ガイドブック編集部 > 特集 > ブルガリア歴史さんぽ > アルバナシ

アルバナシ

聖誕教会に足を踏み入れると、壁、天井を埋め尽くすフレスコ画が生み出す「紺色」の世界に圧倒され、宇宙空間に放り出されたような気がする。しかし教会の外側には、入り口上にたった1点の傷んだ画があるだけだ。

ヴェリコ・タルノヴォから北へ4kmほどの高台に位置する村アルバナシの歴史は、第二次ブルガリア帝国とともに始まった。首都タルノヴォに住む貴族の夏の別荘地だったという。オスマン・トルコ支配時代には、この村の民は商業や交易を営むようになり、税制上の特権を得たことで富を蓄積し、その力を強大にした。彼らの邸は、外部からの侵入者を拒むような頑健さが特徴だが、邸の内部は美しい装飾が施され、所有者のセンスを誇示するかのようだ。この村にはそんな邸が80余り現存し、うち36の邸が国の文化財になっている。またこの村の教会も文化財指定を受けたものが多く、なかでもアルバナシ最古とされる聖誕教会では、その内部を埋め尽くす色鮮やかなフレスコ画が作り出す「異空間」を体験したい。

オスマン朝の統治下、アルバナシの商人は税制上の特権を授けられたことで財を蓄え、邸宅を構えるようになる。敵の襲撃に備え、堅固な門、高い塀、格子で遮られた窓を備えた、さながら小さな要塞のような形になっていった。もっとも美しいといわれるコンスタンツァリエフの家も、外観は荒削りな印象

17世紀に建造されたコンスタンツァルリエフの家は、オスマン朝のヴェリ・タルノヴォ総督の親戚にあたる女性の家。1階は石造りで2階は木造。写真はリビングルームで、トルコ風のソファーにはブルガリアの伝統的な織物がかけられている

こちらの部屋は、ソファー上におかれた当時のミシン、アイロンなどといったものから女性専用の裁縫室と思われる。この家の内部は外観と裏腹に、ドアや窓、棚、天井が、木彫や石膏彫刻で美しく装飾され、居心地の良い空間となっている

アルバナシ最古のブルガリア正教会が聖誕教会。教会とは思えない外観は、オスマン朝の統治下である16世紀に建造されたから。教会内は、大きく南北に分かれ、南側に奥から男性用礼拝室、女性用礼拝室があり、北側には聖職者用礼拝室と拝廊がある。写真は北側から眺めた教会

男性用礼拝室のイコノスタシスには、細やかな木彫りの細工が施され、かなり豪華な印象。この教会の内部は撮影禁止だが、今回は特別な許可を得て撮影している

男性用礼拝室は、広い空間が確保されている。内部は色鮮やかなフレスコ画で埋め尽くされ、この世のものとは思えない空間が現出する。男性用の礼拝室の壁画は、主にキリストの生涯を表現

フレスコ画「エッサイの木」は、女性用礼拝室と男性用礼拝堂(奥)を分ける壁に描かれている。この画は、キリストの家系図を表している。女性用礼拝室の壁画は、マリアの生涯を表しているという

拝廊の天井画。拝廊は食堂としても使われたようだ。ここも壁、天井にびっしりとフレスコ画が描かれていた。この教会の内部に描かれたフレスコ画には、2000以上の場面、3500人を超える人物が描かれている

拝廊の最奥部の壁にフレスコ画「人生の車輪」が描かれている。太陽を中心とした輪の外側に人間の一生が描かれており、神を信じなければ地獄におちることが分かりやすく表現されている

拝廊のさらに奥には、聖職者用の礼拝室がある。ここへの入室は許されていないが、今回は特別に入ることができた。天井には「全能の神イエス」のフレスコ画がある

このイコノスタシスは、聖職者用の礼拝室のもの。特別な許可の下、入室し撮影した

アルバナシ村の外れには、聖母修道院という小さな女性修道院がある。ここでは奇跡を起こすとされるイコンが守られており、多くの人々が訪れるそうだ

奇跡のイコン「3本手の聖母」。別名「涙を流す聖母」ともいわれる。古びたこのイコンは、オスマン・トルコに征服された1393年に地中に隠されたが、長い年月がたったある日、羊飼いが地中からのうめき声を聞いた。羊飼いが掘り起こすと、このイコンが現れたという



ページ上部に戻る
地球の歩き方ガイドブック 編集部