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第1章 映画の中の風景を追って(1)

ポターの散歩道を歩く

ヒーリスとふたりでラフリグ付近を語らいながら歩くポター。

ヒーリスとふたりでラフリグ付近を語らいながら歩くポター。


イギリス人は歩くことが大好きだ。ロンドンの街中でも、小一時間ほどの距離であれば、歩くことを厭わない。カントリーサイドならばなおさらのこと。フットパスと呼ばれる遊歩道がいたるところに設けられている。映画の中に登場する湖水地方のスポットも、ウォーキングに適するところばかり。観光だけではなく体感こそが湖水地方を楽しむキーポイントかも。

◆湖水地方へのアクセス◆

鉄道:ロンドン、ユーストン駅からオクセンホルム駅まで直行で3時間10分。湖水線に乗り換えウィンダミア駅まで20分。マンチェスター国際空港からウィンダミア駅まで直通で2時間

車:ロンドンから約430km、高速道路M1からM6に入り出口36か37で下りる

長距離バス:ロンドン、ヴィクトリア駅よりウィンダミア駅まで6時間半。

■現代のヒル・トップ、ユー・トゥリー・ファーム

外壁を塗り直しヒル・トップとして撮影されたユー・トゥリー・ファームはポターが所有し後にナショナル・トラストへと寄贈された農場だ。ポターは農家も牧畜業に頼るだけでなく、B&Bやカフェを経営し副収入の手段を得ることを推奨した。

現在ここは「北イングランドで最も美しい農家」に選ばれ、ティールームでは手作りのジャムや羊毛、ハードウィック種の羊や牛の肉といった地元の食材を販売している。また内部の家具もポター自身が揃えたもの。宿泊して彼女の世界に浸るのも楽しい。映画では農婦の衣装が違和感なく身についたレニーが農作業する場面や、母屋を背に立つシーンなどが撮影された。現在は若いジョンとキャロライン夫妻がナショナル・トラストから農場を借り受け委託経営している。

コニストン村から北東へ3km、アンブルサイトからは南西に8km、農場へ向かうとA593沿いに小さな湖ユー・トゥリー・ターンが顔を出し、すぐその先にユー・トゥリー・ファームの看板が見えてくる。ユーデイルの丘に位置しウィンダミアからは車で40分ほど。ここを基点としてウォーキングコースも用意されている。

 

住所:Coniston,Cumbria LA21 8DP
電話:(015394)41433
URL :http://www.yewtree-farm.com/
営業時間:11:00〜16:00(6月1日〜10月31日)
それ以外の期間は週末のみ営業
B&B:部屋数3、一人£22〜 
セルフ・ケイタリング・コテージ:£150〜/週

農場の裏手に広がる牧草地、牛や羊がのんびりと放牧されている。

農場の裏手に広がる牧草地、牛や羊がのんびりと放牧されている。

食品棚にはオリジナル・プロダクツが並んでいる。

食品棚にはオリジナル・プロダクツが並んでいる。


撮影時、白い壁はベージュに塗り替えられ、窓枠もヒル・トップのものに変えられた。

撮影時、白い壁はベージュに塗り替えられ、窓枠もヒル・トップのものに変えられた。

高台から見た農場全景。ヒル・トップに改装された外観は撮影後、元に姿にもどされた。

高台から見た農場全景。ヒル・トップに改装された外観は撮影後、元に姿にもどされた。


■ピクニックに人気のターン・ハウズ

ターン(tarn)は小さな山の湖、ハウズ(hows)は丸い丘の意。その名の通りなだらかに傾斜した牧草地が広がるターン・ハウズは、湖を見下ろしながらのピクニックや、1周2.4kmのウォーキング・コースなど、楽しみ方の多い人気の湖だ。1929年にポターの所有となり現在はナショナル・トラストに寄贈されている。

映画では湖水地方の印象的な風景のひとつとしてターン・ハウズの全景が挿入されている。映画で使用された小道具はコニストン観光案内所にロケ地情報とともに展示されている。人気の湖なので夏場はピクニックをする人でにぎわう。初春や初秋の人が少ない頃のほうが、ゆっくりと湖のまわりを散策できるかもしれない。

コニストン・ツーリスト・
インフォメーション・センター

電話:(015394)41533 
URL :http://www.conistontic.org

四季折々、天気によっても表情を変えるターン・ハウズ。地元の人は冬も美しいと勧める
英国政府観光庁 www.britainonview.com


■秘密にしたい小さな湖ラフリグ・ターン

映画の挿入シーンでは、気品あるたたずまいが印象的なラフリグ・ターンはワーズワースもその美しさを称えている湖だ。名峰ラングデイル・パイクスが北西にそびえたち、背後には丘陵が広がっている。湖を一周すれば静けさを備えた表情豊かな景観を体感することができる。グラスミア湖の南側に位置するので、アンブルサイドからもそう離れていない。遠出をしなくても湖水地方の醍醐味を十分に味わえるエリアだ。

霧に包まれた幻想的な雰囲気の湖面にたたずむとまるで映画の主人公になった気分

霧に包まれた幻想的な雰囲気の湖面にたたずむとまるで映画の主人公になった気分

ナショナル・トラスト

どんぐりとオークの葉。湖水地方を歩いているとこんな標識に出会う。これがナショナル・トラストのマークだ。18世紀半ばの産業革命によって、急激な開発が進み自然が破壊され、労働者の生活環境が著しく低下した。その頃のロンドンの空気は霧ではなく煤煙で霞んでいたとか(急激な成長を遂げた結果、大気汚染と労働条件の悪化が問題となっている現在の中国の状況が百年前にイギリスに起こっていたということだろう)。私有の土地を持つ支配階級はカントリー・サイドに避難できても、庶民はシャット・アウト。ならば誰にでも開放された自然を確保しようというオープン・スペース運動が始まった。そこから自然のありのままの姿を国民みんなのものとして守るというナショナル・トラストの精神が生まれたのだ。

創立は1895年、創始者は社会活動家のオクタビア・ヒル、牧師のハードウィック・ローンズリー、弁護士のロバート・ハンターの3人。ローンズリー牧師は「湖水地方の番犬」とも呼ばれ、観光客の大量輸送のために持ち上がった鉄道誘致を差し止めるなど、様々な形で自然景観の保存、歴史的建造物の保護に奔走した。ビアトリクスの父ルパートのサロンの常連だったハードウィックは彼女にも大きな影響を与えた。ビアトリクスの絵の才能を認め、出版化を勧めたのはハードウィック牧師であり、恋人ノーマンを失って湖水地方に移ったビアトリクスを慰めたのも、ハードウィック夫妻だった。1905年にヒル・トップ農場を購入したのを皮切りに、ビアトリクスは絵本の印税で4300エーカー以上の農場を購入、死後それをナショナル・トラストに遺贈した。現在湖水地方にある国立公園の土地の25%近くはナショナル・トラストの所有となっている。

▼ナショナル・トラスト
http://www.nationaltrust.org.uk

ヒルトップの入口

ヒルトップの入口

ヒルトップの入口にたたずむウィリアム・ヒーリス

ヒルトップの入口にたたずむウィリアム・ヒーリス

数々の物語の舞台になっているヒル・トップ

数々の物語の舞台になっているヒル・トップ

開発からヒル・トップを守ったビアトリクスを演じるレニー

開発からヒル・トップを守ったビアトリクスを演じるレニー

湖水地方でよく出会う羊たちがいるのどかな風景。

湖水地方でよく出会う羊たちがいるのどかな風景。


 
2007年09月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部