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高級ブティックが軒を連ねるフォーブール・サントノレ通りを歩いていると、高々と翻る三色旗と、金モールに全身を包んだ護衛兵が見え、ほかとは違う雰囲気が感じられる。この重厚な建物、エリゼ宮は、1874年以来フランスの大統領官邸となっていて、一般には公開されていない。フランスが君主国家でなくなったために、正門前で行われる衛兵交代の儀式も普段は簡素なもの。大統領の在・不在は、警備の緊張感の度合いで察せられるあたり、いかにもフランス的だ。革命記念日には、シャンゼリゼ大通りでのパレードのあと、ここで祝宴が催される。めまぐるしい時代の変遷を見てきたエリゼ宮の歴史は、1718年、エブルー公爵の邸に遡る。18世紀半ばには、ルイ15世の寵愛を受けたポンパドゥール公爵夫人のものに。公爵夫人亡きあとは、何人かの貴族に次々と所有された。革命時には国立印刷所となって、多くの印刷物を世に出したかと思うと、執政官時代には舞踏学校に変じている。続いて、戦に業績をあげ、ナポレオンの妹カロリンヌと結婚したミュラー、ナポレオンの愛妻ジョセフィーヌがそれぞれ短い滞在をした。そして1815年6月22日には、ワーテルローの戦いに敗れたナポレオンが、ここで2度目の退位宣言に署名をした。第2帝政時代には建物にかなりの手が加えられ、また、邸内に現在の歩行者専用の静かな通り、パリでも珍しい英国風の柱で飾られたエリゼ通りRue de l'Elyséeが設けられた。