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ポルトガルワインの魅力(2)

ポートワイン研究

英語の名前が多いのは、関税特権を与えられたイギリス企業の進出の名残

英語の名前が多いのは、関税特権を与えられたイギリス企業の進出の名残

ドウロとその支流の一帯は片岩層の山。日中に日を浴びた岩が、冷え込む夜もしっかりと保温する

ドウロとその支流の一帯は片岩層の山。日中に日を浴びた岩が、冷え込む夜もしっかりと保温する

ポルトガルの黄金の指輪が育むポートワイン

ポルトガルワインを大きく2つに分けると、VQPRD(産地限定高級ワイン)とヴィニョ・デ・メザ(一般ワイン)に分けられる。VQPRDの産地には長い歴史の中で制定された原産地管理呼称地域D.O.C.(フランスのAOCに相当)、新たに制定された統制原産地表示のI.P.R.(フランスのVDQSに相当)地域の合計45地域が指定されている。ドウロはポートワインとスティルワインのふたつのD.O.C.に制定されている。

アルト・ドウロといわれるドウロ川上流とその支流の一帯は、世界的な名声を誇るポートワインを育む地として、ポルトガルの「黄金の指輪」と呼ばれる。ブドウ畑の総面積は33,000ヘクタール。ドウロ川の下流部からバイショルゴ、シマコルゴ、ドウロ・スペリオールの3地域に分けられる。特に中部地域のピニャオ付近には高品質なポートワインを生むブドウ畑が多く集まっている。また、すべてのブドウ畑は「ワイン生産者管理委員会(カサ・ド・ドウロ)」によって、標高、生産量、ブドウ品種、畑の傾斜、方角、樹齢など12の細かい項目によって分類され、AからFの6段階に格付けがなされている。

良質なブドウが育つアルト・ドウロ

良質なブドウが育つアルト・ドウロ

ブドウ棚がつくる影の中をさわやかな風が通り抜ける(キンタ・ド・バラード)

ブドウ棚がつくる影の中をさわやかな風が通り抜ける
(キンタ・ド・バラード)

ポートワインはこうして造られる

ブドウの収穫は9月末から10月上旬にかけて行われる。収穫後、ブドウを破砕し発酵させる。かつては、石の平底舟に積み上げられたブドウを肩を組んだ男たちが足で踏んで破砕していたが、現在は機械を使用するようになっている。発酵途中でアルコールを添加し甘さを残すことを酒精強化というが、ポートワインの場合、発酵槽に入れられたあと、2〜3日後に77%ブランデーが添加される。もろみ約450リットルに対し、約100リットルのブランデーが加えられ、アルコール度数は約20度になる。酒精強化で発酵を途中で止めることにより、自然の甘さと果実味を残すことができる。

その後、澱引きされた後、そのまま樽で寝かせ、翌年の春、本格的な熟成をさせるために、ポルト市対岸にある「ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア」の貯蔵庫に運び込まれる。なお、1978年からはドウロ川上流の限定地域内でも貯蔵が許されるようになっている。

ワインの運搬に使われていた帆船バルコ・ラベーロ

ワインの運搬に使われていた帆船バルコ・ラベーロ

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの樽の中で本格的な熟成に入る

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの樽の中で本格的な熟成に入る

世界初の産地管理呼称地域制度

16世紀半ば、イギリスとの交易が盛んになった頃、イギリスから羊毛製品やコットンを積み、帰りの船にオリーブオイル、果物、そして赤ワインを積んでいたが、当時のポルトガルの赤ワインはフランスの物に比べ荒々しくあまり人気がなかった。そこで、まだ発酵中で糖分の残っているワインに少量のブランデーを添加し、風味を和らげたのがポートワインの始まりだ。

