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インタラーケンとユングフラウの間にはメンリッヒェンの山がある。この山を西に迂回した谷にあるのがラウターブルンネン、東に迂回すればグリンデルワルト。この2本の鉄道がさらに斜面を上り、峠の頂上で出合うのがクライネ・シャイデック(小さな峠の意)だ。
ユングフラウヨッホへの乗り換え駅として通過する人が多いが、実にもったいない!ここは手が届きそうなほど間近に3山が迫り、山塊の大きさと岩肌の感触を確かめることができる、とびっきりの場所。ぜひ、この峠に滞在する時間を予定しておきたい。
ユングフラウ鉄道への乗り換え駅としてにぎわう駅の周辺には、レストランや売店が数軒あり、ここを起点にハイキングコースが四方に延びている。スイスでも指折りの絶景ランチ&絶景ハイキングをたっぷりと満喫しよう。
おみやげ屋さんの後ろにある望遠鏡(有料)をのぞいてみるといい。今まさにアイガー北壁にへばりついているケシ粒のようなクライマーが見えるかもしれない。クライネ・シャイデックは、クライマーが北壁をアタックしているとき、サポートメンバーが滞在する場所でもある。頂上直下、岩壁がV字形に切れ込んだあたりにクモが手足を広げたような氷雪の模様が見つかるだろうか?これが難所として知られる“白い蜘蛛Die Weisse Spinne”。その巣にかかったら容易に抜け出せないとクライマーたちから恐れられており、1965年に日本人登山家が遭難した場所でもある。そして、峠の西側には氷河を抱いたユングフラウがそびえる。左側の肩にちょこんと乗っかった銀色のドームがある場所がユングフラウヨッホだ。
線路を渡った丘の道中には、小説家新田次郎の記念碑もある。富士山測候所に勤務した新田次郎は、その体験をもとにした『強力伝』で直木賞を受賞し、山岳小説の分野を開拓した。1961年から数回にわたってスイスを訪れ、『アルプスの谷 アルプスの村』『栄光の岩壁』『アイガー北壁気象遭難』などを執筆。1980年に亡くなったあと、夫人によってクライネ・シャイデックのアイガーが見える場所に碑が設置された。