夜警(フランス・バニング・コック隊長の市警団)

誰もが認めるレンブラントの最高傑作が『夜警(フランス・バニング・コック隊長の市警団)』である。1642年、彼が36歳のときに描かれたもので、諸説あるが、世界三大名画(*1)のひとつとして扱われることも多い作品だ。
『テュルプ博士の解剖学講義』と同様に集団肖像画のカテゴリーに入るが、主役と脇役を明確に描き分け、物語性が強調されている点で、個々の人物を均等に扱うのが通例の集団肖像画の流儀から大いに外れている。スポットの当たった長官と副官以外は取り巻き程度にしか表現されていないだけでなく、市警団の構成人数を遥かに超える人が描かれている。構成員ではない女性や画家本人までもが顔を出している。従来の集団肖像画の概念にとらわれず、部隊が行進に出ようとする瞬間をスナップショット的な構図で大胆に切り取ってみせた絵画は、作品としての完成度こそ高いものの、依頼人たちを満足させるものではなかったことは容易に想像がつく。昼の行進を描いているということがはっきりした今でも、従来通りの『夜警(The Night Watch)』の通称で通っているところは、この作品のもつ普遍的な価値観を示しているようで興味深い。

*1:レンブラント・ハルメンス・ファン・レインの「夜警」、ディエーゴ・ベラスケスの「宮廷の待女たち」、
エル・グレコの「オルガス伯爵の埋葬」

(c)Rijksmuseum Amsterdam 
『夜警』は、1715年に火縄銃手組合集会所からアムステルダム市役所に移される際、四方をカットされている。特に向かって左側と上部が切り取られている。美術館では、元の構図と比較できるように、切断前に描かれた模写も同室に展示してある。
(c)Rijksmuseum Amsterdam 
『夜警』は、1715年に火縄銃手組合集会所からアムステルダム市役所に移される際、四方をカットされている。特に向かって左側と上部が切り取られている。美術館では、元の構図と比較できるように、切断前に描かれた模写も同室に展示してある。
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