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160年を超える歴史があり、シンガポールの発展にも深い関わりをもつシンガポール・ボタニック・ガーデン(以下ボタニック・ガーデン)が、2015年、世界遺産に登録された。このガーデンは、実はシンガポールの歴史の断片を秘めた場所。歴史スポットや希少な植物が数々ある。
2021年に園内のナショナル・オーキッド・ガーデンが改修を終え、新たな見どころが登場。さらに拡張エリア、ギャロップ・エクステンションも開園。ますます注目が集まる植物園を散策してみよう。
南北に細長い52ヘクタールの広さは、ひと回りすると3~4時間はかかる。熱帯固有の枝ぶりの見事な木々が生い茂り、なかでも47本が国が保護するヘリテージツリーに指定されている。
地元の人々にとっては散歩やジョギングに訪れたり、休日はピクニックをしたりと憩いの場である。シンフォニー・レイクの池の中のステージでは週末にコンサートが開かれることも。
ナショナル・オーキッド・ガーデンやジンジャー・ガーデンなど見どころも盛りだくさん。なるべく朝早い時間に訪れて、小鳥のさえずりを聞きながら、散歩するのが気持ちいい。
タングリン・ゲートからナショナル・オーキッド・ガーデンへの道沿いには、世界遺産登録の決め手となったスポットや植物が点在。
白鳥が泳ぐ池のそばに立つビクトリア様式の美しい展望亭。1850年代に別の場所に建造されたものが1969年に移築された。
5ドル紙幣の裏に描かれたテンブスの大木がある。この木は下方の枝が地を這うように横に伸びていて、その特異な姿が昔から有名。枝に座って記念写真を撮るのが人気だったとか。150年前の開園以前からここにあったといわれる。
サガ(Saga)のヘリテージツリー。このサガの木の赤い小さな実は昔から幸せを呼ぶ実といわれ、100個集めると願いがかなう、恋愛のお守りなどさまざまな言い伝えがある。1~2月頃、7~8月頃に実がなる。
花がトラの模様に似ているので「タイガーオーキッド」と呼ばれ、ランのなかではひと株の大きさが世界一。昔はシンガポールに自生していたが、今ではガーデン内2ヵ所に残るのみ。
このれんがは日本統治時代、外国人捕虜が造らされたもの。れんがの表面に彫られた無数の矢印は、抵抗の証を刻んだものという。
可憐に咲く国花のランも見もの。1893年、アグネス・ジョアキムさんが発見した新種の自然交配種のランで、当時の園長によって彼女の名前を冠した「バンダ・ミス・ジョアキム」と名づけられた。
160 年を超えるヒストリー
開園は1859年。植物の研究に熱心だったラッフルズ卿が造ったフォートカニング・パークの植物園が前身。その遺志を受け継ぎ、熱帯雨林の研究の場として現在にいたっている。
世界遺産登録の理由は?
◉ランの交配の研究は有名だが、ここでゴムノキから樹液を効率よく採取する方法が開発された。このことがゴム産業を躍進させ、シンガポールの経済発展の礎を築いた功績が大きな理由。
◉歴史建築物や英国式の庭園、ヘリテージツリーがあること、絶滅に瀕している植物の保護、育成なども認められた。
おもなゲートは南のタングリン・ゲート(オーチャード・ロードのタングリン・モールから徒歩7~8分)と、東のナッシム・ゲート、北はMRTボタニック・ガーデン駅そばのブキ・ティマ・ゲート。
徒歩所要時間
◉タングリン・ゲート~ナショナル・オーキッド・ガーデン:約12分(800m)
◉タングリン・ゲート~ナッシム・ゲート:約20分(1.6km)
◉ナッシム・ゲート~ナショナル・オーキッド・ガーデン:約8分(660m)
◉ナッシム・ゲート~MRTボタニック・ガーデン駅:約10分(1.1km)
日本語ガイドツアーもある
毎月第1土曜の10:00から所要約2時間。当日9:45からナッシム・ゲートのビジターセンター脇のカウンターで参加受付。定員30名。料金:無料
園内にはテーマを設けたさまざまなガーデンや自然散策トレイルがある。注目すべき場所をご紹介。
中南米から東南アジアまで熱帯地方に分布する250種ものショウガ科とその近縁種を栽培。ここで1859年からジンジャーの研究が行われていたのが発端となっている。独特の形状の種類豊富なジンジャーは興味深い。
おもに東南アジアで伝統的に薬に使われる植物を約400種類、説明文とともに展示栽培している。循環器系、消化器系など効能のある部位ごとに分けられた6エリアで構成。植物の秘められたパワーに驚かされる。
ナッシム・ゲートの近くに約6ヘクタールの熱帯雨林の森があり、原生林も部分的に残っている。高木からシダやハーブまで約300種類の植物が生い茂る森の中に遊歩道が設置されていて、散策できる。