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イエローストーン国立公園(2)

地球の鼓動を感じる景色

マンモスホットスプリングス

アッパーループをルーズベルトカントリー方面から西に走ると、右手前方にマンモスホットスプリングスのシンボル、真白い大地が目に飛び込んでくる。温泉が作り上げた石灰岩の巨大なテラスだ。湯気が立ち上り、周囲の木々の緑とは明らかに違う存在感を示している。

ここは、いわばイエローストーン国立公園の首都のような場所だ。レンジャーたちの居住区やオフィスが集中している。このエリアは、園内で唯一人の住む街の雰囲気が漂っている。

トレイルを回って、いろいろなテラスと温泉池を見て歩く。温泉の豊富な水量と深度、バクテリアの共同作業によるさまざまな色が白い大地をキャンパスに広がっている。

温泉が湧き出すエリアは、自然の床暖房がついているようなものだ。地表のミネラル分の補給も兼ねて、動物たちが暖を取りにやってくる。パレット・スプリングの前で見たエルクも、気持ちよさそうな顔で白いテーブルの上に横たわっていた。地球のエネルギーが造形した不思議な景観と整然とした街とのんびりとリラックスした動物たち。何だか不思議なところだった。

アッパーテラスにあるオレンジ・スプリング・マウント

アッパーテラスにあるオレンジ・スプリング・マウント


水温によって棲むバクテリアが違い、それによって色が変わるという

水温によって棲むバクテリアが違い、それによって色が変わるという

見るからにリラックスしているムース

見るからにリラックスしているムース

ふもとには、街が広がるイエローストーンの中心地

ふもとには、街が広がるイエローストーンの中心地

今見ている景観は、今だけのもの

マンモスホットスプリングスのテラスは、思ったよりも温泉が枯れているところが目立った。地底のエネルギーの気まぐれで、温泉が湧き出るところは時間とともに変化する。それによって私たちが目にする不思議な風景も常に変わっているのだ。あるとき、美しい白いテラスを形成していたところは、温泉が枯れ、空気と触れることでくすんだ岩の塊になってしまう。一方で新たな場所に温泉が湧き出し、まったく違う造形を開始する。そんな生きたテラス、死んでしまったテラスを写真に撮りながらトレイルを歩き回った。

それはまた、「間欠泉銀座」であるオールドフェイスフルでも同じだった。あちこちにある温泉池の美しい色と突然の噴出は、地球が生きていることを実感させてくれる一方、名前が付けられたものでも、エネルギーの供給が止まり、火葬した骨のように白く静かになった池の跡がたくさん見られる。

地球の鼓動が感じられる場所で見る風景は、まさに生き物。今ここでだけの風景なのだ。

以前は、きっとエメラルドブルーの水をたたえ、元気に噴出してたのかもしれない

以前は、きっとエメラルドブルーの水をたたえ、元気に噴出してたのかもしれない

オールドフェイスフル・ガイザー

ここが今回の取材最後の訪問エリアだった。ビジターセンターでレンジャーに質問をしたり、資料を集めたりした後、オールドフェイスフル・ガイザーの噴出を待つ。この間欠泉はここ120年間、ほとんど規則正しく噴出することで有名なもの。まさにフェイスフル(=忠実な)なのだ。噴出予測時間の30分ほど前から、人々は観覧席に集まってくる。朝9:00過ぎの噴出を満喫して、トレイルに入った。

目的地はモーニング・グローリーだ。トレイル沿いにはさまざまな温泉池やガイザーがあり、美しい色と突然の噴出で地球が生きていることを実感させてくれる。リバーサイドガイザー、キャッスルガイザーはものすごい勢いで噴出を繰り返していた。一方ほとんど活動をやめ静かにたたずむ空洞もある。

モーニング・グローリーは、トレイルの奥まったところに静かに位置していた。その中心は、あくまでも青く、周辺はその温度によって棲み分けるバクテリアの働きで微妙な色分けがされている。まさに朝顔のような姿で静かにそこにあった。日差しの加減によって微妙に変わる姿を何枚もカメラに収めると、駐車場の方に引き返した。

「これで後は帰るばかりか」と思うと、帰りの長いボードウォークも別れがたく、一歩一歩ゆっくりと歩いていった。後ろの方で、小さなプールが、突然ぼこぼこと温水を吹き上げた。

今現在、一番元気に噴出を繰り返していたプール。トレイルの本当にすぐそばにある

上)今現在、一番元気に噴出を繰り返していたプール。トレイルの本当にすぐそばにある

右)このボードウォークを渡り終えて、イエローストーンとお別れとなった

このボードウォークを渡り終えて、イエローストーンとお別れとなった
オールドフェイスフル・ガイザー。現在はほぼ90分おきに熱水を40〜50mほどの高さに吹き上げる

オールドフェイスフル・ガイザー。現在はほぼ90分おきに熱水を40〜50mほどの高さに吹き上げる

モーニング・グローリー・プール。まさに「朝顔」のように美しい温泉だ

モーニング・グローリー・プール。まさに「朝顔」のように美しい温泉だ

2006年10月