SDGsとは持続可能な開発目標のこと。
近年、観光分野でもSDGsを取り入れた、レスポンシブル・ツーリズム(環境への負荷を考え、責任をもって旅をする)という考え方が注目されています。
世界自然遺産に登録された島々の自然や人々の暮らし・文化などを、この先子どもや孫の世代まで残すには何をすべきなのか?そのポイントをご紹介します。
鹿児島の世界遺産である推定樹齢2000年代〜7200年といわれる巨大な縄文杉や太古の姿のまま時を止めたような苔むした森。洋上のアルプスと呼ばれる急峻な地形には、日本列島のほぼ全域をカバーする亜熱帯性から亜寒帯性の多様な気候が生まれ、そこに多様な植生が育まれています。
1993年にはその貴重な自然環境が評価され、日本初の世界自然遺産に登録されました。黒潮の海のもたらす暖かく湿潤な空気は、なんと東京の年間降水量の2 〜3倍。その豊富な水を活用し、島の電力は100%が水力発電でまかなわれています。
近年、屋久杉を活かしたプロダクツや島の食材を使った料理が味わえるカフェも登場。旅人が屋久島の自然を楽しみながら守る方法が多彩になりました。
「靴底を洗って外来種の持ち込みを防ぎ、野生動物には餌を与えないで。屋久島はテーマパークでも動物園でもありません。相手は自然。適度な距離を保って接する気持ちが大切です」
(屋久島町公認ガイド 渡邊太郎さん)
古代から南方交易の拠点として栄えた奄美大島。その地理・歴史的な経緯から、琉球や日本本土の影響を受けつつ、島唄や黒糖焼酎に代表される独特の文化を醸成してきました。
山に自生するシャリンバイと、地場の土で染めた糸を織り上げる大島紬は世界三大織物のひとつ。その紬を育んだ島の自然に目を転じれば、そこは類希なる生命の宝庫。近年は、世界自然遺産にも登録された貴重な自然を守るため、外来種の根絶や、動植物を守るための自主ルールの策定にも積極的に取り組んでいます。
島に豊かな自然が育まれた要因には、複雑な海岸線とハブが住む深い森の存在があります。これらは島を開発の手から守り、古くは集落間の行き来を妨げました。その断絶した環境が、各集落が固有の風習を育み、今も受け継がれています。集落に足を延ばして、島らしいひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
「島内ではアマミノクロウサギなどの希少種のロードキル(交通事故死)件数が増加しています。特に夜間の運転では減速する、ハイビームを活用するなどの対策をお願いします」
(当部集落公認ガイド 松村博光さん)
サトウキビやジャガイモ畑が広がる光景に、どこか懐かしさを覚える徳之島。400年もの歴史を持つ闘牛は、そもそもは農耕用の牛を闘わせて一年の労苦をねぎらう、農閑期のささやかな娯楽として誕生しました。
その「なくさみ(『慰める』の意)」精神=島をともに生きる連帯感は、闘牛文化とともに今も島に受け継がれています。旅人ならば、民泊に泊まったり、由緒ある神社を巡ることでその心に触れることができるでしょう。
また、一方でコーヒー栽培など、未来に繋がる新しい特産品づくりにも力を入れています。 自然と集落の近さもこの島の特徴。国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギがひょっこり里山に姿を現すこともこの島では珍しいことではありません。暮らしにも自然にも、いたるところにちりばめられた島の豊かさを感じに出かけてみましょう。
「多種多様な生物が棲む奄美の森。気づかないうちに傷つけてしまうこともあるので、ぜひガイドツアーを利用して。奄美の自然への理解も深まりますよ」
(奄美大島エコツーリズム推進協議会会長 喜島浩介さん)