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シベリア鉄道への案内

圧倒的なスケール

極東の港町ウラジオストクから、はるかロシア連邦の首都モスクワまで。言うまでもなくシベリア鉄道(正確にはシベリア横断鉄道)は世界一長い鉄道路線だ。シベリアの原野を文字通り横断し、他では味わえない壮大な車窓が展開する。なんといっても、このケタ外れのスケールがシベリア鉄道の最大の魅力であることは間違いない。

観光のトップシーズンは夏。晴天の日が多く、真っ青な空の下、一面の大平原やバイカル湖の碧い湖面を存分に眺めることができる。気温は高くても30度程度で、夜には少々肌寒いことも。気候的にも、いちばん過ごしやすいシーズンである。

一方、冬の旅は寒さとの戦いになる。凍てつく大地をひたすら走り、気温はマイナス20〜30度は当たり前。ただし、車内は暖房が効いていてポカポカなので、途中駅で降りるたびに思いきり着込まないといけない。外国人観光客の目立つ夏に比べ、冬は観光客の姿もほとんど見かけないが、それだけ、素顔のシベリアの姿に触れることができる。白一色に染まった地平線は、日本では決してみることのできない美しさだ。

真冬でなくても、春先や秋には雪が降ることもしばしば。日本の真冬並みの気温にまで下がることも珍しくない。真夏でなければ、ひととおりの防寒着は用意する必要がある。

クラスノヤルスク駅に停車するロシア号

クラスノヤルスク駅に停車するロシア号

晩秋のシベリアの様子。すでにうっすらと雪に覆われている

晩秋のシベリアの様子。すでにうっすらと雪に覆われている


イルクーツク到着前には、はるか雄大な山並みも望める

イルクーツク到着前には、はるか雄大な山並みも望める

夕暮れのなか、ひたすら西へ

夕暮れのなか、ひたすら西へ

名もない小さな町を、いくつも通過する

名もない小さな町を、いくつも通過する

世界最大の淡水湖・バイカル湖

沿線の最大の見どころとしては、やはりバイカル湖が挙げられる。パッケージツアーであれば、多くがイルクーツクで下車してバイカル湖観光を盛り込んでいる。ウラン・ウデを過ぎると、およそ2時間にわたり湖岸沿いに走るので、列車に乗ったままでも、そのスケールの大きさを堪能することができるだろう。

バイカル湖は、南北に全長636qという細長い巨大な湖で、水深は最大で1620メートルと、世界一。世界の真水の20パーセントが、このバイカル湖にあるといわれる。車窓に見えるのは、実はこの巨大な湖の一部分にすぎない。冬は氷結し、100年前のシベリア鉄道全通当初は、氷った湖面に線路を敷いていたという。

湖岸の町、スリュジャンカ駅に着くと、各車両の扉にはバイカル湖に生息する淡水魚・オームリの燻製を売る人々で黒山の人だかりができる。ただ現在、この駅では乗客は下車できず、数分停車しただけで慌ただしく発車してしまう。だから売る方も買う方も必死だ。欲しい人は、到着前にはデッキで待機しておこう。また、スリジャンカ駅を過ぎると、路線は山越え区間に入る。左右に蛇行しながらゆっくりと上っていく途中、今度は眼下にバイカル湖を見下ろすことができ、こちらの車窓も見逃せない。

波打ち寄せるバイカル湖の湖岸。湖も空も青い

波打ち寄せるバイカル湖の湖岸。湖も空も青い

線路と湖岸との間には、かつてのバイカル環状鉄道の線路跡が残る

線路と湖岸との間には、かつてのバイカル環状鉄道の線路跡が残る

1週間のホームステイ

スケールの大きさは、なにも車窓ばかりではない。 「ロシア号」でウラジオストクからモスクワまで乗り通すと、6泊7日、じつに150時間にもおよぶ長旅になる。その間、ずっと乗客とは同じ部屋で過ごさなければならない。部屋はコンパートメントになっているものの、いわゆる「個室」ではなく、寝台ごとにカーテンもない。乗客の大半はロシア人だが、彼らのほとんどは英語を片言も解さない。いわば、強制的に“ホームステイ”状態に置かれてしまうのである。

この乗客との触れあいが、長旅を楽しむ最大のテーマであるといえよう。いろんな乗客がいる。陽気な人もいれば、無口で無愛想な人もいる。警察官もいれば軍人もいる。ただ、概して外国人観光客には親切だ。食事を分けてくれたり、ビールやウォッカを飲ませてくれたり。とにかく、もてなすことと酒を飲ませることが大好きな国民性なので、飲み過ぎには注意が必要だ。もっとも、先方はこちらが酔いつぶれると喜ぶのだけれど……

また、一車両につき必ず二人の車掌がいて、交代で勤務している。女性が圧倒的に多いが、最近は男性の車掌も増えてきた。彼らと親しくすることも、旅を快適に過ごすポイントである。仲良くなれば、紅茶をサービスしてくれたり、携帯電話を充電してくれたりと、いろいろ助かることも多いだろう。

途中駅で談笑するロシア号の女性車掌。カッコイイ

途中駅で談笑するロシア号の女性車掌。カッコイイ


クラスノヤルスクまで同室だった無口な男性。ひたすら飲んだ

クラスノヤルスクまで同室だった無口な男性。ひたすら飲んだ

以前の旅の一コマ。盛り上がりすぎて大変でした……

以前の旅の一コマ。盛り上がりすぎて大変でした……

車窓を見つめながら黄昏れるふたり。こんな時間も悪くない

車窓を見つめながら黄昏れるふたり。こんな時間も悪くない

2007年4月