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花蓮中心部から約20km、太魯閣渓谷の立霧溪が海に注ぐ新城の町に、日本の神社がカトリック教会として生まれ変わったという、一風変わった場所がある。 着いてまず驚くことは、敷地の入口に立つコンクリートの鳥居。両脇に新たな柱が付けられているが、神社の鳥居の原型は残っている。上部の笠木と貫の間が埋められて、「天主教會」(カトリック教会)と大きな筆文字で書かれていて、何だかシュール。 ここは、日本統治時代の1914年に建てられた新城神社があった場所だ。参道に当たる道の両脇に8基の石灯篭が残り、ありし日の面影を残している。 参道の突き当たりにあるはずの本堂は取り壊されているが、一部だけ残ったコンクリート製の基台に安置されているのは、なんとマリア像。くぼみが像を守る屋根のような形になっているので、確かに像を置くのにぴったりだ。異教の神殿で優しくほほ笑むその姿に心なしか神秘さが増して見える。 新城天主堂はノアの箱舟をイメージさせる斬新な設計で、壁面には無数のツタが生えどこか退廃的な美しさも感じさせる。近年は写真撮影スポットとしても人気を集めているようだ。 もともとこの新城神社は、1896年に日本人が太魯閣族の少女を強姦したことがきっかけで起こった太魯閣族の抗日事件で殺害された13人の日本人を祀るために1914年に建てられたもので、現在も敷地内に慰霊碑が残っている。このようなゆかりのある神社の遺構が残されているところに、台湾の懐の深さを感じずにはいられない。