ベルギー・フランダース&オランダ 建築とアートをめぐる旅

オランダ黄金時代に触れる2大美術館巡り

01)アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum Amsterdam

アムステルダム国立美術館は、17世紀の黄金時代の傑作を中心に15世紀から19世紀までの傑作約5000点を収蔵している、まさにオランダ絵画の宝庫である。黄金時代に活躍したレンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」など、数多くのマスターピースたちは、美術館を訪れる人々を常に魅了し続けている。また、作品だけでなく10年にわたって行われた大改修工事(※)の成果もぜひ確認したいところだ。

※2004年に大改修のために閉館されたが、2008年再オープンの予定が、美術館を貫く通路の設計に対して「自転車が通りにくい」という理由で市民が猛反対したため、工事は中断を繰り返し、工期は延び延びに。2013年4月に開館するまでの顛末は、ドキュメンタリー映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』『みんなのアムステルダム国立美術館へ』で描かれているので、来館前には要チェック。

Rijksmuseum Amsterdam
住所: Museumplein/Museumstraat 1, 1071 CJ Amsterdam
電話:+31-20-662-1440
HP: http://www.rijksmuseum.nl/

レンブラント Rembrandt Harmenszoon van Rijn

『夜景』(1942)
De Nachtwacht

『夜警(フランス・バニング・コック隊長の市警団)』は、誰もが認めるレンブラントの最高傑作である。1642年、彼が36歳のときに描かれたもので、諸説あるが、世界三大名画(*1)のひとつとして扱われることも多い作品だ。彼の出世作『テュルプ博士の解剖学講義』と同様に集団肖像画のカテゴリーに入るが、主役と脇役を明確に描き分け、物語性が強調されている点で、個々の人物を均等に扱うのが通例の集団肖像画の流儀から大いに外れている。スポットの当たった長官と副官以外は取り巻き程度にしか表現されていないだけでなく、市警団の構成人数を遥かに超える人が描かれている。構成員ではない女性や画家本人までもが顔を出している。従来の集団肖像画の概念にとらわれず、部隊が行進に出ようとする瞬間をスナップショット的な構図で大胆に切り取ってみせた絵画は、作品としての完成度こそ高いものの、依頼人たちを満足させるものではなかったことは容易に想像がつく。昼の行進を描いているということがはっきりした今でも、従来通りの『夜警(蘭:De Nachtwacht / 英:The Night Watch)』の通称で通っているところは、この作品のもつ普遍的な価値観を示しているようで興味深い。
*1:レンブラント・ハルメンス・ファン・レインの「夜警」、ディエーゴ・ベラスケスの「宮廷の待女たち」、 エル・グレコの「オルガス伯爵の埋葬」

『布地商組合の見本調査官たち』(1662)
De Staalmeesters

『布地商組合の見本調査官たち』は、実に威厳のある雰囲気をたたえた作品である。集団肖像画の傑作『トゥルプ博士の解剖学講義』の作成から30年を経て描かれた作品であり、タッチも変わり、レンブラント晩年の円熟味が感じられる。肖像画に描かれた紳士たちの黒い服装にシンプルな白衿に対して、机を覆ったクロスの深みのある赤が印象に残る。織物商組合のホールに飾られ、見上げられることを前提に描かれたと聞く。現在の展示では通常の目線の高さとさほど変わらない位置だが、ホールに飾られていた当時、織物業者たちの視線はさらに強い威圧感を醸していたと思われる。書物に集中していた5人の男性たちの意識が途切れ、一斉に視線が鑑賞者に向けられるその瞬間である。視る者は一気にその世界に取り込まれてしまう。

『ユダヤの花嫁(イサクとリベカ)』(1665)
Het Joodse Bruidje

かつては『ユダヤの花嫁』と呼ばれていたが、近年では旧約聖書に登場する<イサクとリベカ>を題材にしたものという認識になっている。愛と優しさに満ちたこの絵は、視ているものを幸福な気持ちにしてくれる。女をいたわるような男の抱擁に、女は左手を男の右手に重ね、右手は腹部を抑えている。それはイサクとリベカの間に生まれてくる双子を暗示しているのか。レンブラントを崇拝していたファン・ゴッホが、「この絵を1週間見続けることができるなら、10年寿命が縮んでも惜しくない」と言ったという逸話が残されている。

『カプチン派修道士に扮するティトゥス』(1660)
Titus in een habijt

最初の妻サスキアとの8年間及ぶ結婚生活の中で生まれた子供は4人いたが、最初の3人は2カ月以上生きることができなかった。最後に生まれたティトゥスだけが元気に育つことができた。『勉強するティトゥス』『読書をするティトゥス』など、レンブラントは何度も愛する息子をモデルに使っている。内縁の妻ヘンドリッキエの死後、レンブラントの面倒を見て、画家としての創作活動を支えたのはティトゥスだった。この絵の中で、なぜ、カプチン派の修道服姿なのかは不明である。ちなみに、カプチーノは、コーヒーとミルクを混ぜた色がカプチン派の僧衣の色に似ているから、という説がある。

