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今月18日(木)か23日(火)までパリ市立劇場(Théâtre de la Ville)にて舞台『Shun-kin』が公演されています。同作品は作家・谷崎潤一郎の『春琴抄』と『陰翳礼讃』をベースに、英国人演出家・サイモン・マクバニーが味付けしたもの。そこに世田谷パブリックシアターがコラボレーションし、深津絵里さんとチョウ・ソンハさんなどが出演する興味深い内容になっています。18日初日に鑑賞する機会があったので、行ってきました。
感想は、まず日本文化を背景として持っている人の場合、存分に楽しめると思いますが、それら背景がゼロのフランス人からすれば「ブラボー」と言えるかは疑問です。セリフは日本語のみのため(もちろん字幕は出ますが)、事実、周囲の席では退屈そうにしている人々もいました。
ただし、それは前半部分でのこと。後半部分は変わります。谷崎作品特有の耽美とその世界観が、和のバックグランドが無いフランス人も十分に魅了していました。興味深かったのが、長い一本の木棒を使って部屋の空間、三味線などを、落語の扇子の要領で表現しようとしていたところ。演出家は英国人ですが、日本文化の根底にある「シンプルゆえの美しさ」が随所に光る舞台になっています。