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洞窟住居 お宅拝見!

これが洞窟!? オドロキの現代住宅事情

内部は天井が高く開放的

内部は天井が高く開放的

改築前の洞窟内部の写真。ビフォー&アフターのギャップがすごい

改築前の洞窟内部の写真。ビフォー&アフターのギャップがすごい

現在サッシには人が戻りつつあるというが、いったいどんな暮らしをしているのだろう。市内でインテリアショップを経営しているフェルナンド・ポンテFernando Ponteさん、マリーサMarisaさんご夫妻の自宅を見せていただいた

玄関の扉を開けると、外観からは想像もつかない広々とした空間が広がっていた。1994年から住み始めたそうだが、工事には2〜3年を要したという。荒れ果て湿気のこもった洞窟を実際の住まいとして蘇らせるのは大変な作業だったに違いない。

事実、寝室のカビと湿気が特にひどかったため1年かけて乾燥させたとか。壁もすべて石灰岩で塗り直した。洞窟だけに夏はひんやり涼しいが、冬の寒さ対策のためリビングには床暖房の工夫も。フェルナンドさんによると、いつ頃つくられた洞窟かは不明だが、リビングの奥の壁から1600年代のレリーフが発見されたことから少なくともその年代には住居あるいは教会として使われていたと考えられるという。

サッシの岩山は石灰岩なので柔らかく加工しやすい。壁の厚みが1メートル40センチほどもあるので、たとえばキッチンに棚がほしいなと思えば、壁を掘って棚をつくることもできる。フェルナンドさんご夫妻は、洞窟住居は「つくることはできるけど、完成することはないんです」と言う。それは言い換えれば住人とともに自在に変化する、最高にオリジナルな空間を創造できるということかもしれない。


外観はいたってシンプル

外観はいたってシンプル

半円アーチが額縁の役割を果たしているかのような美しいリビング

半円アーチが額縁の役割を果たしているかのような
美しいリビング


サッシへのこだわりと誇り

サッシが大好きと語る、優しい笑顔がすてきなフェルナンド・ポンテさん。サンタ・マリア・デ・イドリス教会を臨むテラスにて

サッシが大好きと語る、優しい笑顔がすてきなフェルナンド・ポンテさん。サンタ・マリア・デ・イドリス教会を臨むテラスにて

以前は旧市街に住んでいたというフェルナンドさんご夫妻。なぜサッシに住むことを決めたのだろう? フェルナンドさんは、その問いに「人間の尺度」という言葉で答えてくれた。

「朝早くから夜遅くまで仕事をする日々の生活のなかで、家ではゆっくり過ごしたかった。以前の(旧市街の)家は外を走る車の音や喧噪で落ち着けなかったからね。それに私自身サッシ地区が大好きなんだ。妻も私もサッシに住みたいって10年間思い続けていたので今の生活は幸せだよ。サッシは車が入れないから静かで空気もいいし、人間らしい尺度で生活ができるんだ」。

とはいえ今から約50年ほど前、衛生面や経済面などの問題から住民は一斉退去を余儀なくされたサッシの洞窟住居群。決して明るいとはいえないその歴史に抵抗はなかったのだろうか。

幼い頃は周囲の大人から「子供はサッシに近づかないように」と言われていたという。フェルナンドさんとサッシとの接点は、10歳の頃入っていた聖歌隊の本部がサッシエリアにあったことくらい。しかし大人になって世界中を旅したフェルナンドさんは、「サッシってすごい! ほかにどこにもないすばらしい町だ」と自分たちの故郷を誇らしく思ったという。今では5歳になる娘さんも「私サッシに住んでるのよ」と友達に自慢しているんだとか。


サッシに暮らすということ

床暖房で暖かいリビング。ご夫婦のくつろぎの空間

床暖房で暖かいリビング。ご夫婦のくつろぎの空間

左写真の右端にあるくぼみが見えるだろうか? このレリーフはそのくぼみに飾られていた1600年代のものだという

左写真の右端にあるくぼみが見えるだろうか? このレリーフはそのくぼみに飾られていた1600年代のものだという


ところでこの場所に決めた理由を聞いてみると、フェルナンドさんは「いやぁ、実は家の前にある通りの名前がVia Ponteっていうんだ。僕の名字と一緒だったからさ」と少年のような笑顔で答えてくれた。マリーサさんは「男って・・・」といったようなニュアンスで、肩をすくめて笑っていたけれど。

マリーサさんはサッシでの暮らしについて、「このエリアは階段だらけだし、いろいろなルールもあるから少し忍耐が必要だけど、周囲は本当に静かだし家のなかも快適で毎日ヴァカンスをしているような気分なのよ」と教えてくれた。

フェルナンドさん一家だけでなく、サッシの独特な魅力と静かで快適な暮らしを求めて移住してくるマテーラの人が徐々に増えつつある。世界遺産として大切に保存しておくだけでなく、過去これまでもそうであったように、人が実際住むことによって町が息を吹き返し、また新しい歴史を刻んでいくということをこの土地の人々は知っているのだ。

COLUMN 洞窟ホテルに泊まる

昔から住居や教会として使用されていた洞窟を改装してつくられたサッシ内のおすすめホテルをご紹介しよう。

マテーラはパッケージツアーにも組み込まれている人気の町だが、多くのプランが2〜3時間の滞在で次の目的地へと移動してしまう。もちろん見どころ満載のイタリアではどこも駆け足でめぐりがちだけれど、個人での旅行や少しでも予定に余裕があれば、ぜひマテーラに宿泊してみてほしい。夜の幻想的な雰囲気や朝の厳かな陽の光も宿泊してこそのお楽しみだ。

テラスからの眺望もすばらしい(ホテル・サッシ)テラスからの眺望もすばらしい
(ホテル・サッシ)

朝食も洞窟でどうぞ(ホテル・サンタンジェロ)朝食も洞窟でどうぞ
(ホテル・サンタンジェロ)


ホテル・サッシ
Hotel Sassi

サッソ・カヴェオーソ地区にある、
18世紀のサッシを改装した洞窟ホテル

住所:Via San Giovanni Vecchio 89
Tel:(+39) 0835 331009
Fax:(+39) 0835 333733
URL:http://www.hotelsassi.it/

壁の土感が洞窟気分を盛り上げる

壁の土感が洞窟気分を盛り上げる


ホテル・サンタンジェロ
Hotel Sant’Angelo

独立した16の部屋からなる4ッ星ホテル。
サン・ピエトロ・カヴェオーソ広場すぐ

住所:Piazza San Pietro Caveoso
Tel:(+39) 0835 314010
Fax:(+39) 0835 314735
URL:http://www.hotelsantangelosassi.it/

ロマンティックな室内

ロマンティックな室内


2008年5月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部