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ポルトガルの世界遺産その3

バターリャの修道院[1983年文化遺産(1)(2)]

1385年8月14日、王位継承問題を巡り、侵攻してきたスペインのカスティーリャ軍に対して、ジョアン1世率いるポルトガルの軍隊が奇跡的な勝利を納めた。その勝利をもたらしてくれた聖母マリアに感謝して、「勝利の聖母マリア修道院」が建設された。

ポルトガル・ゴシックとマヌエル様式の傑作

修道院前の広場に立つジョアン1世の騎馬像

修道院前の広場に立つジョアン1世の騎馬像

英語で「バトルbattle」、ポルトガル語で「バターリャbatalha」。「戦い」という名の由来には、ポルトガル国民が自らの誇りと独立を守り抜いた歴史がある。数的優位に立つカスティーリャ軍を打ち破ったアルジュバロータの戦いは、まさに奇跡といえる勝利だった。戦いの翌日、ジョアン1世は、勝利をもたらしてくれた聖母に修道院の寄進を誓い、3年の後の1388年、戦場にほど近い地(今のバターリャ)に「勝利の聖母マリア修道院」の建設を始める。

初代建築家は「王の回廊」や南のファサードなどを建設したアフォンソ・ドミンゲスであり、その後も、代々の王や何人かの建築家によって引き継がれ、1388年に始まった修道院建設は16世紀の初頭まで続けられた。その結果、ポルトガルゴシックとマヌエル様式が混在することとなった。聖堂や「創設者の礼拝堂」はドミンゲスの後を継ぐダヴィ・ウゲットにより建設された。彼は「未完の礼拝堂」も着工している。

王の回廊と未完の礼拝堂

建物の西にある入口から入ると、ステンドグラスから柔らかな光が降り注ぐ、教会内部の簡素な空間が広がる。すぐ右側に「創設者の礼拝堂」があり、ジョアン1世の家族の墓所となっており、エンリケ航海王子もここに眠っている。

教会から「王の回廊」に出ると、マヌエル様式の独特な装飾パターンが出迎えてくれる。その先には「参事会室」があり、無名戦士の墓が置かれ、衛兵が護っている。この部屋には柱がなく、ステンドグラスが美しい。

回廊の東の出口から一旦外に出て、次はいよいよ「未完の礼拝堂」へ。八角形の霊廟で、1面が入口となるため、7つの礼拝室を持っている。ドゥアルテ1世が自身の墓所とするために建設を命じたものの、その完成を待たずに1438年に死去したため、100年もの間工事は進められていたが、天井は造られていない。

アルコバッサの修道院がモデルとなった

アルコバッサの修道院がモデルとなった

アルジュバロータの戦いを描いた絵画

アルジュバロータの戦いを描いた絵画

教会内部はステンドグラスから光がこぼれ、簡素ながらも荘厳な空間が広がる

教会内部はステンドグラスから光がこぼれ、簡素ながらも荘厳な空間が広がる

3段の水盤を持つ噴水を繊細な彫刻の施された拱廊が取り囲む(王の回廊)

3段の水盤を持つ噴水を繊細な彫刻の施された拱廊が取り囲む(王の回廊)


衛兵交代後のひととき。衛兵と少女のふれあい

衛兵交代後のひととき。衛兵と少女のふれあい

王の回廊を飾るマヌエル様式の華美な装飾はディオゴ・ボイターカの力作である

王の回廊を飾るマヌエル様式の華美な装飾はディオゴ・ボイターカの力作である

太陽の動きが、光と影の微妙な演出を施す

太陽の動きが、光と影の微妙な演出を施す


扉口のアーチを飾る彫刻は繊細であり幻想的な美しさを漂わせている

扉口のアーチを飾る彫刻は繊細であり幻想的な美しさを漂わせている

天井がないので雑草も芽吹いている

天井がないので雑草も芽吹いている

シントラの文化的景観[1995年文化遺産(2)(4)(5)]

シントラの町は、深い緑に包まれ、自然と建造物が調和している。その素晴らしい景観はヨーロッパ各地の景観設計に多大な影響を与えてきた。

ポルトガルの栄華を反映した絢爛豪華な王宮

貴族や宮廷人が追い求め続けたひとつの理想郷の形がシントラである。かつて王家の避暑地だったこの地にも、19世紀に入り貴族や資産家たちの別荘が建てられるようになる。シントラの町並みは、緑深い木々に埋もれるように、王宮を中心に広がり、キンタと呼ばれる豪奢な屋敷も点在している。

現在、シントラは国内でも有数な観光地。首都リスボンから西へ30kmほどの距離にあるので、鉄道を使っての日帰り旅行には最適である。

王宮は14世紀にエンリケ航海王子の父ジョアン1世が夏の離宮として建設したものに、16世紀になってマヌエル1世が増築を行ったもの。2本の円錐状の煙突が特徴的であり、その後も増改築が繰り返され、さまざまな様式が混在している。往時のポルトガルの繁栄と栄華を反映し、アズレージョなどで絢爛豪華な室内装飾が施されている。各部屋は王家の歴史やエピソードを物語っている。

アズレージョに見られる
マヌエル様式の特徴、
植 物のモチーフと
図案化した天球儀


天井板に27羽の白鳥が描かれ、天正遣欧少年使節が

天井板に27羽の白鳥が描かれ、天正遣欧少年使節がもてなしを
受けたという白鳥の間

434番のバスの活用で効率よく回ろう

14世紀にジョアン1世によって建てられた王宮のほかに、ノイシュバンシュタイン城を建てたルートヴィヒ2世のいとこであるフェルナンド2世が修道院を改造して建てたペーナ宮殿、7〜8世紀にムーア人によって築かれた城壁の残るムーア城跡、12世紀の王族の別邸をイタリアの建築家ルイジ・マニーニが改築したレガイラ宮殿など、見どころが多い。

健脚家なら徒歩で挑戦するのもよいが、王宮や宮殿の見学も考えるとバスを有効に利用したい。434番のバスは、シントラ駅→レプブリカ広場を中心としたシントラ・ヴィラ→ムーアの城跡→ペーナ宮殿→シントラ・ヴィラ→駅と巡回するので、見どころを攻略するうえで非常に便利だ。チケットは3.95ユーロで、運転手から買う。料金8.50ユーロの1日乗り放題のパスもある。

観光のハイライトは王宮。シンボルとなっている煙突の下は厨房になっている

観光のハイライトは王宮。シンボルとなっている煙突の下は厨房になっている

紋章の間の壁は狩猟の場面を描いたアズレージョで飾られている

紋章の間の壁は狩猟の場面を描いたアズレージョで飾られている

カササギの間は、ジョアン1世と待女のスキャンダルがモチーフ。PORBEM(善意)と言い訳が…。

カササギの間は、ジョアン1世と待女のスキャンダルがモチーフ。PORBEM(善意)と言い訳が…。


王宮前のレプブリカ広場から見上げたムーア城跡

王宮前のレプブリカ広場から見上げたムーア城跡

美味しい水が湧き出すムーアの泉

美味しい水が湧き出すムーアの泉

2007年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部