エラン谷(ヴァル・デラン)

更新日
2023年6月30日
公開日
2023年6月30日
AD

シオンから南へアルプスに向かって延びるエラン谷には、古い家並みが残る集落が点在している。木曽路を思わせる山村の風景と、素朴な人々の暮らしは旅情たっぷり。半日かけてポストバスに揺られてみれば、アルプスの村の素顔に出合えるだろう。
シオン駅からレ・オーデールLes Haudères行きのバスに乗る。車内に観光客の姿は少なく、地元の農民の日に焼けた顔が並ぶ。15分ほど走った頃、左側に地面からツララが生えたようなウーセーニュのピラミッドPyramides d'Euseigneが見えてくる。岩は道路をまたいで尾根状に連なり、頭上に丸い岩を載せているものも。なぜ、ここだけ唐突に浸食されたのか不思議だ。穴をあけて道路を通すのはどうかと思うが、地元ではたいした名所でもないようで、バスはあっという間に走り抜けてしまう。
シオンから約40分でエヴォレーヌEvolèneに到着。伝統的な木造家屋で知られる村で、小さな宿場町といった風情。30分もあれば1周できる。家々の黒ずんだ壁がいかにも古めかしく、4階建ての民家も多い。たいていの家は屋根をスレート(石板)で葺き、基礎部分も石材などで補強してあって、自然の厳しさを想像させる。谷の奥から守り神のように見つめているのはダン・ブランシュDent Blanche(標高4357m)。ツェルマットではマッターホルンの脇役だったが、エラン谷では堂々の主役だ。
時間があれば、バスの終点レ・オーデールからさらにバスを乗り継ぎ、ラ・セージュLa Sageまで行ってみるといい。多くの芸術家が滞在したという小さな小さな集落で、隠れ里らしい雰囲気がある。エヴォレーヌを見下ろす高台にあり、振り向けばダン・ブランシュが手の届きそうな近さだ。

写真

トップへ戻る

TOP