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イエローストーン国立公園(1)

地図

イントロダクション

8の字に道路が走り、主要なポイントを巡る

イエローストーン国立公園は、世界で最初の国立公園。南北に約102km、東西間は約87km、面積は、約8979平方kmと東京都の約四倍もある広大な公園だ。この園内のおもな見どころをつないで、グランドループと呼ばれる8の字型の周回道路がある。一周は約229km。北半分をアッパーループ、南半分をロウアーループと呼ぶ。

旅行計画のポイントは、いっぺんに全部を回ろうとせず、滞在日数に応じてエリアを決めてそこの風景をじっくり味わうことである。道路に沿って園内には8つのビレッジがあり、そこを拠点にすればいい。

日の出から出発しても回りきれない!

日の出から出発しても回りきれない!

5つのエリアに分かれる

イエローストーン国立公園は、図のようにそれぞれに特徴のある景観を持つ5つの地域に分けられる。

北西部のマンモスカントリーは、温泉が作り出した石灰岩のテラスや奇岩、色鮮やかな温泉池で有名なマンモスホットスプリングスがある。 ガイザーカントリーは公園南西部。オールドフェイスフル・ガイザーをはじめとする多くの間欠泉があるエリアだ。
南東部のレイクカントリーは、青々とした湖面のイエローストーン・レイクが広がっている。湖岸に沿って3つのビレッジが並び、公園めぐりの拠点にしやすい。

公園東部のキャニオンカントリーは、イエローストーンの名前の由来となった黄色い大渓谷と豪快なロウアー滝が中心だ。南に広がるハイデンバレーは動物の楽園である。
北東部のルーズベルトカントリーは、開拓時代そのままの素朴な草原が広がるエリア。バッファローの群れを見ながら、西部劇さながらに駅馬車で回るツアーもある。タワー滝は、公園の代表的景観のひとつだ。

イエローストーン国立公園 地図

イエローストーン国立公園 地図

大陸分水嶺 Continental Divide

イエローストーン国立公園の地形上の大きな特徴のひとつは、ここが大陸分水嶺になっていることだ。ここからミズーリ川に合流した流れは、ミシシッピ川を経由してメキシコ湾から大西洋へ至る。太平洋へは、スネークリバーからコロンビア川を経由して流れ着く。

グランドティトン国立公園側から入園し、周回道路を左折、オールドフェイスフルに向かう途中に大陸分水嶺の案内板があった。そこはなんのへんてつもない、こじんまりとした池だったので拍子抜けしたが、ここから太平洋、大西洋へ向かう水が始まると思うと何だか雄大な気分になった。

大陸分水嶺
大陸分水嶺

「大陸分水嶺」と言うと、なんとなく山の頂でびしっと流れが分かれてるなどと妄想を膨らませていたが、実際はこじんまりとしたものです

絶景のポイント

ハイデンバレー

キャニオンカントリーとレイクカントリーの間に、見渡す限りどこまでも広がる草原がハイデンバレーだ。ここは古いカルデラの名残で、低地となっている。イエローストーン川も、ここでは川幅を広げゆったりと蛇行している。魚を狙って集まる鳥たち、ムースやバッファローなどここは動物たちの天国だ。

動物を見るために、早朝初めて来たときは残念ながら天気に恵まれず、濃霧で視界がほとんど利かなかった。別の日の夕方、イエローストーン川が横たわる広々とした平原を見ることができた。エルクやバッファローの群れが遠くに見える。写真を撮りながら、飽きずに夕方の草原を眺めていたら、なぜか懐かしいような気持ちがしてきた。僕たちの遺伝子にも平和な草原の記憶が刻まれているのかもしれない。

広大なのに圧倒されない。どこか懐かしい感じがするのだ

広大なのに圧倒されない。どこか懐かしい感じがするのだ

グランド・プリズマティック・スプリング

今回僕たちは、この巨大な温泉池のトレイルではなく、全景を見渡せるポイントを目指した。是非その全体像を撮影したかったからだ。グランド・プリズマティック・スプリングは、直径約113m。園内最大を誇る。同じ目線で見ても、その全体像はつかめないのだ。

目印の緑色の橋を見つけ左折。ここがなかなか見つけづらいらしい。知る人ぞ知るポイントである。オールドフェイスフル方面から北上すると、グレートファウンテン・ガイザーの駐車場の手前である。5分ほどトレイルを歩く。左手が小高い丘の斜面、右手が温泉の石灰成分で白くなった平原でその先にグランド・プリズマティック・スプリングがある。

