ガイドブック編集部 > 特集 >  南イタリア 洞窟住居の町マテーラを訪ねて > こちら側と向こう側 そして旅のおわりに

こちら側と向こう側 そして旅のおわりに

対岸へショートトリップ

ムルジア平原から見たサッシの眺望

ムルジア平原から見たサッシの眺望

特等席は譲らないぞとばかりにどこからともなくワンコが登場

特等席は譲らないぞとばかりにどこからともなくワンコが登場

せっかくマテーラを訪れたならグラヴィーナ渓谷の対岸、ムルジア・ティモーネ展望台へも足をのばしてみよう。ムルジア平原は正式名称を「考古学歴史自然岩窟教会公園」といい、サッシと併せて世界遺産に登録されている。

視界に入ってくるのはどこまでも続く緑と忘れ去られた洞窟の姿。そして聞こえてくるのは草花の間を吹き抜けてくる風の音だけ。何もなかったいにしえの時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。

同じ地質であり、古くから使われてきた洞窟もありながら、ムルジア平原はサッシのような町には発展しなかった。採光や換気を洞窟の入口ひとつに頼るしかない昔の洞窟暮らし。渓谷を挟んだこちら側では岩壁が西向きになるため、太陽の光を十分に取り込めなかったことが原因ではないかと考えられている。


淵に立つと足がすくむ。ここでは映画『パッション』でイエス・キリストが磔刑に処せられる場面が撮影された

淵に立つと足がすくむ。ここでは映画『パッション』でイエス・キリストが磔刑に処せられる場面が撮影された

サッシエリアとはひと味違うムルジアの岩窟教会

80000ヘクタールもの広大な敷地にぽつんと洞窟住居跡があったりする


岩窟教会マドンナ・デッレ・トレ・ポルテ

岩肌に刻まれた十字架の数々。ギリシア正教の十字架からラテン十字、マルタ正教の十字などさまざま

岩肌に刻まれた十字架の数々。ギリシア正教の十字架からラテン十字、マルタ正教の十字などさまざま

ムルジア平原では多くの岩窟教会や貯水槽跡などを見ることができるが、その存在をことさら主張するでもなくあまりに自然な形で保存されているため、現地ガイドに頼らなければその在処さえわからないほど。

なかでも12〜13世紀頃につくられたマドンナ・デッレ・トレ・ポルテ教会Madonna delle Tre Porteには、14〜15世紀頃に描かれたと見られるフレスコ画が残っている。盗掘により剥がされている部分もあるが、画の前に立つと人々の信仰が集まっていた場所だということをひしひしと感じる。


当時は植物やタマゴの黄身、血液などすべて自然のもので色づけされたフレスコ画

当時は植物やタマゴの黄身、血液などすべて自然のもので色づけされたフレスコ画

サッシエリアとはひと味違うムルジアの岩窟教会

サッシエリアとはひと味違うムルジアの岩窟教会


旅のおわりに・・・

無人のムルジア平原に佇んでいると、妙に人恋しくなってマテーラの町なかへと足早に戻ってきた。静かでときに寂しくも映るマテーラ。でもこの町に流れるゆったりとした時間に身をゆだねて穏やかな人々との出会いを楽しめば、不思議と帰りたくなくなるほど愛着が湧いてくる。たとえて言うなら久しぶりにふるさとのおばあちゃんの家に帰ってきたような、そんな心ほぐれるひと時を味わうことができるのだ。

〈マテーラで出会った愛しの職人たち〉




1,5)伝統工芸のククーと呼ばれる色鮮やかな土笛をつくる職人さん。ククーはその昔、男性から女性への愛の告白に使われ、そのサイズで愛の大きさをはかっていたという。吹くとピロロロロロロ〜とかわいらしい音がする 2,3,6)サッシを形成するトゥーフォTufo(石灰岩)の工芸職人。白い丸型のものは洞窟住居用の通気孔。三つ目が気になるナゾのお面も 4)サッシエリアの散歩の達人 7)ネコガイドに連れられて歩く穴場の路地裏。対岸には無数の洞窟が 8)お散歩には休憩も必要です 9)わかりやすい解説で案内してくれたガイドのエンツォEnzoさん。彼もサッシの洞窟を改装して住んでいる


2008年5月


ページ上部に戻る
地球の歩き方ガイドブック 編集部