ペトライアの別荘

更新日
2023年6月6日
公開日
2023年6月6日
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フィレンツェから北西に6㎞、急な坂道を上がった高台に建つペトライアの別荘。トリボロによる段丘状の庭園が広がり、庭園テラスや別荘の窓からはフィレンツェのドゥオーモと町並みを遠くに望む、すばらしいパノラマが広がる。
邸宅脇には、季節の花々が咲き乱れ、その中心にはジャンボローニャの『ヴィーナス像=花の女神フィオレンツァの噴水』Fiorenza uscente dale acqueが立つ。かつては髪の先から水が流れ落ち、それはメディチ家がもたらす富と支配を表したという。
別荘は中世に城塞として建てられ、その後ブルネッレスキ家、ストロッツィ家などと持ち主を代え、1544年にコジモ1世が購入。その後息子のフェルディナンド枢機卿に贈られた。枢機卿がトスカーナ大公となった16世紀後半に大改築が施され、美しい中庭や塔が生まれた。常に住居として利用されていたこの館はコジモ1世の妻のロレーヌ夫人、その息子のドン・ロレンツォ、コジモ3世ら住人の好みによって装飾された。イタリアの首都がフィレンツェにおかれた1865~1870年には初代イタリア王ヴィットリオ・エマヌエーレ2世が住居とし、中庭にガラス天井が設けられ、舞踏室として改装された。
美しく装飾された邸内でとりわけ目を引くのが、中庭(舞踏室)。ガラスの天井からシャンデリアが下がり、周囲の壁にはヴォルテッラーノによる『メディチ一族の栄華』Fasti mediceiが描かれている。メディチ家出身の法王たち、戦勝風景、カテリーナ・ディ・メディチとその息子らが並び、きらびやかなメディチ家の歴史が眼前に広がる。
公開されているのは、広い邸内の一部で、1階には17世紀のフランドルの赤いタペストリーで飾られた客人用ダイニングのSala degli arazzi(赤の部屋Sala rossa)、1868年にナポリで作られたピアノが置かれた音楽室Sala da Musica、王の書斎Studio del Re、コジモ3世の寝室を改装し、フレスコ画で飾られサルトの『聖家族』(コピー)が置かれた新礼拝堂Cappella nuovaが続く。2階通路には中国からの絵や陶器などが飾られ、書斎や謁見の間、遊戯の間などが続き、ロッジアからの中庭の眺めも印象的だ。庭園の「花の女神」のオリジナルがStudio di Fiorenzaに、カステッロの別荘の噴水を飾る彫像はSala di Ercole e Anteoに置かれている。各部屋に置かれた時計は国王のコレクションだ。

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