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ポルトガルをもっと楽しむためのキーワード・その(1)

アルト・ドウロのピニャオン駅のアズレージョ

アルト・ドウロのピニャオン駅のアズレージョ

近くて遠い国、遠くて近い国。よりたくさんのポルトガルの魅力に触れるために、知っておきたいことがある。ひとつひとつのピースを集めたら、あなたにとってのポルトガルがアズレージョの大作のように完成することだろう。ここで紹介するキーワードをきっかけに、さらに深い魅力を探る旅に出よう。

アズレージョ

装飾タイル。絵タイル。14世紀頃イスラム教徒がスペインに持ち込み、その後、アンダルシア地方で大量生産され、ポルトガルにも輸入されるようになった。白地に青色で描かれたものの印象が強いが、オランダの影響を受けて17世紀末頃から流行するようになったもの。ポルトガルでは内壁、外壁を問わず使用されている。語源は青を表すポルトガル語の「アズール」から来ていると思っていたら、そうではないらしい(そういう説もあるが…)。“なめらかで磨かれた小さな石”を意味するアラブ語のal-zuleiqueが語源とのこと。確かにシントラの王宮で見た初期のヒスパノ・アラベ様式のアズレージョは、タイルの面が浮き彫りになっていて、彩りのあるものだった。

シントラ王宮のアズレージョ

シントラ王宮のアズレージョ

サウダーデ

語源はラテン語のsolitate(孤独)。日本語に訳すと「郷愁」「孤愁」「憂愁」「哀惜」「懐古」などと訳されるが、ひとつの訳語ではその一面しか言い表せない多面的な意味をもったポルトガル語である。愛する人やものそして時間など、失われたものに対して抱く郷愁や哀しみそして懐かしさをも言い表す言葉がサウダーデである。ポルトガル人はこの外国語に置き換えることの難しい語句を持っていることに誇りを感じているとのことだ。

ちなみに、初めて「サウダーデ」という言葉に触れたのは、『異邦人』を歌った久保田早紀さんの同名LPレコードだったと記憶している。そのとき、ファドという音楽の存在も知った。

サウダーデをメロディに乗せて

サウダーデをメロディに乗せて

ファド

ポルトガル版の演歌。ファドは“運命”や“宿命”を意味するラテン語の「fatum」が語源といわれる。下町に住む貧しい人たちが、日々の辛い生活の中で、心を癒すひとときの娯楽として、ファドを聴き、そして仲間と一緒に歌った。サウダーデの心を込めて。ファドの伴奏でメロディを奏でるのがギターラ(ポルトガルギター)であり、リズムを担当するのはビオーラ(一般的なギター)である。ギターラはタマネギのようなボディが特徴的で、6組の復弦(12弦)をもっている。現在、アルファマ地区では本格的なファドの演奏を聴くことのできるファドハウスから、観光客向けのエンターテインメント性の高いもの、地元の人が中心の庶民的な店までさまざまなバリエーションがあるので、好みで選ぶといい。

『地球の歩き方A23ポルトガル07〜08』編の巻頭特集は、「ポルトガルの民俗歌謡 心のファドを聴く」がテーマ。日本を代表するファド歌手の月田秀子さんにファドの魅力や楽しみ方そしてリスボンの下町の歩き方を紹介いただいている。

照明が絞られ、ファドの演奏が始まる

照明が絞られ、ファドの演奏が始まる

マヌエル様式

国王マヌエル1世の統治下(1495−1521)に開花したポルトガル独特の建築・芸術様式である。ゴシック建築様式をベースとしたもので、過剰装飾が特徴である。イスラム様式のほかに、海草やロープそして天球儀など海洋、新大陸、そしてキリスト教の象徴がデザインに取り入れられている。トマールのキリスト修道院、リスボンのベレン地区にあるベレンの塔、ジェロニモス修道院などが代表作としてあげられるが、サド川河口の工業都市セトゥーバルにあるイエスの教会がマヌエル様式の発祥の地とされる。ジェロニモス修道院を手がけたフランスの建築家ボイタックの建築によるねじれた三つ編みのような柱や窓の装飾にその特徴を見いだすことができる。

ジェロニモス修道院の一階回廊はボイタックの作

ジェロニモス修道院の一階回廊はボイタックの作

レコンキスタ

レコンキスタReconquistaはスペイン語発音、ポルトガル語では同じ綴りで、ルコンキシュタと読む。日本語訳は国土回復運動だったり、国土回復戦争だったり、近年ではイスラムの視点も考慮し再征服運動ともいう。イベリア半島において、718年から1492年まで続いた、イスラム勢力に征服された国土をキリスト教国が再征服を果たすこと、そしてその戦いをいう。イスラム勢力からの国土奪回は北部から南下して行われた。1249年、アフォンソ3世は、最後の砦ファーロを落とし領内のレコンキスタを完了させ、都をリスボンに移す。一方、スペインでは1492年のグラナダ陥落によりレコンキスタが終結するが、ポルトガルに243年の遅れを取った。

レコンキスタを完了させたアフォンソ3世

レコンキスタを完了させたアフォンソ3世

酒精強化ワイン

原料ブドウの糖分が酵母の作用によって分解されアルコールが発生するというのがワインの発酵過程である。つまり発酵が進めば進むほど糖分が分解され辛口のワインとなるということだ。発酵を促す酵母もアルコール度が15%程度になると生育できなくなる性質を活かし、糖分が多く残った状態でブランデーなどを加えアルコールの度数を上げて発酵を止め、甘みを残す方法を酒精強化という。その製法で糖分を残したまま熟成させたワインを酒精強化ワインという。

ポートワイン、マデイラワインは3大酒精強化ワインといわれる。残る1種はスペインのへレス地方のシェリー。日本でも明治後期に、「赤玉ポートワイン」なるものが売り出されている。日本初の女性のヌードポスターが話題になり、好調な売り上げで成功を収めるも、1973年原産地呼称法を守るマドリッド条約により「赤玉スイートワイン」と改称を迫られた。「赤玉ポートワイン」は生のワインにアルコール、酒石酸、砂糖、色素などを混ぜた合成酒であり、(メイド・イン・ジャパン)のナポリタンのように根拠のないもののような気がする。原産地呼称法云々以前の問題だ。

3大酒精強化ワインのひとつポート

3大酒精強化ワインのひとつポート

2007年9月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部