パノム・ルン遺跡公園

更新日
2022年12月1日
公開日
2022年12月1日
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標高383mの小高い死火山の上にそびえるクメール王国の神殿跡。1988年5月に17年がかりの修復工事が終了し、往時をしのばせる荘厳さを見せている。遺跡の建立はアンコール・ワットと同時期の12世紀頃と推定され、クメール王国の絶頂期らしい重厚な造りと規模を誇っている。パノム・ルンのパノムとはカンボジアの首都プノン・ペンのプノンと同様、クメール語で「丘」を表す言葉。神殿の境内から南を眺めると、そこに広がっているのはタイの農村。その先におぼろげに見える山々はカンボジアとの国境でもあるドンラック山脈。カンボジアはすぐそこなのだ。入口のゲートから中に入るとまず長さ約160m、幅7mの石畳の参道に出る。この参道は両側にハスの花のつぼみをかたどった石灯籠が70基、神殿正面の階段まで並んでいる。参道を進んでいくと、3頭のナーク(ナーガ=蛇神)に守られたテラス状の橋に出る。ここから急な石段を上っていくと、神殿は目の前だ。縦66m、横88mの回廊に取り囲まれた神殿はピンクと白色の砂岩で築かれており、内部にはヒンドゥー教の神シヴァの乗り物である牛像が祀られている。外壁は多数の緻密なクメール様式の宗教装飾が施されているが、特に有名なのは神殿の正面入口上部に飾られている「水上で眠るナーラーイ神」のレリーフ。これは復元修理に取りかかる前に盗まれ、アメリカのシカゴ博物館で発見されたのを返還させたもの。当初アメリカ側は返還に難色を示したものの、カラバオ(タイの人気バンド)が返還要求の歌をヒットさせたこともあって元の場所に戻ってきた。保存状態のいいものとは決していえないが、そこにはタイ国民の執念が宿っているようにも思える。ちなみに3〜4月にかけての満月の日には、神殿を真っすぐに貫く中央通路の両側に、昇る太陽と満月が正対するように設計されている。日の出は神殿正面の参道側から。

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