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列車の旅の楽しみ

これが「ロシア号」のディナーだ

旅の楽しみのひとつに「食堂車」での食事を考えている人も多いだろう。近年、世界的に食堂車が姿を消しつつある。鉄道ファンのみならず、流れる車窓を眺めながらのディナーを楽しみにしている人は多いはずだ。

150時間も走り通す「ロシア号」には、もちろん食堂車が連結されている。朝9時半くらいから夜の10時くらいまで営業しており、メイン料理からサラダにスープ、また朝食なら目玉焼きやポテトなど、ひととおりの料理がそろっている。その気になれば、すべての食事を食堂車でとることもできる。酒類もビールにウォッカ、ワインなど豊富だ。

ただ、食堂車はいつもガラガラ。30席程度の座席が座れないということはまずない。

なぜ、ガラガラなのか。その理由は、値段が高いことと、それとメニューが乏しいことに尽きる。メニューは渡されるものの、実際には肉(牛から豚)か鶏か魚、くらいの選択肢しかない。メイン料理にスープ、パン、ビール、そして食後のコーヒーを頼むと500ルーブルを越えてしまうのである。日本円にすれば2500円くらいであろうか。

だから、一週間ずっと食堂車で食べると、数万円はかかってしまい、また飽きてしまう。また、自分の乗っている車両から食堂車までが遠い(最低でも3〜4両、遠ければ10両以上も歩かなければならない)ため、行くのが面倒になってもくるだろう。とはいえ、されど食堂車。その雰囲気は捨てがたい。味も決して悪くはないので、せっかく1週間も乗り通すなら、何回かは利用してみよう。旅の貴重な思い出になることは間違いない。

食堂車には、4人がけ座席が30人分ほどならぶ

食堂車には、4人がけ座席が30人分ほどならぶ

清潔に整えられたテーブル。雰囲気もまずまず

清潔に整えられたテーブル。雰囲気もまずまず


メイン料理、牛ヒレ肉のステーキ。なかなか豪勢だ

メイン料理、牛ヒレ肉のステーキ。なかなか豪勢だ

サラダは、トマトとキュウリが定番。125ルーブル

サラダは、トマトとキュウリが定番。125ルーブル

こちらは豚肉料理。ポテトもついて265ルーブル

こちらは豚肉料理。ポテトもついて265ルーブル

スープは大体、1種類しかない。今回の旅ではボルシチではなく、コンソメのスープでした

スープは大体、1種類しかない。今回の旅ではボルシチではなく、コンソメのスープでした

魚料理は鮭。日本人にも合う味付けで美味しかった

魚料理は鮭。日本人にも合う味付けで美味しかった

コーヒーが実は高く、60ルーブル前後。紅茶だと20ルーブル程度で飲める

コーヒーが実は高く、60ルーブル前後。紅茶だと20ルーブル程度で飲める

途中駅での買い出しも楽しみ

では、食堂車に行かない乗客は、いったい何を食べているのか?

ロシア人の多くは、乗車時に食料をたくさん持ち込み、それを車内で食べている。パンやサラミ、チーズなどが多い。カップラーメンもよく食べている(車両ごとにサモワールがあるので、熱湯はいつでも手に入る)。

また、20分程度停車する途中駅では、ホームに露店が並び、ピロシキや野菜、ジャガイモや卵などが売られていることがある。これらは概して安く、持ちきれないほど買っても100ルーブルほど。魚や果物など、その土地でしか食べられないものもある。一般的に、ハバロフスク〜イルクーツク間で、露店のある駅が多い。一方、イルクーツク以西の停車駅に露店はほとんどなく、普通の売店しかない駅が大半だ。だから、日本からカップラーメンなどの食料を多少は持参した方がいい。

