは5分おきくらいで、次々と川に流されていく。

ボートを操るレンジャーは、なかなかのエンターティナー。櫂を操りながら、片時も語りを忘れない。目ざとく野生動物を見つけては、我々に教えてくれる。野生動物を発見すると先行するボートからの無線連絡もあるようだ。チームプレーも素晴らしい。ハクトウワシ発見の通信を受けて、急遽ルートをその方向に変更。僕たちはハクトウワシの飛翔と巣を見ることができた。

レンジャーは、まさにプロフェッショナルである

レンジャーは、まさにプロフェッショナルである

「いない、いない、ばあ」をする山々

氷河が削り取ったU字谷を川が流れる。川が蛇行するごとに姿を見せるティトンの山々もまたいい。川を客席に、高い土手を舞台にその先に姿を現す様子は舞台俳優のようだ。レンジャーは、ボートが進んでいくたびに姿を見せる山々を「ピッカ・ブー(いない、いない、ばあ)・ティトン」と呼んだ。みんなリラックスしてきて、船上が和やかになった頃には、山々が顔を現すたびに、全員で「ピッカ・ブー!!」と声を合わせた。

川面には、カヌーやプレジャーボートも数多く出ており、それぞれに楽しんでいる。釣れているのかどうか、かなり怪しげな竿遣いだったが、釣り船も出ていた。2時間ほどの川下りは、あっという間に終わってしまった。

流れに任せて移り変わる景色を見るのは爽快だ

流れに任せて移り変わる景色を見るのは爽快だ

激流下りもできる

公園内の川下りは、緩やかな流れの中を風景や野生動物を眺めながらゆったりと下るものだが、激流を下るスポーツラフティングも楽しむことができる。ボートを漕ぐのも、レンジャーではなくボートに乗った参加者だ。こちらは基本的に公園の外のアトラクションで、ジャクソンから出発するツアーと考えてよい。僕たちが撮影に行ったときは、すでに夕方になっていたが、次から次へと叫び声とともにボートが急流に突っ込んできた。かなり人気があるようだ。

スピードたっぷりに激流を下る!

スピードたっぷりに激流を下る!


トレイルを歩こう

船で渡って、インスピレーション・ポイントへ

ジェニーレイク南岸の船着場からシャトルボートでインスピレーション・ポイントのトレイル・ヘッドに連れて行ってもらう。ボートの料金は、$9。船着場のトレイル・ヘッドから少し登ると森の中に入り、雪解け水の急流を脇に見ながらの気持ちのよいトレイルとなる。野生のベリーの実やスイカズラの仲間の可憐な朱色の実がきれいだ。

森の中のトレイルの最大のハイライトは、ヒドゥン・フォール。その名(=Hidden)の通り、木々に隠れてはいるが、豪快な流れに驚く。広いスペースが取ってあり、滝を眺めることができる。ここを抜けると森林から視界の開ける広場に出て、そこからさらに10分ほどの急登となる。つづら折りにどんどん高度を上げていく。

インスピレーション・ポイントの標高は、7700フィート(約2347メートル)。グランド・キャニオンと同じ高さだ。ティトンの山々を背にジェイニー・レイクを見下ろす景色は絶景である。ポイントに着くとみんな思い思いに腰をおろし、湖を見つめている。ふと後ろを振り返ると、ティトンの山々が圧倒的な存在感で迫っている。日も昇りきり、ガスもかかってきて、ぼやけたシルエットではあるが、僕にはこちらの景色の方が価値ありと思えた。

ここまで、船着場から約30分。ヒドゥン・フォールなど、所々で休んでも1時間で往復できるだろう。対岸の駐車場からでもシャトルボートの時間も入れて、2時間30分もあれば、十分にトレッキングと風景が楽しめる。駐車場の脇には、きれいに整備されたビジターセンターとショップもある。ゆっくり休むこともできる。

この船着場から対岸に出発

この船着場から対岸に出発

姿を現したヒドゥン・フォール

姿を現したヒドゥン・フォール

短いわりには変化に富む、リーレイクの周回トレイル

ストリングレイクは小さくて静かな湖。湖面に映る山々は、シュワバッカーポイントに勝るとも劣らない絶景だ。いや、むしろ山々のディテールが迫ってくる迫力はこちらのほうが上かもしれない。20分ほど歩くとリーレイクのトレイルとの分岐点に着く。湖畔を見たかったので、カヌーの発着場まで歩いてUターンした。

分岐点に戻り、リーレイクがストリングレイクにつながる流れ込みにかけられた橋を渡って湖岸から林間のコースに入った。ここからは登りとなるが、周辺の野草のお花畑が目を楽しませてくれる。木々の間のあちこちに大岩が横たわっていて驚く。その石は、氷河によって運ばれ、ここに取り残されたものだ。ティトンの景観が氷河によって作られたことを実感する。坂道を登り切って視界が開けると左手の湖がずっと下にあることに気づく。右手に目をやると巨大な山塊の岩肌が目に迫る。風景の変化が楽しいポイントだ。

再び下って林間の道に入る。この林がまた、ひと味違う。一度山火事で燃え落ちた林なのだ。真っ黒に炭化した樹からは、火災の生々しさが伝わってくる。しかし、焼けた木の傍らには、緑色の若木が着実に根付いていた。焼けて今は無残に立ちすくんでいる木々も、少しずつ朽ち落ち、若木の栄養となりその成長を助けるのだ。一見悲惨な火事後の景色の中にも自然の生命循環を実感させてくれる。

このトレイルは、登りがあるもののトレイル沿いの風景が次々に変わり飽きさせない。総延長は約6q。写真を撮りながら、休み休み歩いても2時間でゆっくりと回れるほどよいサイズだ。推薦したい。

湖畔の道から思いのほか高度を上げていく

湖畔の道から思いのほか高度を上げていく

燃えた木は朽ち落ち、新しい命が着実に育っている

燃えた木は朽ち落ち、新しい命が着実に育っている

古きよき西部の風情を残すゲートシティ・ジャクソン

ジャクソンは、グランドティトン、イエローストーンの各国立公園の南の玄関口となる街。1897年に市制が施行されたその当時の建物が多く残っている、西部でも代表的なウエスタン・タウンだ。ジャクソン・タウン・スクエアはウエスタン風の土産物屋(カウボーイハットとか、皮のベルト、ジャケットとか)が多く、ぶらつくにはほんとにいい雰囲気がある。

タウン・スクエアのゲートは、エルクの角で作られている。ふと見上げると目の前の山はスキー場である。冬はスキーリゾートとして、にぎわうそうだ。国立公園のお膝元という感じのリゾートタウンだ。

まさに西部の町という雰囲気

まさに西部の町という雰囲気

雪がなくても、スキー場のお膝元ということがわかる

雪がなくても、スキー場のお膝元ということがわかる


2006年10月