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「サレ館(塩の館)」という17世紀の館を改造して1985年に開館。2014年には約5年に及んだ改装工事が終了し、ピカソの誕生日である10月25日にリニューアルオープンした。約5000点(絵画約300点、彫刻約250点、3900点を超えるデッサンと版画など)の所蔵作品は、1973年にピカソが亡くなった後、相続税と引き替えに、遺族からフランス国家に寄贈されたもの。開館時の膨大な準備費用は、国とパリ市によって賄われ、貴重な作品の数々が世界中に散らばることなく、画家が長年暮らしたパリの地にとどまった。
2009年に開始された改修工事は、建築家のジャン・フランソワ・ボダンが担当。サレ館の歴史ある造りを生かしつつ、展示スペースを地下まで拡大。ピカソ自身が所蔵していたマティスやモディリアニの作品も、展示に加わった。コレクションの規模はもちろん、初期から晩年にいたるまで、ピカソの作品を一度に観ることができる場所として、美術ファンをひきつけている。
ピカソは、幾度も制作スタイルを変えたことで知られる。美術館には、1895年から1972年までの作品が、時代とテーマに沿って展示され、その変遷をたどるのもおもしろい。
代表的な作品を紹介しよう。まず「モノクロームの時代」、なかでも「青の時代」の代表作『自画像Autoportrait』(0.2室)。ナイーブな描写は、別の時代の自画像と比べると、劇的なスタイルの変化に驚くはず。アフリカ美術の影響を受けた時代を経て、続く「キュビスム」では、『ギターを弾く男Homme à la guitare』(0.6室)などが並び、ピカソワールドが全開だ。
数々の女性遍歴を重ねたピカソが描く女性像も魅力的だ。1.7室に展示された、ドラ・マールDora Maarやマリー・テレーズMarie Thèreseの肖像画は、鮮やかな色彩に釘づけになるはず。ほかに、マネの作品をもとにした『草上の昼食Le déjeuner surl'herbe』(2.7室)や、彫刻作品の『ヤギLa Chèvre』(2.6室)、茶目っ気たっぷりの陶器なども。作品の数がとにかく多いので、見学に2時間はみておきたい。