国立近代美術館 (フランス)

更新日
2022年8月26日
公開日
2022年8月26日
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ポンピドゥー・センターの5、6、7階を占める国立近代美術館は、パリ三大美術館のひとつ。20世紀初頭から現在までの美術の展開を追うことができる。展示作品は、フォーヴィスム(マティス)からキュビスム(ピカソ、ブラック)、抽象派(カンディンスキー)、エコール・ド・パリ(モディリアニ、シャガール、藤田嗣治)、シュルレアリスム(ダリ、マグリット)、ポップアート(ウォーホル)、ヌーヴォー・レアリスム(イヴ・クライン)と続き、現在の造形美術活動にいたる。常設展のほか、企画展にも定評があり、話題を呼んでいる。

フォーヴィスム

フォーヴィスムは、野獣(フォーヴ)のように激しい色と筆使いによる、荒々しい作品が特徴だ。主導者であるマティスは、『豪奢I Le Luxe I』(1907)で、省略された描写、平面性を見せているが、やがて『模様のある背景の装飾的人体Figure décorativesur fond ornemental』(1925〜1926)のような作品を生み出す。この絵をよく見ると、壁の模様と床とが一体化し、裸婦は床に座っているようにも、宙に浮いているようにも見える。ルネッサンス以来の絵画は、奥行きをもたない2次元の平面の上に、3次元空間を再現しようと試みてきたのだが、マティスは逆に絵画の平面性を強調しているのだ。

キュビスム

ピカソを中心とするキュビスムの画家の絵では、立体(キューブ)が画面全体を支配している。ブラックの『果物とトランプのある静物Compotier et cartes』(1913)や、グリスの『朝食のあるテーブルLe petit déjeuner』(1915)を見ると、対象物は一つひとつさまざまな視点から見られ、抽象化されている。ピカソは初め、『女の胸像Buste de femme, Etude pour les Demoiselles d'Avignon』(1907)程度に人物を幾何学的形態のうちに捉えていたが、しだいにモデルが何なのかわからなくなるまで、その抽象化を進めることになる。

抽象派

ロシア生まれのカンディンスキーの作品『白の上に II Auf Weiss II』(1923)などを見ると、幾何学的表現が明確になり、シャープな線が主になっている。スイス人のクレーは『リズミカルRhythmisches』(1930)など、情緒的な美しい作品を残している。幾何学的抽象化は、さまざまな画家によって盛んに試みられたが、オランダ人のモンドリアンは、なかでも直線と三原色による最も単純化された形を求めた画家だ。

シュルレアリスム

抽象派とは違って、具体的なイメージを使いながら、現実にはあり得ない世界を抽出したのが、シュルレアリスムの画家たちだ。マグリットの『赤いモデルLe modèle rouge』(1935)をはじめ、エルンスト、タンギー、デ・キリコは、私たちを幻想的世界へと誘ってくれる。

大戦後の美術

第2次世界大戦後のヨーロッパの美術を見ると、デュビュッフェのように、ユーモアのセンスのなかにナチスの恐怖を内包した作品が目につく。
戦後のアメリカは、現代美術の一大拠点となったが、なかでもポロックは、激しいアクションで絵の具を垂らして描くという独自の技法(アクションペインティング)を生み出した。『ナンバー26A 黒と白Number 26 A, Black and White』(1948)など、混沌としたイメージが創造されている。
1960年代に入ると、大衆文化の普及にともない、日常社会を取り込んだいわゆるポップアートが出現。ウォーホルやリキテンシュタイン、オルデンバーグの作品には、消費文化の匂いと、ポップな軽快感が漂う。
1960年代のフランスで起こった、ポップアートに相当する芸術運動がヌーヴォー・レアリスム(新現実主義)。アルマンやティンゲリーは、日常の廃棄物を寄せ集めたオブジェ(アッサンブラージュ)に芸術的な意味を吹き込んだ。また、イヴ・クラインが自ら「インターナショナル・クライン・ブルー」と名づけた深い青は、地中海の空と海を思わせる。

展示スペース

5階(Niveau4)1960年以降現在までの作品
6階(Niveau5)20世紀初頭〜1960年の作品
7階(Niveau6)企画展示室

所蔵作品数は10万点以上。当然すべてを一度に展示することはできないため、年に数回作品の展示替えが行われる。目当ての作品があるなら、入館前に確認しておくといいだろう。

写真

  • 国立近代美術館への入口は「MUSEE」の文字が目印
  • 開放的な空間のなかで、現代美術に触れることができる
  • デュビュッフェの三次元絵画『冬の庭』
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