更新日
2024年8月13日
公開日
2023年8月22日
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ノルマン(パレルモの)王宮は、パレルモ市内で最も古い地域に位置し、古代カルタゴの遺跡の上に建築された。その後1072年のノルマン人のパレルモ侵攻後は、宮殿として整備され1130年のルッジェーロ王の即位後は、権力の象徴として王宮へと変化していった。

宮殿内には薬草園や織物工房なども整備され、ルッジェーロ2世、グリエルモ1世、2世と続く時代には、多種多様な民族の文化との共存共栄が計られた。

その後のフリードリヒ2世の治世の後、16世紀のスペイン統治時代、シチリア・ブルボンの時代を経て王宮の改築が進み、現代はシチリア州議会として政治の中心になっている。

入場は王宮正面から

パレルモの中心クアットロ・カンティからヴィットリオ・エマヌエーレ大通りを西に500mほど歩くと緑濃い公園が目に入ってくる、ここから中に入りヴィットリア広場の切符売り場で入場券を購入後、パルラメント広場の王宮入口で待つ。

2019年開設の新しい入場口だ。ブックショップの脇を通りながら内部に入り、マクエダの中庭経由で、王宮2階のパラティーナ礼拝堂、3階の王の居室の順で見学をする。その後、大階段を下りて外に出て、王宮の西側に広がる王宮庭園(切符は王宮と一緒に購入)の散歩を楽しもう。

緑に囲まれたカフェやところどころに置かれた瀟洒なベンチでひと休みを。亜熱帯気候の多種多様な植物で埋め尽くされ、手入れの行きとどいた庭園でのひとときが楽しい。大きなゴムの木、双子のヤシの木などとともに、美しい曲線で彩られた花壇や噴水、レモンやオレンジの実る木々などがすがすがしい。

1階のマクエダの中庭からはモンタルト大公の間と呼ばれる大きな部屋に入ることができる。パレルモの歴史を伝える特別展が開催されていることが多い。この地下には、紀元前5世紀ごろ造られ、当時は町の城壁であった古代カルタゴの遺跡を見ることができる。

パラティーナ礼拝堂(王宮付属礼拝堂)

高見から見下ろす「全知全能の神」。その下には「祝福のキリスト」が描かれている

ノルマン王宮の2階に設けられたアラブ・ノルマン様式の礼拝堂。歴史的価値からいっても、その華麗さからいってもパレルモ観光のハイライトといえる。入口はパルラメント広場Piazzadel arlamentoから。

王宮の2階に大階段で上がると、正面にある中庭に面して左側の壁面に施されたモザイク画が目に入る。ここが礼拝堂入口。ここだけでもすでに相当インパクトがあるのだが、これは1800年に新しく加えられた比較的新しい物だ。内部は大理石のアーチにモザイク画がちりばめられ、まるでモザイクのプラネタリウムだ。コンスタンティノープル、ラヴェンナと並びキリスト教美術の最大傑作に称されている。

「聖ペテロと聖パウロを従えた玉座のキリスト」(玉座の上方)は14世紀の物。内陣の上にある半球形の円蓋には、12世紀の「天使に囲まれた全知全能の神キリスト」が、その下には「ダヴィデ」「ソロモン」「ザカリア」「洗礼者ヨハネ」が、祭壇の背後には「祝福のキリスト」が、それぞれ描かれている。

側廊には「聖ペテロと聖パウロの物語」など、聖書の世界が鮮やかに描かれていて目を奪われる。向かって右側には一面にモザイクがちりばめられた豪華な説教壇もあり圧倒される。豪華でまばゆいモザイクに目を奪われて忘れがちだが、イスラム建築の特徴である鐘乳石模様の天井(ムカルナス)や床のコズマーティ様式(イスラムとビザンチンの融合した様式)のモザイクも見過ごせない。

パラティーナ礼拝堂は、11世紀末のイスラムやビザンチン文化の影響を今に伝える独特な物だ。この礼拝堂はノルマン王朝のルッジェーロ2世が1132年に着工し、8年後の1140年に聖ペテロに献堂した。12世紀の贅を尽くした空間に酔いしれること間違いなしだ。

ルッジェーロ王の間

架空の楽園か?

ノルマン王宮3階の王の居室のなかにある、美しいモザイクで飾られた部屋。ルッジェーロ2世のために、息子であるグリエルモ1世が造らせた。パラティーナ礼拝堂のモザイクが、キリストとその弟子たちを描いたキリスト教美術であるのに対し、ここのモザイクは狩猟のシーンや寓話の世界など世俗的なシーンが作品の中心。

植物、動物、人物などがシンボライズされ精巧に描かれる一方、その背景は架空の楽園のようでもある。ノルマン朝の権力を象徴する寓話的な場面は、ノルマンの王に好まれた主題だと言われ、理想としたイスラム教の楽園である「ジェノアルドの庭園」の光景を描いたものではないかとも言われる。

写真

  • 三層の回廊で飾られたマクエダの中庭は、圧倒的な大きさ
  • 多様な文化が花開いたノルマン時代の傑作
  • 3階の通路。州議会の執務室も近いので静かに移動を
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