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サン・マルコは14世紀に創建され、15世紀の初めにはドメニコ派のフィレンツェにおける拠点となった。同世紀半ばにはコジモ・デ・メディチの依頼でミケロッツォが聖堂と付属修道院の工事に着手している。左側にある教会本堂は16~17世紀にさらに改修されて、バロック的な色彩の濃い建物となった。内部は単廊式で、入口扉の上には14世紀のジョット派の『十字架像』が飾られている。主祭壇の左側奥の「聖アントニーノの礼拝堂」(16世紀後半)はジャンボローニャの建築における代表作といわれ、主祭壇の右脇奥にはミケロッツォの設計した聖具室(15世紀前半)がある。
教会の右隣には修道院があって、フラ(ベアート)・アンジェリコのすばらしい美術館となっている。ミケロッツォのプランをよくとどめるこの修道院は、ふたりの修道士によって名を知られている。ひとりはあつい信仰を絵筆に託した天使のような画僧フラ・アンジェリコ(ベアート・アンジェリコとも呼ぶ)、もうひとりは修道院がメディチ家の大きな援助を受けていたにもかかわらず、同家の政治的独裁や当時のフィレンツェの異教的、享楽的な文化を舌鋒鋭く批判したサヴォナローラ。見学するだけでなく、日当たりのよい「聖アントニーノの回廊」Chiostro di S. Antoninoに腰をかけて、この町の通ってきた歴史についても思いをはせたい場所である。
回廊入口に対面する壁に描かれたフレスコ画で、この修道院の磔たっ刑けい図信仰のシンボル。悲しみをたたえたキリストと聖ドメニコの姿は現実性に満ち、見る者の心に迫る。
アンジェリコの板絵の最高傑作と賞され、写実的な自然風景や人物の感情表現に富み、まさにルネッサンス絵画の典型と呼ばれる。尖塔部と裾絵は、最初に着手したロレンツォ・モナコによる。
透視画法によって描かれたテーブルや回廊が深い奥行きを感じさせ、クジャクやキジ、オレンジなどの南国的風景が明るい色調で描かれている。オーニッサンティ教会の同名作品と比べて見るのも面白い。
「これは我が息子なり」という天からの声のもと、光輝く絶対的な神としての存在感を示すキリスト。厳粛な場面に遭遇した聖母、聖ペテロ、聖ヤコブ、聖ヨハネ、聖ドメニコが感情豊かに描かれている。
復活したキリストは彼の墓前で悲しむマグダラのマリアに、「私はまだ天なる父の許しを得てまだ天上に行っていない、私に触れるな」と諭し、復活を弟子に告げることを求めた場面。抑えた色調と空間構成が当時としては斬新。
「受胎告知」とは、処女マリアに大天使ガブリエルが舞い降り、マリアが聖霊によりイエスを身ごもることを告げ、マリアがそれを受け入れること。背景のアーチが厳かな会話の雰囲気を倍加させている。
この美術館を代表する最高傑作。独特の光の表現、明快な建築様式の導入、厳格な空間配置と透視図画法など新しい時代を告げる表現様式が現れている。何よりも、厳かな場面が見る者の心を捉える。
リナイオーリ=リネン商の組合が注文した作品で組合本部に置かれていた物。ゴシック様式の優美さに加え、当時の潮流を意識した生気ある聖母子像や生きいきと描かれた裾絵、遠近法による奥行きなどに注目。
修道院の大パトロンであったコジモ・ディ・メディチ専用の僧坊。色使いや空間構成などにアンジェリコの特徴がよく表れた傑作。登場人物の服装は1439年の宗教公会議の際に目にした物という。