フェルメール Johannes Vermeer

『牛乳を注ぐ女』(1958-61年頃)
Het melkmeisje

フェルメールの代表作のひとつ。体格の良い女性が牛乳を別の容器に注ぎ込んでいる。毎日行なわれる行為であり日常風景の一コマではあるが、窓から差し込む光で浮かび上がる姿は神々しくもあり、厳粛な儀式のようにも見える。テーブルに載ったパンや容器の質感、壁にかかった篭のたわんだ様子や金属器への映り込みなど巧みに表現されている。壁に刺さった釘、壁の汚れ、床に落ちた塵さえも執拗に描いたこだわりはほかの作品には見られない。

「婦人の大脳も筋肉も注ぐというただ一点に集中されている。その集中あるいは時間の凝縮のなかに生命の尊厳があらわれているばかりか、無名の婦人に、かつての聖画のなかのどの聖者もおよばない――むしろ別趣の、あるいは市民的な――威厳さえ感じさせるのである。」 (『街道を行く35・オランダ紀行』司馬遼太郎)

『手紙を読む青衣の女』(1662-65年)
Brieflezende vrouw in het blauw

窓辺で手紙を読むという構図は数年前に描かれた『窓辺で手紙を読む女』に似ている。『窓辺で手紙を読む女』が暖色系でまとめられているのに対して、『手紙を読む青衣の女』は フェルメール・ブルーが印象に残る。

「きみはヤン・フェルメールという画家を知っているかい。彼はとても美しい妊娠しているオランダ婦人を描いている。この不思議な画家のパレットはレモン黄と、真珠色した灰色と、黒と白だ。無論、数少ない彼の作品のうちには、厳密に言えば、完全な色の豊富な絵もあるが、そのレモン黄と、淡い青と真珠色した灰色は、ちょうどヴェラスケスの黒、白、灰、紅と同じように独特のものだ。」 (『ゴッホの手紙』上・ベルナール宛 硲 伊之助 岩波文庫)

『小路』(1657-61年頃)
Het straatje

フェルメールの残した2点の都市風景画のうちのひとつ。建物を真正面から捉えた構図は平面的な印象を感じさせてしまうところを、3組の人物の配置で奥行き感を出すことに成功している。長い間、デルフトの町のどこを描いたかに関してはさまざまな説があったが、近年アムステルダム大学のフライゼンハウト美術史教授が、課税のための公文書等の調査から、「小路」が描かれた場所がデルフトのフラミング通り(Vlamingstraat)40と42の間と特定した。

『恋文』(1667-1670年頃)
De liefdesbrief

シターンを弾いている女主人のもとに召使いが手紙を届けたところである。女性が手にしているのはただの「手紙」ではなく、「恋文」である。ふたりが交わす目線は意味ありげであることから、手紙の差出人はその筆跡を見るまでもなく明らかな殿方からのラブレターなのだろう。複雑な男女関係が想起される。となりの部屋から覗き見ているような画面構成が一層怪しい香りを際立たせる。シターンの余韻が響いてきそうな一枚である。

ヨハネス・コルネリス・フェルスプロンク
Johannes Cornelisz. Verspronck(1602年頃~1662年)

『 青い服の少女』(1641)
Portret van een meisje in het blauw

オランダ、北ホランド州の州都ハーレムに生まれ、父親コルネリス・エンヘルスと同様の画業に進み、肖像画家として成功を収めた。『青い服の少女』は、オランダ絵画の黄金の世紀中の1641年に描かれたもので、フェルスプロンクの代表作品である。幼い少女でありながら豪奢な衣装を身にまとい駝鳥の羽の扇を手にしている。繊細に描かれた表情や細部まで描き込まれた衣装や宝飾品が印象的な作品である。この少女は、アムステルダム国立美術館の10年にわたる大規模改修の舞台裏を描いたドキュメンタリー映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』『 みんなのアムステルダム国立美術館へ』の作品PRにも登場している。

Column :もうひとつの RIJKSはミシュラン星レストラン!

RIJKS(ライクス)は、アムステルダム国立美術館併設のレストランであり、2017年のミシュランガイドで1つ星を獲得した。エグゼクティブシェフのヨリス・バイデンダイクは、前職の「Bridges」でミシュラン星を獲得した経験をもつ才能溢れる若手シェフ。国立美術館のオランダ語名 RIJKSMUSEUM が店名の由来であり、誰でも利用しやすいように配慮された敷居の低いレストランだが、ハイクオリティのランチやディナーを提供している。

RIJKS
住所:Museumstraat 2, 1071 XX Amsterdam
月-土曜: 11:30 – 15:00 | 17 :00 – 22:00
日曜:11:30 – 15:00
予約:+31 20 6747 555
reserveren@rijksrestaurant.nl