ホームでは、それぞれお店を出して自家製の食べ物を売っている

ホームでは、それぞれお店を出して自家製の食べ物を売っている


山間の町、オブルチエ駅のホームには、ずらりと露天が並ぶ

山間の町、オブルチエ駅のホームには、ずらりと露天が並ぶ

栄養不足にならないよう、サラダ類も食べよう

栄養不足にならないよう、サラダ類も食べよう

キイチゴは、ロシアの市場ではよく見かける。とても美味しい

キイチゴは、ロシアの市場ではよく見かける。とても美味しい

車内設備と過ごし方

それから、簡単に車内をご紹介。 「ロシア号」の編成は、機関車・荷物車のあと2等客車が続き、1等車、乗務員専用車両、食堂車という順番が一般的だ。短くても10両以上、長い場合は20両ほどがつながれている。「ロシア号」以外の列車の場合は、さらに3等車が連結されていたり、食堂車が編成の中ほどにあることもある。

客車は2等が大半で、1等は基本的には1両のみ。2等は4人用コンパートメントが10室ほど並んでいる。また1等は2人部屋で、室内にテレビも設置されている。最近はシベリア鉄道もサービスが向上し、ウラジオストクの乗車時には飲み物やお菓子が置かれていることもある。ただし、これは有料。食べた分だけあとでお金を払わないといけない。

各車両の両端部にはトイレがあり、モスクワ側には車掌室とサモワールもある。サモワールはいつでも利用でき、またグラスは車掌から借りられる。紅茶やインスタントコーヒーも売ってくれる。 さて、長旅ともなると気になるのがトイレと洗面だ。トイレは垂れ流し式なので、駅の停車時には鍵がかけられてしまう。また洗面所もトイレの中にしかない。都市に到着するときなど、1時間以上も利用できなかったりするので、注意が必要だ。

シャワーは、夏場はトイレを改造して、急造のシャワーを使わせてくれることがある。値段は車掌によってちがうが、だいたい50ルーブル程度。あと、あまり知られていないが、ホンモノのシャワー設備も実はある。食堂車の手前に乗務員専用車両が連結されていて、そこにシャワー室が設けられているのだ。こちらも、頼めば使わせてもらえる。

ただし、大半の乗客は、1週間のあいだシャワーを浴びず、着替えもせずに乗り通しているようだ。洗面は、トイレの洗面所で済ますのが基本だが、蛇口が使いづらいので、うがい用にミネラルウォーターを使うのもいいだろう。途中駅で下車した際に、ミネラルウォーターを使ってホームで歯を磨くという裏技もある。夏場なら、ミネラルウォーターで頭を洗う人もいる。また、身体を拭くウェットティッシュはとかく重宝する。

さらに、携帯電話やデジカメなどの充電も気になるところ。廊下にはいくつかコンセントの差し込み口があるのだが、電気が流れていないことも多い。また、車掌によっては充電していると怒る人もいる。原則としては、充電できないと思って予備の電池などを用意しておいた方がよい。また、ロシア人の乗客のなかには、車掌にチップを払って充電してもらっている人もいる。

車両内は基本的に冬でも暖かく、薄着で大丈夫だが、車両間を移動する際は外気温の中を通過することになる。またコンパートメント内の空調の調節はできない。

最後に、防犯上の注意点。車内は比較的安全で、盗難事件はそれほど多くはないが、しかし荷物の管理は絶対だ。コンパートメントを離れる際は、貴重品(財布・パスポート・チケット・バウチャーなど)は必ず身につけ、荷物には鍵をかけること。デジカメなどの電化製品も要注意。荷物は座席の下などに収納することができるが、座席と荷物をチェーンで結びつけておくのがいいだろう。

2等客車コンパートメントの様子。日本のB寝台車とよく似ている

2等客車コンパートメントの様子。日本のB寝台車とよく似ている

トイレ内の洗面台。蛇口を下から押して水を出すタイプ

トイレ内の洗面台。蛇口を下から押して水を出すタイプ

トイレはそのまま外に垂れ流し。貴重品を落とさないよう要注意!

トイレはそのまま外に垂れ流し。貴重品を落とさないよう要注意!

2007年4月