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ツェルマットで、いやスイスでおすすめナンバーワンの展望台。
長大な氷河ならほかでも見られるが、氷河と氷河のせめぎ合いや、ダンスを踊っているような優雅な曲線など、こんなにも表情豊かな造形美に酔える場所はめったにない。そのうえモンテ・ローザやドームなど、ほれぼれするような美人と真正面から対峙できる。たとえ気難しいマッターホルンが雲に隠れていても、周囲の視界が利くなら上る価値のある展望台だ。
さっそく、MGB駅の斜め前にあるGGB駅から登山電車に乗り込もう。ゴルナーグラート鉄道Gornergratbahn(GGB)は、アルプス登山ブーム全盛期の1898年(明治31年)に開通したアプト式登山鉄道。もしも「眺めのよい電車世界トップ10」を選ぶとしたら、きっとランクインするだろう。
座席は、マッターホルンが見えれば進行方向右側、見えなければ左側がおすすめだ。出発するとすぐマッターホルンがぐんぐん迫ってきて、同時にツェルマットの村が足元に吸い込まれていく。最初の停車駅はフィンデルバッハFindelbach。車窓の左側にフィンデルの滝が迫る。次のリッフェルアルプRiffelalpを過ぎるとカラマツの林も終わり、花の咲き乱れるアルプの中に飛び出す。谷の向こうに見えてきたのはミシャベル連峰の氷河だ。雪崩よけの長いトンネルを過ぎると、マッターホルンがハンサムに見える場所として知られるリッフェルベルクRiffelbergに到着。次のローテンボーデンRotenbodenは氷河を越えてモンテ・ローザへ行く登山道の出発点。このあたりからガレ場が多くなり、夏でも残雪が見えるようになると終点はもうすぐ。あっという間の33分間だ。
駅に着いたらまずは山頂の展望台を目指そう。クルムホテルに向かって坂道を歩くか、エレベーターでホテルの横まで上り、ホテルに向かって右の道を進む。ここは標高3000m以上。ゆっくりと坂を上っていこう。その先には360度の絶景が楽しめる展望台が待っている。
ゴルナーの谷を挟んで向こう側に見えるのは、アルプス山脈第2の高峰モンテ・ローザMonte Rosa。双耳峰になっていて、右側のピークが4634mの山頂だ。隣がリスカムLiskamm(4532m)、その右にちょこんと座ったかわいい双子はカストールCastor(左4223m)とポリュックスPollux(右4089m)。ふたご座の星と同じ名だ。その右側、今にもドサッと落ちそうな雪の帽子をかぶっているのがブライトホルンBreithorn(4164m)で、その先にはマッターホルン・グレッシャー・パラダイスのスキー場が広がっている。マッターホルンは北壁がほとんど隠れ、東壁を正面にしてのけぞった格好。
氷河はそれぞれの峰から押し出されているが、モンテ・ローザを源とするのがゴルナー氷河Gornergletscher。足元には、氷河を横断してモンテ・ローザ小屋へ行く登山道が見える。
スイストラベルパスを持っていなくてゴルナーグラートを訪れる場合、ピークパスの利用を考えよう。
ピークパスはゴルナーグラート、マッターホルン・グレッシャー・パラダイス、シュヴァルツゼー、ロートホルンの交通機関に乗り放題のパス。ツェルマット〜テーシュまたはランダRandaへのMGB鉄道にも使える。
パスには1日〜1ヵ月券があり、料金は時期や期間により異なる。'23年は6~8月が最も高く、1日券CHF216、2日券CHF241、3日券CHF272。5日間のうち利用日の3日を選べるものはCHF284。
https://www.matterhornparadise.ch/en
ツェルマットからゴルナーグラート展望台まで、約1500mの標高差を38 分で上る。オープンエアの鉄道路線としてヨーロッパで最も高い場所を走るゴルナーグラート鉄道。
マッターホルンと氷河を見ながら乗車できる体験は格別で、途中下車してハイキングを楽しむにもいい登山鉄道だ。2022 年12 月から新型車両「ポラリスPolaris」が導入された。モダンな内装が取り入れられ、窓が一段と大型になった。低床式車両となったので乗降も楽。運転台部分が丸い、登山列車としては珍しいデザインの車両だ。
ゴルナーグラート展望台のホテルに併設する建物に、バーチャルビューを楽しむことができる展示施設ズーム・ザ・マッターホルンZooom The Matterhorn が誕生した。
悪天候の日でも天気のいい日に収録されたマッターホルンの映像を見ることができ、3 方向を囲むスクリーンに投影されるので、臨場感いっぱいの映像を楽しめる。パラグライダーの360 度実写映像をヘッドマウントディスプレイで視聴できるアトラクションもあり、リアルな空中散歩を体験することができる。