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マッターホルンに最も近づける場所なので、アルピニストやクライマーの拠点になっている。マッターホルン・グレッシャー・パラダイスの帰りに寄るといい。
マッターホルン・グレッシャー・パラダイスからトロッケナー・シュテークまで下りたら、フルック経由のゴンドラでシュヴァルツゼーへ。このルートが運休中の場合はフーリFuri経由で。シュヴァルツゼー駅に着いたら、まずは名峰をじっくり観察しよう。これまでに500を超える命を奪ってきたにもかかわらず、山を愛する誰もが憧れる巨人だ。ヘルンリ稜を目で追うと、米粒のようなヘルンリ小屋が見えるはず。右側の昼なお暗い岩壁が、かの有名な北壁だ。
目を下に転じると、シュヴァルツゼー(黒い湖)の名のとおり黒っぽい湖がある。ほとりには礼拝堂があり、夏の間だけあたりは高山植物でいっぱいになる。惜しいことに、湖畔からは目の前にあるマッターホルンは見えない。ヘルンリ稜の陰に入ってしまうのだ。その代わりブライトホルンの真っ白い帽子が湖面に姿を落としている。
クライン・マッターホルンから流れ落ちる氷河の上では、真夏でもスキーが楽しめる。マッターホルンを正面に見ながら3883mから滑り出し、高低差1000mを一気に下る。ボード用のハーフパイプも用意されている。ロープウエイのほかにリフト8本、全長21kmもある広大なゲレンデだが、夏も終わりになると2本程度しか運行されないこともある。
500人以上のクライマーの命をのみ込んできたマッターホルンも、今やルートが整備され、ガイドさえつければ一般登山者でも登れる山になっている。もちろんアイゼンを使ったこともないのでは話にならないが、過酷なトレーニングを重ねた特別な人々だけのものではないのも事実だ。必要なのは、ある程度の登攀経験(ロッククライミング経験など基準あり)と、体力と、万全の体調と、そしてガイドには絶対に従うという謙虚さだ。
もうひとつ、運を呼び込む力も重要。登頂の可否は気象条件に左右されることが大きい。経験の浅い素人を無事に登頂させ下山させなければならないのだから、ガイドたちは慎重になる。ルートの状態と気象条件が揃わなければ、盛夏でも何日間も登攀させてくれないこともある。日程に余裕をもち、日本から到着して1週間〜10日は高所を歩き回って体を高度に慣らしておこう。
ヘルンリ稜の登攀は7月上旬〜9月中旬(積雪による)に行われており、もちろんマンツーマンのガイドが必要。ヘルンリ小屋からの登攀時間は平均で往復8〜9時間。ヘルメットやアイゼンなどは村のスポーツ店で借りておくこと。
ガイド付き登山はリッフェルホルン(所要4時間)やブライトホルン(所要5~6時間)への事前登山を含む料金設定になっている。近年、気候変動による温度上昇で落石事故が増えており、登山できないと判断される時期も生じている。登山をするなら余裕のある日程で、現地の状況を確かめながら予定を立てよう。
ただし、これらはすべて夏の話。ほかの季節のマッターホルンは中途半端な体力や技術で挑戦できるものではない。
バーンホフ通りの中ほど、Hotel Mont Cervin Palaceの正面にある。予約は2週間前までだが、できるだけ早めが望ましい。冬はスキースクールもある。
シュヴァルツゼーから約2時間にあるヘルンリ小屋は、登山者なら知らない人はいないほど有名なヒュッテだ。ここからマッターホルン登頂に挑む登山者たちや、憧れのマッターホルンに一番近づける小屋としてここを目的地にトレッキングをするトレッカーも多い。
7〜8月の好天時なら、山歩きの経験があれば登ることができるが、途中、鎖場もあるので、しっかりとした登山靴は必要。ヒュッテでは宿泊客でなくても昼食を取ることができるが、天候の急変には気をつけて、最終ロープウエイの時刻も考えて出発すること。宿泊の場合はインナーシュラフ(寝袋型のシーツ)持参のこと。
なおHörnliはホとフの間くらいの発音で「ホーンリ」だ。営業期間は7月〜9月下旬('23年は7/1〜9/19)食事付きでひとりCHF150。
電話|(027)9672264(Matterhorn Group)
URL|https://hoernlihuette.ch/
夏期に行われているハイキングツアー。フィンデル氷河の下に点在する湖を巡るコース(所要5〜6時間、定員5〜10名)、テオドール氷河を横断するコース(所要30分〜1時間30分、定員2〜8名)などがある。
現在、ローテンボーデン〜モンテ・ローザの氷河は、地球温暖化の影響のためクレバスが大きくなっているのでたいへん危険。氷河トレッキングは必ずアルパインガイドをともなって行くこと。軽アイゼンなどの装備も必要。