トレイルから外れて斜面を登る。小高い丘の上から眺めると、濃いエメラルドブルーの水面とバクテリアにより褐色になった岸辺のコントラストが、直径100mをゆうに超えるその規模とともに目に飛び込んでくる。露出を変え、場所を移動し、とにかくシャッターを切りまくった。

撮影の時間は、午後4時から5時くらいがベストだそうだ。あまり朝が早いと湯気が立ち上りすぎて、これほど鮮やかにエメラルドの水面は見えないのだという。だから、日が昇って気温が上がった時間帯がいい。そしてもちろん晴れていること。今回は絶好のコンディションに立ち会えたということだ。

この橋が目印

この橋が目印

ボードウォークを歩く人と比べても、その大きさが実感できる

ボードウォークを歩く人と比べても、その大きさが実感できる

大山火事から18年を経て

1988年、イエローストーン国立公園に発生した山火事は、その年の猛暑や水不足などによって、公園総面積の36%、約3213平方kmを消失した。もちろん、落雷などの自然に起きた山火事は積極的に消火せず、自然の鎮火に任せるという方針もあったが、多くの人々は火事の規模の大きさに、公園の貴重な自然が壊滅的な打撃を受けたと憂慮したに違いない。

しかし、焼け野原となったイエローストーンには、不死鳥のように新たな生命が芽生えていった。背の高い松林だったところは、草原となり、若い木が成長している。僕たちはその様子を見ることができる。そして目に見えないところでも自然は命をつないでいるのだ。新しく生まれた草原の草花は、種類も豊富で動物たちの格好のご馳走となった。燃え落ちた木々は、土となって若い植物の成長を支えた。また雨に流され川に流れ込み、それが栄養分となって魚の繁殖も活発になったという。

そんな話をレンジャーから聞いて、焼け焦げた木と若い緑が混じる広大な丘を見ると自然の生命力を素直に信じたくなってくる。これもまた、イエローストーンの極めつけの絶景なのだ。

20年が経過すると、焼けた立ち木の80%が倒木になるという 20年が経過すると、焼けた立ち木の80%が倒木になるという

20年が経過すると、焼けた立ち木の80%が倒木になるという

イエローストーン渓谷
(グランドキャニオン・オブ・ザ・イエローストーン)

イエローストーン川が削った渓谷は、その名の通りの黄色い岩肌が鮮やかだ。豊富な水量ゆえの濃いエメラルドグリーンの川の色と見事なコントラストを見せている。ここで湧き上がる煙は、温泉の湯煙ではない。94メートルの高さから流れ落ちるロウアー滝の水煙だ。インスピレーション・ポイント、グランドビュー・ポイント、ルックアウト・ポイントと北岸の展望台をはしごをしながら、この渓谷を撮影した。

滝を見るなら、ルックアウト・ポイントがベストだ。滝を間近かに見れるトレイルがある。一番下のボードデッキから見上げる滝は迫力満点だ。約600m。下り10分、上りを20分見ておけばいいだろう。滝の真上に出るロウアー・フォールズ・ブリンクもいい。下りは10分弱、登りが約15分ほどのトレイルだ。滝の真上に立つと、圧倒的水量に足がすくむ。水煙の中を、滝の方向からグランドキャニオンを展望することができた。これもまた絶景である。

南岸に回って、アーチスト・ポイントへ移動する。展望台に出るとここがなぜ「アーチスト」と称されるのかがわかった。岩肌のイエローのディテール、鮮やかさが一段と映えるのだ。その色を切り取るために、また写真をパチリ。こうして主要なビューポイントをすべて回り、イエローストーンの名の由来となった黄色い岩の渓谷を満喫した。

アーチスト・ポイントからの景観。上の方にロウアー滝が見える。岩肌の色にも注目。

アーチスト・ポイントからの景観。上の方にロウアー滝が見える。岩肌の色にも注目。

大陸分水嶺 Continental Divide

このトレイルは、北岸からアーチスト・ポイントへ向かう手前の駐車場から出ている。1900年代初めにレンジャーであるトム・リチャードソンがロウアー滝をより目近かで見るために開拓したルートだ。当時の階段は、528段とさらに縄ばしごを使って降りたという。現在でも328段の階段を使ってゆっくり高度を下げ、キャニオンを3/4ほど降下する。ほぼ正面からロウアー滝と対峙することができる。滝の迫力を堪能するならここが一番だ。ただし、行きはよいよい、帰りはコワイ登り階段ではある。登りにだいたい30分かかった。でも、階段の登り降りに報いてくれる、迫力のあるロウアー滝の姿が待っている。

トレイルの歴史を伝える看板

トレイルの歴史を伝える看板

階段を降りきったところにあるデッキから

階段を降りきったところにあるデッキから


2006年10月