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ロンセストンから北西へ車で約2時間、デボンポートから南西へ約1時間30 分の場所に、数あるタスマニアの国立公園のなかでも随一の景勝を誇るクレイドル山/セントクレア湖国立公園がある。世界自然遺産のタスマニア原生林の中核を占める国立公園で、クレイドル山(標高1545m)をはじめ、タスマニア最高峰オサ山Mt. Ossa(1617m)を中心に1500m以上の山が並ぶ。深い樹林に覆われて、無数の湖が点在する神秘的な自然美にあふれる所だ。特に北部クレイドル山セクションは、宿泊施設、ブッシュウオーキングルートがよく整備されており、タスマニア随一の自然を楽しむ観光地となっている。数多くある湖はマス釣りの聖地でもあり、夏には山々に数十種類ものワイルドフラワーが咲き乱れて、目の覚めるほどの美しさ。タスマニアの大自然を満喫するなら、絶対に外したくない場所だ。
観光のメインは北部クレイドル山セクションだ。この地域の観光ベースとなるのが、ロンセストンからのバスも発着するクレイドル・ビジターセンターCradle Visitor Centre。国立公園の手前約2.5kmの場所にあり、インフォメーションセンター以外にもカフェ、テイクアウエイショップ、ガソリンスタンド、遊覧飛行用ヘリパッドがある。簡単なウオーキングマップがもらえるほか、タスマニア国立公園入園パスもここで購入できる。また国立公園へ入ってすぐの場所には、資料館を兼ねたクレイドル山レインジャーステーション&インタープリテーションセンターCradle Mountain Ranger Station & Interpretation Centreもある。
国立公園散策は、車をもっている場合は主要なウオーキングトラックのベースとなる駐車場まで行けるが、それ以外の場合、早朝から夕方までクレイドル・ビジターセンター〜クレイドル山レンジャーステーション&インタープリテーションセンター〜スネークヒルSnake Hill〜ロニークリーク駐車場Ronny Creek CP〜ダブ湖駐車場Dove Lake CP のルートを15分ごとに運行するシャトルバスを利用することになる(入園パス提示で無料)。車利用の場合も、各駐車場間にこのバスを利用すれば、いろいろなウオーキングトラックを歩くことが可能となる。
なお車を運転する場合は、ウォンバット、ワラビーなどの野生動物の道路横断に十分注意しよう。ウオーキングトラック上ではもちろん、車道でさえ、夜間、そして気温の低い日中に頻繁に出てくるからだ。
ロンセストンから、マクダーモッツコーチが月・水・金・日曜にバスを運行している。レンタカーやツアー利用もおすすめだ。ロンセストンから日帰り、ホバートから数泊のツアーが催行されている。
クレイドル山/セントクレア湖国立公園南部に位置するのがセントクレア湖セクション。セントクレア湖は、氷河によって削り出された氷河湖で、最大水深167mというオーストラリアで最も深い湖だ。湖面は穏やかで周囲の森の景色を映しており、その様子を見た先住民アボリジニは、この湖を「リーアウリーナ(静かに眠る水)」と呼んでいた。
ダーウェントブリッジDerwent Bridgeが国立公園入口で、カフェやミニ博物館を兼ねたセントクレア湖パークセンターLake St Clair Park Centreがある。ここで周辺のウオーキングトラックの情報を仕入れておこう。
セントクレア湖周辺にはいくつものウオーキングトラックがあるが、人気なのがウオーターズミート・ネイチャートレイルWatersmeet Nature Trail(往復約45分)。ユーカリ林、ボタングラスが茂る森を歩き、セントクレア湖に注ぐキューヴェイ川Cuvier Riverとヒューゲル川Hugel Riverの合流地点に架かる橋までを往復する。同じ道を戻りたくない場合は、帰路にプラティパスベイ・トラックPlatypus Bay Track、ラーマイアーネメー・タベルティ・アボリジナル・カルチュラルウオークLarmairrenemer Tabelti Aboriginal Cultural Walkと歩くルートを取ろう。
時間があったらパークセンター前のシンシア湾Cynthia Bayにある桟橋からフェリーに乗ってみたい。湖の周囲にそびえるオリンポス山やアイダ山などを見ながらのクルーズ。体力に自信があったらナルシサス湾Narcissus Bayで降りて、クレイドル山セクション~セントクレア湖セクションを結ぶオーバーランドトラックOverland Trackの一部を歩きながらビジターセンターまで戻るのもいい(約13km、5~6時間)。
ホバート~クイーンズタウンを結ぶエリアコネクトのミニバスが利用可能。ただし週2便(火金)と本数が少ないので、レンタカー利用が一般的。なおオーバーランドトラック(全65km)を歩く場合はバス利用が便利。
数多くのウオーキングトレイルがあり、それぞれ魅力的だ。ここでは代表的なルートをいくつか紹介しよう。
●ダブ湖周遊ルート Dove Lake Circuit
ゆりかごの形をしたクレイドル山の麓に広がるダブ湖を一周する最も人気のあるウオーキングコース(所要約2時間30分)。出発地点のダブ湖駐車場からは、絵はがきやパンフレットに出てくる「これぞクレイドル山」という景色が望める。ルート自体にそれほど大きな起伏はなく、誰でも気軽に楽しめる。途中のグレーシャーロックGlacierRock からの眺めが特にすばらしい。
●クレーター湖とウォンバットプール Crater Lake & Wombat Pool
登りがあって少々きついが、すばらしい景色が楽しめると人気のコース(所要約3 時間)。ロニークリーク駐車場からウォンバットの巣のある草原を抜け、冷温帯雨林の森の中を200mほど登ってクレーター滝Crater Fallsへ。その後比較的平坦なルートをたどってひっそりと静まりかえるクレーター湖へ。ここからは10分ほどのウオーキングで標高約1100mの尾根にある展望台に出る。クレイドル山とダブ湖、さらにマリオン展望台などの壮大な景観が楽しめる。帰路は小さな湖のウォンバットプール、リラ湖Lake Lillaを抜け、再びロニークリーク駐車場へと戻る。体力に自信があったら、リラ湖から10〜15分でダブ湖駐車場へ出られるので、ダブ湖周遊ルートを組み合わせてみるのもいいだろう。
●マリオン展望台Marions Lookout
天気のいい日に健脚派におすすめのルート。前述のクレーター湖とウォンバットプールと途中までは同じで、標高1100mの尾根からさらに標高1223mの展望地(ピーク)まで急なルートを一気に登りきる。すばらしい眺望が楽しめる。