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バンコクの国立博物館はラーマ5世時代の1874年に王宮内に設置され、1887年に現在の場所に移転した。この建物自体は副王のための宮殿だったもので、ラーマ5世の時代に副王制度が廃止され、博物館として利用されることになった。タイ国内にある博物館のなかでも最大級で、先史時代から近代にいたるまでの美術品や出土品が、年代を追って整然と陳列されている。広い敷地の中に展示館が並んでおり、ざっと見ても1時間はかかってしまう。古いものでは、タイ東北部の世界遺産バーン・チアンから発掘された出土品が必見。それ以降の展示品についてはコラム「タイの美術史概観」を参照。
特に目立った展示品を挙げると、ドヴァーラヴァティのものでは、如来立像などに当時の様式の特徴が表れている。また、石の法輪は仏陀が初めて行った説法を象徴するものと捉えられている。シュリーヴィジャヤのものではチャイヤーの遺跡から発掘された観音菩薩像が知られている。ロッブリーのものでは青銅像やガルーダ像などが有名だ。スコータイのものでは、タイの独創的仏像である遊行仏が目を引く。こうして館内の展示品を見終わってみると、タイの美術が仏教とのかかわりのなかで育まれ、この国にとって宗教がどれほど重要な位置を占めているのかが実感できる。