クリュニー美術館

更新日
2022年9月15日
公開日
2022年9月15日
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カルチェ・ラタンのにぎやかなサン・ミッシェル広場から、セーヌ川を背に、サン・ミッシェル大通りを歩いていくと、朽ち果てたローマ建築の遺跡が現れる。これは3世紀頃、セーヌの船主たちの同業組合によって建てられた公共浴場Les Thermesの跡。パリがはるか昔、ローマの要塞都市だったことを示す貴重な名残だ。かつては壮大だったローマ建築も、ローマ帝国の滅亡とともに破壊された。その後14世紀に、ブルゴーニュで勢力を誇っていたクリュニー大修道院長に買い取られ、近くの学校に通う修道僧のための館が建てられた。フランス革命後は、美術収集家の手に渡り、彼の死後、膨大な中世美術のコレクションとともに、国家が所有することとなった。これが、廃墟の奥にあるクリュニー美術館だ。
展示室には、彫刻、レリーフ、調度品など、中世の美術品がぎっしり。別室には、ノートルダム大聖堂や、サン・ジェルマン・デ・プレ教会から移された彫刻なども展示されている。しばし、中世へとタイムスリップさせてくれる場所だ。

不思議な魅力漂う『貴婦人と一角獣』

クリュニー美術館に展示されているタピストリー『貴婦人と一角獣La Dame à la Licorne』。中部フランスの城館内で発見され、ジョルジュ・サンドの著作で取り上げられたことで広く知られるようになった。半円形の部屋には、同じテーマで6つのバリエーションをもつタピストリーが掲げられている。深紅の地色の上に織り込まれた優雅な貴婦人、そして彼女の両側にはライオンと一角獣。背景には、草花や動物がちりばめられ、まさに楽園の雰囲気。6帳のうち5帳は、人間の5つの感覚、「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」を寓話的に表現したものだといわれている。残る1帳は、女性が首飾りを宝石箱にしまう、あるいは取り出そうとしている様子が描かれている。『私の唯一の望みにA mon seul désir』という題名がつけられ、その意味は謎に包まれたままだ。

『貴婦人と一角獣LaDameàlaLicorne』
ⓒphotoRMN/R.G.Ojeda/distributedbySekaiBunkaPhoto『私の唯一の望みに』

写真

  • ローマ時代の浴場跡にあるクリュニー美術館
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