1703年、イギリスとポルトガルとの間でメスエン条約が結ばれポートワインの関税が引き下げられ、また、英仏戦争、フランス革命とイギリス人からフランスワインが遠ざかるなか、ポートワインの輸出は盛んになる。そうなるとポートワインを模倣した、アルト・ドウロ以外で造られた偽ポートワインが生産されるようになった。我が国でも明治後半に「○玉ポートワイン」(注:悪玉ではない)という酒が発売された。もっとも製法をまねるという正攻法ではなく、酸や砂糖などを加えて甘みを出すという合成酒であったが…(酒精強化ワイン参照)。そこでリスボンの大地震の復興の手腕で知られる、時の首相マルケス・デ・ポンバル侯爵は、ポートワインの品質を守るために、1756年世界に先立って原産地管理法を制定し、これが世界で最初の原産地呼称法となった。

ポートワインのカテゴリー

ルビー・ポート Ruby Port
ポートワインの中でも最もポピュラーで若々しい甘みがあるタイプ。 名前のとおり鮮やかなルビーの色合いを持っている。
トゥニー・ポート Tauny Port
黄褐色を意味する英語のトゥニーTaunyが名前の由来。 ルビー・ポートを樽の中で長く熟成させると、赤い色素が徐々に失われ黄褐色になる。
ホワイト・ポート White Port
ホワイト・ポートは白ブドウ品種から造られる。アルコール度数は19〜22%で、多くは甘口で食前酒として、デンマークなど北欧で人気のワインである。
ヴィンテージ・ポート Vintage Port
ブドウの品質の良い年の優れたワインだけを、樽での熟成後ろ過せずに瓶詰し長く熟成させたワイン。ポートワイン・インスティテュートに申請し承認を受けて造られる。収穫から樽熟2年目の7月初めから3年目の6月末までの間にろ過せずにそのまま瓶詰され、長い年月熟成させる。デキャンティングが必要である。
レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート Late Bottled Vintage Port(LBV)
ヴィンテージ・ポートに次ぐ良質のポートワイン。作柄に恵まれたブドウを原料とし、収穫からほぼ4〜6年目にろ過して澱引きされた後、瓶詰したヴィンテージ表示(LBV)のあるポート。4年目の3〜9月の間にポートワイン・インスティテュートに申請し承認を受け、4年目の7月〜6年末までにろ過して瓶詰する。デキャンティングは不要である。
エイジド・トゥニー・ポート Aged Tawny Port
年数表示のあるポートワイン。本格的なトゥニー・ポートで、10年、20年、30年、40年超の4種ある。複数年度のワインをブレンドするので、ラベルに記された年数は、樽熟された平均年数を表す。黄褐色で豊潤な甘味、食後酒としての余韻が楽しめる。瓶詰時の表示が必要。
コリエイタ Colheita
単年度のブドウから造られた本格的なトゥニー・ポート。収穫から4年目の7月から年末までにポートワイン・インスティテュートに申請し承認を受け、7年以上の樽熟成の後、ろ過して瓶詰めされる。デキャンティングは不要である。収穫年と瓶詰時の表示が必要。

生産から販売までを管理しポートワインを公式に保証する

ポートワイン・インスティテュート(Instituto do Vinhodo Porto(I.V.P))は、1933年にポートワインの品質と名声を保つために設立された半官半民の組織である。I.V.Pの主な役割としては、ポートワインの生産から販売までを厳格に管理し、出荷されるポートワインの品質保証を公式に行うこと。品質の保証は、アルコール度数、エキス、糖、酸、揮発酸などに加え、限定地域からの生産を確認するためのアイソトープやガスクロマトグラフィーでの分析を行う。次に、8人で構成されるテイスティングメンバー全員一致の合意があって初めて承認されるといった非常に厳格な審査だ。合格したポートワインには番号がふられた「保証シール」が貼られる。

Instituto do Vinhodo Porto(I.V.P)

織田信長も飲んだ珍陀酒はポルトガルワイン

戦国時代に日本に渡来した南蛮酒は珍陀酒(ちんたしゅ)と呼ばれた。珍陀という名の由来は、ポルトガル語で赤ワインを「VINHO TINTO(ヴィーニョ・ティント)」いうことから、赤を表す「TINTO(ティント)」が転じて珍陀となったと考えられる。

信長は血のような赤葡 萄酒を好んだといわれる

織田信長


参考資料:ポルトガル観光・貿易振興庁『PORT WINE』

2007年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部