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エピダヴロス〜今も現役として活躍している古代劇場

ギリシアに残る古代劇場の中でも最も保存状態のよいものだと評価されているのがエピダヴロス遺跡の劇場だ。紀元前4世紀に建造されたものだが、1881年に発見されるまで深く地中に埋もれていたのが幸いしたという。今でも2300年以上前の劇場の基本的な構造をはっきりと確認することができる。中央のサークルは相撲の土俵のように地面が固められ、その周囲は大理石のブロックで整然と囲まれている。最前列の席には背もたれがついていた。ここは貴賓席だったそうだ。席が他の席と違って赤い色がついているのもはっきりとわかる。

ただいま、実験中。劇場の最上段から見下ろす

最前列の席に背もたれがあり赤い色が塗られている(手前右)


エビダヴロスの古代劇場を案内してくれたガイドさんが、劇場の音響効果を体験してみようと提案したので、僕は観客席の最上段に駆け上がった。少し前から小雨が降りだして、幸いそのとき劇場にいるのは僕たちのグループだけになった。実験には絶好の状況だ。
まず一人が拍手をした。聞こえる。次に何人かで普通に話をしてもらう。これも問題なし。最後にガイドさんがコインを落とした。地面に当たるかすかな金属音が聞こえたとき、僕は心から感動してしまった。

中央のサークルの先に続く舞台だった思われる基礎部分を扇の要にして、左右対称に広がる観客席も美しい。座席は55列。前段に34列あり、通路を挟んでさらに21列の座席が背後の丘の地形を利用した斜面をせり上がっている。上段部はローマ時代に増築されたという。建設当時でも6,000人、現在では14,000人もの観客を収容できる。通路に沿って、ぐるりと観客席を歩いた。扇の要の舞台の正面に見て腰を下ろす。舞台のその向こうはそのままペロポネソス半島の風景につながっている。この自然との一体感もまたこの劇場の魅力になっているのだと思った。
エピダヴロスの古代劇場は世界遺産の一部でありながら、現役の劇場としても機能している。毎年夏のエピダヴロス・フェスティバルで古代ギリシア劇が上演されるのだ。期間中は、アテネやナフプリオンから往復送迎バスがセットになった観劇ツアーが催行される。

エントランスゲートの案内看板

今回は駆け足で世界遺産を巡ったため、残念ながら実際に見学できたのは古代劇場のみだった。エピダヴロスは、ギリシア神話ではアポロンの息子で医療と健康を司る神・アスクレピオスの生誕地。アスクレピオス信仰の中心地となり、以来、医療の聖地とされた。エピダヴロスの遺跡は、正式名称を「アスクレピオスの聖地エピダヴロス」として世界遺産(文化遺産)に登録された当時の広大な医療施設群で、古代劇場はその一部でしかない。 患者たちが寝泊りしていたとされるカタゴゲイオン(宿泊所)跡、エジプトで信仰されたイムホテップの礼拝所と考えられるエジプトの神々の神殿 、患者が寝ているときにアスクレピオス神が夢に現れ、お告げに従って祭司が治療を施した場所だというアバトン(聖なる仮眠所)、そして発掘物を展示している考古学博物館など他にもたくさんの見どころがある。できることなら、じっくりと時間をとって見学して欲しい。


【コラム】ナフプリオン

ランチをするためにバスを降りると、気持ちよい海風を感じた。目の前の海にはお城のような島が見える。
ナフプリオンは、エーゲ海に面した美しい港町で、リゾート地と人気が高い。湾には大型の観光船がいつも浮かんでいる。ミケーネ遺跡とエピダヴロス、どちらにも1時間以内で行けるので、世界遺産観光の拠点にもなっている。


海岸沿いにはタベルナが軒を連ね、湾には豪華客船がいつも浮かんでいる

中世にはヴェネチアの支配下にあったこともあり、ギリシアの歴史的な町ながら、どこか西欧風の雰囲気が漂う。1829年から1834年の間には、トルコからの独立を実現したまさに新しいギリシアの最初の首都でもあった。
この町は、アクロナフプリアとパラミディという2つの堅固な要塞に守られていた。長い間この地はオスマン・トルコとの間で争奪戦が繰り広げられたのだ。パラミディは標高216mの丘の上にある城塞で、18世紀前半にヴェネチア人によって築かれた。
城の中は見学もできる(【入】4ユーロ【開】8:00〜19:30)。内部はかなり広く段差も多いので、散策するならたっぷり時間をとろう。頂上から一望できるナフプリオンの町とアルゴリス湾の風景はすばらしい。

町を見下ろす丘の上にそびえるパラミディの要塞

海に浮かぶブルジ島もヴェネチア人によって建造された要塞だ


旧市街は、美しい街並みが保存されている。細い路地には石造りの家々がひしめいていて、ぶらぶらと歩き回るだけでも楽しい。歩き疲れたら、気持ち良さそうなテラスがあるタベルナやおしゃれなカフェで海を眺めながら一休みしよう。


どのタベルナも趣向を凝らした看板を掲げていて、あちこち見比べて歩きたくなる





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地球の歩き方ガイドブック 編集部