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スイスの人々はすごいことを考える。日本ではまだ汽車の時代、京都に初めて電気鉄道が登場した1896年(明治29年)に、この小さな国では、アルプスの岩壁に穴を開けてヨーロッパの屋根の上まで列車を走らせる工事が始まった。最大勾配250パーミルのトンネルを掘り、線路の間に歯車を噛ませ、16年の歳月をかけて夢は現実となった。全長7.1kmのトンネルを抜けて3454mの高みに立った人々が見たものは、乙女ユングフラウJungfrauの透きとおる長い髪、ヨーロッパ最長のアレッチ氷河だ。
インタラーケンからグリンデルワルト、またはラウターブルンネンを経てユングフラウヨッホを目指す。最新ロープウエイ・アイガー・エクスプレスの登場で、グリンデルワルト経由で行くルートの所要時間は大きく短縮された。従来の登山列車もそのまま運行しており、ラウターブルンネン経由のルートはこれまでと変更はない。アイガー・エクスプレスを利用しても、登山鉄道でも料金は同じだ。クライネ・シャイデックからユングフラウヨッホへの電車は、オフシーズンにはアイガーグレッチャー駅で乗り換える必要があることも。
ユングフラウ鉄道は、全線の4分の3がトンネルの中。おかげで雨の日も雪の日も365日運行している。クライネ・シャイデックを出た列車は、右にユングフラウの氷河や崖の上に乗っかったミューレンの村、左にヴェッターホルンを見ながらアルプを上る。アイガーグレッチャー駅を出るとすぐにトンネルに入り、あとはアイガーとメンヒの胎内をひたすら上る。クライネ・シャイデックから鉄道駅としてヨーロッパ最高地点にあるユングフラウヨッホまでの所要時間は41分。人気の登山鉄道と展望台なので、訪問を決めたらすぐに予約を入れておこう。ユングフラウ鉄道もオンラインで個人予約ができる。予約だけでも、切符との同時購入でも可能。
オンラインの購入も可能で、予定の出発時刻とユングフラウヨッホでの滞在予定時刻を入力するとタイムテーブルも示してくれる。天気がいいと乗客が増えるので、個人予約(CHF10)しておくことをおすすめする。座席番号まで指定されるものではなく、個人予約を行った乗客用のスペースが確保される仕組みだ。
連続する3日間~8日間に使える交通パス。ユングフラウ鉄道グループの交通網のほか、トゥーン湖やブリエンツ湖などの湖船にも利用できる。アイガーグレッチャー~ユングフラウヨッホ間は追加料金CHF75(9/1〜CHF63)が必要だが、多くの展望台へ上ることができ、グリンデルワルト村内バスやポストバスにも使える。料金は3日間でCHF190。グリュッチアルプ経由でミューレンまで使えるがシルトホルンは通用範囲外。
日本人向けに発行される3日間のパス。バスや湖船には使えないが、ユングフラウヨッホまで1往復できる。日本の旅行会社で購入可能。
ユングフラウ鉄道は30分ごとの運航で以下のそれぞれの駅からユングフラウヨッホまでアクセスが可能だ。
インタラーケン・オスト発
料金/往復CHF238.80
始発/6:35(ユングフラウヨッホ8:11着)
上り最終/17:05(ユングフラウヨッホ18:41着)
グリンデルワルト発
料金/往復CHF222
始発/6:48(ユングフラウヨッホ8:11着)
上り最終/17:18(ユングフラウヨッホ18:41着)
ラウターブルンネン発
料金/往復CHF227.60
始発/6:32(ユングフラウヨッホ8:11着)
上り最終/17:02(ユングフラウヨッホ18:41着)
ユングフラウヨッホからの終電
18:47(インタラーケン20:23着)
※2023年のハイシーズン(6/1~8/31)にアイガー・エクスプレスを利用した場合の時刻。ハイシーズン以外は時期により変動あり。ウェブサイトにて要確認
ユングフラウヨッホ駅の構内には、郵便ポスト(記念スタンプが人気)、レストラン、みやげ店、時計店、チョコレートショップなどがある。
まずはエレベーターで標高3571mのスフィンクス展望台Sphinx Terraceへ。全面ガラス張りで冬でも快適な展望台に出る。南側に下る巨大な流れはヨーロッパ最長のアレッチ氷河Aletschgletscher。全長約20km、氷の厚さはなんと900mもあり、1年に約180mのスピードで流れているという。氷河を目でたどると、途中でもうひとつの氷河と合流しているのがわかる。この合流点をコンコルディア・プラッツと呼び、岸に山小屋が建てられている。
氷河に向かって右側。ひときわ大きい山塊がユングフラウ。北側には緑が鮮やかなクライネ・シャイデックと、遠くドイツの黒い森などが見えている。
展望を楽しんだらエレベーターで下り、トンネルを進んで雪原へ出てみよう。左側の目の前にそびえるピラミッドはメンヒ。雪原にはスノーアクティビティなどを体験できるスノーファンパークがあり、皆思いおもいに銀世界を楽しんでいる。
駅舎へ戻ったら、次に目指すは氷の宮殿Ice Palace。氷河の内部に氷像のギャラリーがあり、ライトアップされて青白く光っている。通路の途中からもう1ヵ所、外への出口がある。天気がよければプラトーPlateauと呼ばれる展望台まで行って、雪の感触を確かめてみるといい。この雪が200年後にラウターブルンネンの滝になるかもしれないし、何十万年もかけて氷河となるかもしれない。
2012年、ユングフラウ鉄道100周年を記念して、スフィンクス展望台と氷の宮殿を結ぶルートに設置されたアトラクション、ユングフラウ・パノラマ、アルパイン・センセーションも人気。7ヵ所に設置されているこのギャラリーでは、ユングフラウの歴史やその魅力を、幻想的な音と光と映像で紹介している。
ユングフラウヨッホでの滞在時間は、展望台から景色を眺めるだけなら1時間30分、アトラクションや食事も楽しむなら、2〜4時間といったところ。
5月中旬よりユングフラウヨッホのアレッチ氷河側でのアトラクションが「スノーファンパーク」としてオープンしている。
アトラクションは、子供から大人まで楽しむことができる。ユングフラウのひときわ白い雪の上で、さまざまなアトラクションをぜひ楽しんでみたい。
5~10月中旬の10:00~16:00に催行(悪天時は中止になることもある)。
●チロリエンヌ(ジップライン) 大人CHF20、子供CHF15
●スノーチューブ(ソリ) 大人CHF15、子供CHF10
※子供料金は6~15歳に適用
危険なため個人では立ち入ることのできないアレッチ氷河を、ガイドの先導で歩く1泊2日のツアー。1日目はユングフラウヨッホから約4時間歩いてコンコルディア・プラッツへ。山小屋に泊まって、2日目は6時間かけてフィーシュFieschまで下り、電車で戻ってくる。要予約。'23年の催行は6/17〜9/24の火・木・土曜、9/30、10/1、10/7、10/8出発。