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フランス料理界を語る時に、忘れてはならないのが日本人の存在。レストランだけでなくパティスリーやショコラトリーでも日本人料理人の活躍は著しく、ジャパニーズ・スイーツの特徴は、フランスのデザート界にアクセントを付けています。
例えば素材について、一昔前だと、それは抹茶でした。近年では(スイーツに限りませんが)柚子がよく使われるようになりました。素材以外にも、日本人パティシエが独自の感性で生み出す、伝統的なフランス菓子に注目が集まっています。
その中でも今、代表的なのがMORI YOSHIDA(モリ・ヨシダ)です。店内はサントノレやムース・オ・ショコラなど、フランスの華やかな定番スイーツが並びますが、口に運んでみると味はシンプルかつ繊細。無駄なものを無くそうとすると、とかく味が単調になる恐れもあるのですが、ここのガトーは絹糸のような美しさがあります。日本風のショートケーキも扱っており、特にスポンジの口当たりが良く、同店の特徴が凝縮されている印象でした。
店舗を構える場所も、パリで随一の高級住宅地である7区。ここの住人たちは舌が肥えているため、下手な商品を出す店は続きません。パリの中でも食のレベルが高い区です。
モリ・ヨシダのショートケーキに代表されるように、日本の素材を取り入れるだけでなく、日本のスイーツをフランス風にして売り出すパティスリーも最近増えてきました。その1つがシフォンケーキを扱うCiel(シエル)です。
フランスのパティスリーを巡り気付いた人もいるかもしれませんが、伝統的なフランス菓子にシフォンケーキ(スポンジを使ったケーキ)は、ありません。基本的にムースベースで作られています。シエルはフランスでは馴染みが薄いシフォンケーキを、全面に押し出したお店です。
以前、他媒体で取材した時にシエルが強調していたのは、口に入れたときのテクスチャー。バターを多く使い、ムースを主体とした重めのフランスのケーキとは異なり、シフォンケーキは軽さが特徴です。見た目は大きくてもマシュマロのように食べられる、さっぱりした感触が、フランス人の好奇心を引いているそうです。
持ち帰りの他にも、店内はバーカウンターのようなサロン・ド・テになっており、昼はお茶、夜はお酒に合わせてシフォンケーキを堪能できます。
一方で、パリで本格的な日本の味を欲した時はどこがいいのか? その際はYamazaki(ヤマザキ)がおすすめ。名前の通り、日本の山崎パンがパリで展開するパティスリーです。日本のショートケーキからフランスのガトーまで一通り味わえ、サロン・ド・テも併設しています。
日本と比べて、フランスのスイーツは甘いと感じる人も多いと思います。ヤマザキの担当者から聞いた話しでは、フランスではデザート以外の料理に砂糖を使わないため、そのため糖分を食後のスイーツに求めるそうです。一方で日本料理は、デザート以外の調理にも砂糖を使います。その違いがスイーツにおける甘さの程度として出るのだとか。
甘さにもその国の作法が反映されているんですね!
(5月お題"今はやりのスイーツ")