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今回から教会、遺跡、美術館などのローマの見所を、ガイドブックに載っていない裏話を毎回5~6割混ぜながら放出していきたい!と思います。
さて、第一号となる教会は、「主よ、どこへ行かれるのですか教会」という、面白い名前の教会です。教会はとても小さく、内部は絵画で飾られていてかわいいですが、何よりもこの教会を有名にしているものといったら、キリストの足跡です。
↑こちらが有名なキリストの足跡です!
ところで教会にはどうしてこんな面白い名前がついているのでしょう?
この教会は1982年に"空飛ぶ教皇"との異名を持つ前ローマ法王、ヨハネ・パウロ2世(1978-2005)により、"ローマの歴史とキリスト教会の歴史にとって特別な重要性を持つ場所"と定められた程、実は重要な教会なのです。
↑現在の教会は1600年代に改修されたものです。見かけも内部も小さいです。
そもそも教会名の"ドミネ・クオ・ヴァディス"とは、ラテン語で Domine quo vadis? と書き、「主よ、どこへ行かれるのですか?」という意味です。
伝説では、この場所でキリストとペテロ(12人の弟子のうちの一人)が最後に出会った場所です。
当時、ローマ帝国内で少数派であったキリスト教徒への迫害は日に日に激しくなっていき、信者を見つけると、油を塗って松明の代わりにして燃やして殺したり、コロッセオの中ではライオンや猛獣がうじゃうじゃいる中に網に入れたまま置き去りにして、観衆が熱狂する中、ライオンにずたずたに引き裂かれ餌にされたりしました。
女性の信者の場合は目玉と乳房を切り取ってゆっくり殺すこともよくありました。
キリスト教は公式な宗教とまだ認められていなかったので、見つかると大変なことになったのです。これから250年後の313年にようやくローマ帝国の公式な宗教と認められます。
例えば、もしキリスト教信者の女性が男性にプロポーズされた場合、最初は夫にも信者であることを隠して結婚しますが、一緒に生活していれば、聖書を読んでいる所が見つかったりしていつの間にかばれてしまいます。夫から当局への裏切り告発もとても多かったのです。
女性達の信仰は固く、牢屋に入れられた後、身分の高い女性であればある程、皆への見せしめの為にできるだけひどい方法で殺されました。
そういった者の死ぬまで信仰をつらぬいた日記や手記が相当数残っているので、興味がある人は読んで見て下さい。古代の人の揺れ動く感情が描写されていて、涙なしには読めません。(古ギリシャ語からイタリア語、英語に訳したものがでています)
話がそれてしまいましたが、ペテロはこういう状況の中、皆から危ないので逃げろと説得され、ローマ皇帝ネロの行うキリスト教徒への迫害から逃れるために、ローマを脱出しようとします。
ペテロが夜中にこっそりローマを脱出し歩いていると、明け方頃、この場所で目の前にキリストが現れます。ペテロは「Domine, quo vadis?」(主よ、どこへ行かれるのですか?)と尋ねると、イエスは「Eo Romam iterum crucifigi.」(再びローマへ戻り、十字架に架かりに行くためだ。)と答えました。
この答えを聞きペテロは恥じ全てを悟り、元来た道を迷うことなくローマへ引き返します。すぐに捕らえられ、十字架にかかり殉教しました。これが暴君ネロ帝治世下の64年のことです。
イエスの弟子、ペテロ(ピエトロ、ペトロ、ピーターとも)はもともとは漁師さんで、12人の弟子のうち一番最初にキリストにリクルートされた人物です!
ある日ペテロは、ガリラヤ湖(現イスラエル)で魚をとるため、弟のアンデレと網を湖に打っていました。そこへイエスが通りかかり、「私について来なさい。人間をとる漁師にしてあげよう。」と声をかけられスカウトされます。その時、イエスのこの深い言葉の意味が解ったかどうかはわかりませんが、兄弟はすぐに漁師を辞めてキリストについていきます。
文献を読むと、短気で熱血漢なイメージのぺテロですが、後にキリストの弟子の中で最も大役を司る天国への鍵を受け取り、初代ローマ教皇となったのでした。
殉教するときも、「キリストと同じ様に(頭を上にして)十字架にかかるのは、自分にはたいそうもない事だから、どうか自分の頭を下にしてくれ。」と頼み、頭を下にして十字架にかかったのでした。これがペテロの逆さ十字です。
ぺテロは魚屋さん、漁師さん、サンダル屋、鍵屋さん、時計屋さん、アパートの門番(管理人さん)を護る、守護聖人となっています。ローマで殉教したので、ローマ市の守護聖人ともなっている頼もしいペテロです。
↑教会の中にはペテロの十字架にかかるシーンや(写真の左側の壁に逆さ十字架の絵が見えます)、キリストとペテロとの出会いの場面のフレスコ画が飾られています。
↑マリア様です。
いよいよです。これがキリストの足跡です!
教会を入るとすぐのところの床に、キリストがこの教会のすぐ横を通る、ローマ街道アッピア街道の敷石の一つに残したといわれる足跡が残っています。これはイエスによる奇跡の聖遺物とされますが、実はこの教会のものは大理石にとられたコピーでオリジナルは近くのサン・セバスティアーノ聖堂に飾られています。でもしっかりくっきり残っています!
実際にはローマ時代にこの道を通ってお参りへ行く旅行者が、旅の安全などの為に奉納した"願"ではないかと思われています。
一度は訪れてみたい小さな教会です。ローマのお奨め教会の一つに推薦します!皆さん是非行ってみてくださいね!
足のサイズは27.5cmで、昔の人にしてはとても大きいとのこと!筆者の靴と比べてみました。
インフォメーション:
この教会の正式名称は別にあって、Chiesa di Santa Maria in Palmisというのですが、ドミネ・クオ・ヴァディス教会の方でも良く知られています。タクシーの運転手さんにもドミネ教会で通じます。
住所 Via Appia Antica 51, Roma (アッピア街道51番地)
電話番号 +39-06-5120441
E-mail casmadrid@tiscalinet.it
オープン時間 毎日8~18時(夏は19時まで)
*ミサの時間 火曜日を除く毎日 平日は18時から(夏の平日は19時から)、日曜祝日は9時、11時、18時(夏は19時に)
*行き方は教会はサンセバスティアーノ門から800mのところにあります。徒歩10分くらいです。アッピア旧街道は一日中交通が激しいですので、車には充分ご注意を。