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幻影の古都、ブルージュ。 Brugge

ブルージュは15世紀の繁栄の後、
湖の底に沈んだかのように歴史の表舞台から消えてしまう。
眠りについた町が有数の観光都市として
再び脚光を浴びるきっかけをつくったのは、
ローデンバックが記した小説『死都ブリュージュ』の
ノスタルジックな中世の町並みの描写だった。

中世の繁栄の残照色濃く メムリンク美術館 運河と橋と鐘楼の町 素顔のブルージュ ペギン会院 水の都を体感、運河クルーズ 白鳥の伝説と白いレース カリヨンの響く鐘楼に上る。 聖母教会の聖母子像 美食の町、注目のレストラン グルーニング美術館 笑顔に出会う町

中世の繁栄の残照色濃く

13世紀、ヨーロッパの商業と金融の中心として繁栄を謳歌したブルージュは、15世紀に入ると北海へと通じる水路が沈泥でのため塞がれ、歴史の表舞台から退いてしまう。その後、町の成長の止まってしまう。その結果、繁栄していた中世の町並みが、当時まま損なわれずに残っているのである。


運河と橋と鐘楼の町

ブルージュの町を特徴づけているのは、縦横に張り巡らされた運河とそこに架かる数々の橋。そして、マルクト広場に面して建つ鐘楼である。中世の景観を完全なかたちで留めていること自体が、まさに奇跡であるが、『死都ブリュージュ』という不名誉なタイトルの小説が町の再生のきっかけとなったという皮肉も興味深い。

静寂に包まれた静謐な空間、ベギン会院(ベギンホフ)

ベギンホフは、中世のフランドル地方に生まれた、質素で敬虔な生活を送る女性たちのコミュニティーである。ブルージュのベギンホフは、1245年にフランドル伯夫人によって設立されたものであり、現在、世界遺産の登録物件となっている。観光客ににぎわう時期でも、静寂な空間が広がっている。ブリュッセル出身のオードリー・ヘップバーンの主演した映画『尼僧物語 The Nun's Story』(1959)のロケ地となっている。

白鳥の伝説と白いレース

かつてブルージュの町は、白鳥を紋章としていた領主ピーテル・ランシャル(長い首という意味)に不当な死刑を課したことがあった。当時ネーデルントの摂政であったハプスプルグ家のマクシミリアン1世は、その贖罪としてブルージュの町に白鳥(首が長い)を養育することを命じた。それ以来、白鳥たちは数百年の間、この町に住んでいると伝説は伝える。精緻で優美なボビンレースは、中世以来ブルージュの特産品となっている。

白鳥の優雅なイメージと相まってブルージュの印象を深くする。たくさんのボビンを使って作られる白いレースを見ていると、人のさまざまな思いも編み込まれているような気がする。


聖母教会の聖母子像

聖母教会は13世紀に建築が始まり、15世紀に完成した。その後、度重なる修復によりさまざまな様式が混じり合った建築となっている。ブルージュのランドマークのひとつである教会の塔は122メートルの高さ。内部には、ミケランジェロが『ピエタ』とほぼ同時期に制作した『聖母子像』(写真:右)がある。また内陣の霊廟には、1477年にスイスの軍隊と戦い戦死したブルゴーニュ公シャルル突進公とそのひとり娘で、ハプスプルグ家のマクシミリアンンに嫁ぐも、鷹狩りで落馬し、25歳の若さで命を落としたマリー・ド・ブルゴーニュの棺(写真:下)がある

グルーニング美術館

15世紀初頭のフランドル絵画から現代美術までの絵画を 時代順に展示している。フランドル絵画の創始者ヤン・ ファン・エイクの代表作『ヴァン・デル・パーレの聖母 子』(写真:左下)ほか、マグリットやデルボーなど20 世紀の画家の作品も所蔵している。

Groeningemuseum Dijver 12, 8000 Brugge

(C)Groeningemuseum

メムリンク美術館

聖ヨハネ施療院の一部がメムリンク美術館になっている。代表作の『聖ウルスラの聖遺物箱』(写真:右)や『聖ヨハネ祭壇画』(写真:下)を展示している。

Memlingmuseum Mariastaat 38, 8000 Brugge

静けさを取り戻した素顔のブルージュ

北方のヴェネツアと称されるブルージュだが、単に水の都としての共通点だけではない。観光客が去った後のサンマルコ広場のように、マルクト広場は落ち着きを取り戻しほんの少し素顔を見せてくれる。違うのはゴンドラの舳先のふれあう音が聞こえてこないことだけだ。

水の都を体感、運河クルーズ

水の都ブルージュを実感したいなら、ぜひ運河を巡るクルーズ船に乗っていただきたい。通りからでは眺められない建物の裏側や運河に架かる個性豊かな橋が目の前に展開するので、飽きることがない。乗船することで町並みの与える印象が一変するから不思議である。町歩きをしているときには持てなかった余裕が生まれるので、それまで気にも止めなかった建物の美しいファサードや破風などを改めて鑑賞することができるのだ。時には水鳥たちとの出合いもある(写真:右下)。町歩きも楽しいが、より深く水の都を知るために、水上からの町散策も一度は体験してみたい。なお、クルーズの所要時間は約35分で、料金は6.9ユーロ。乗り場は運河沿いに数カ所ある。


カリヨンの響く鐘楼に上る。

その町をよく知るには、高いところに上れ。
特にヨーロパを旅するときには、無理をしてでも高いところに上るようにしている。町の広がりをつかむことができるだけでなく、新鮮なアングルでの写真撮影のチャンスでもある。ブルージュでは、45個のカリヨン(組み鐘)を持つマルクト広場の鐘楼に上ってみた(8ユーロ)。あいにく の雨模様で遠望はできない状況であったが、366段を上る価値は十分にあった。晴れていればフランダースの平原が見渡せるらしい。右の写真では、マルクト広場から南西に延びるステーンストラート(通り)の先に、ブルージュ最古の煉瓦造りの教会、救世主大聖堂がそびえているのが見える。

美食の町、注目のレストラン

世界各地から観光客が訪れるブルージュは美食の町だ。
ミシュランの3つ星レストランからカジュアルなレストランやカフェまでが揃っているので、目的に合わせて選びたい。特におすすめしたいのが、ヴァン・ヘック氏(写真:左上)がオーナーシェフを務めるミシュランの3つ星レストラン、ドュ・カルメリート(写真:右上)。そして、同じ通り沿いに、ドュ・カルメリートの味を引き継いで、手頃なビストロとしてオープンしたビストロ・レフター(写真:左下)である。また、14年間にわたって1つ星を保持し続けるフィリップ・セリュイス氏のレストラン、デン・グーデン・ハリンク(写真:右下の2皿。白アスパラガスと子羊のペストソース、季節の野菜プロヴァンス風)にも注目したい。

Bistro Refter

De Karmeliet


Den Gouden Harynck


笑顔に出会う町

街角の大道芸人の大笑い、ショコラトリー(チョコレート専門店)のウインドーに映る少女の笑顔、ボビンを操りながらレースを編んでいく老女の瞳にうかぶ微笑,ワッフルを売る少女の照れ笑い。そんな笑顔に出合いながら、知らず知らずに微笑んでいる自分自身に気がつく、そんな町がブルージュ。

2011年04月


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地球の歩き方ガイドブック 編集部