ゴッタルド峠

更新日
2023年6月30日
公開日
2023年6月30日
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アルプスを南北に縦断する峠の多くはローマ時代から開削されたが、スイス南東部のサンベルナルディーノ峠Passo del S. Bernardioや西部のシンプロン峠Simplonpassでは石器時代の住居遺跡が発見されており、ローマ時代よりもかなり前からアルプスを越える南北の街道が存在していたと考えられている。そのなかでゴッタルド峠は比較的新しく、本格的なルートとして開削されたのは西暦1200年前後。イタリアのミラノから、ルツェルン、チューリヒを経由しドイツを結ぶ最短のルートとして歴史の舞台に登場した。
当時アルプス越えの街道では各地に関所が設けられていた。通行する人は領地が代わるたびに関税を払わなければならず、また街道もわざと通過に時間がかかるように荒れ放題の状況が続いていた。遠回りすることなく、また峠を1回越えればアルプスを縦断できるゴッタルド峠ルートの登場は、当時の流通に革命的な影響を及ぼし、物資の輸送がこのルートに集中した。
このようにゴッタルド峠街道そのものは、バスの出発地点であるアンデルマットよりもっと北側の標高の低い所から始まっており、この街道一番の難所であった「悪魔の橋」も峠よりはかなり低い所に位置している。アンデルマット駅からこの「悪魔の橋」までは徒歩約30分。ハイキング気分でぜひ歩いてみよう。散歩道はそのままロイス川の急流に沿って、下流の町ゲッシネンまで通じている。「悪魔の橋」からゲッシネンまででも約30分の距離なので、時間のある人にはおすすめ。当時の峠越えの苦労が少し味わえる。
さてアンデルマットからの峠越えバスはホスペンタールHospentalから左側の山を上り始める。荒涼としたガムスの谷Gamsの途中にはコンクリート造りの殺風景な建物がときおり現れる。峠の直下を通過しているゴッタルド自動車トンネルの換気口だ。ほどなく小さな湖のほとりの峠に到着。ここでは博物館が見逃せない。峠の開削当時の絵や街道の発展の様子、郵便馬車が通うようになった時代の貴重な写真や資料が展示されており、スライドでも紹介されている。現在では車で楽々と越えてしまうこの峠も、つい50年くらい前までは大変な苦労があったことがしのばれる。現在でもこのルートは、ゴッタルド自動車トンネルが事故や工事などで閉鎖されると迂回ルートとして利用される。
峠を過ぎて終点のイタリア風の町アイロロAiroloが近くなると、空中に飛び出したような橋でヘアピンカーブが設けられているのが後半の見どころだ。

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