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Focus×6 Saudade 多面的な言葉、サウダーデ
塩からい海よ お前の塩のなんと多くが
ポルトガルの涙であることか
−−−−− フェルナンド・ペソア「ポルトガルの海」(池上岑夫訳)より
<サウダーデ>の語源はラテン語のsolitate(孤独)。「郷愁」「孤愁」「憂愁」「哀惜」「懐古」などといった日本語に訳されるが、ひとつの訳語ではその一面しかいい表せない多面的な意味をもったポルトガル語である。ブラジルでは<サウダージ>と呼ぶ。愛する人やものそして時間など、失われたものに対して抱く郷愁や哀しみ、そして懐かしさをもいい表す言葉が<サウダーデ>である。
そしてその<サウダーデ>が、もっともよく表現されたものが、ポルトガル版の演歌である「ファド」。下町に住む貧しい人たちが、日々の辛い生活の中で、心を癒すひとときの娯楽として、ファドを聴き、そして仲間と一緒に歌った。
ファドは“運命”や“宿命”を意味するラテン語の「fatum」が語源といわれるが、歌詞や旋律は<サウダーデ>に満ちている。

リスボンのジェロニモス修道院のマヌエル様式の装飾越しに見た空。驟雨の後、ワイナリーの並ぶヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアからドウロ川越しに見上げたポルトの町並み上に広がった空。シザがデザインした白亜の教会を包み込んでいた空。何度となく見上げたリスボンの空は、ただ単に澄んだ青ではなく、少しではあるが確かにマゼンタ(紅紫)が混ざっていた。日本の空色(水色)とは明らかに違う青に、異郷にいることを強く意識させられた。ポルトガルの海に多くの涙が溶け込んでいるとしたら、ポルトガルの空には、きっと<サウダーデ>が滲んでいる。