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ランズゲマインデ(Landsgemeinde、青空議会)2016年春

ヘス順子

ヘス順子

スイス特派員

更新日
2016年4月25日
公開日
2016年4月25日
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毎年4月の最終日曜日、ランズゲマインデ(ランツゲマインデ)と呼ばれる「青空議会」が行われます。

初めて「青空議会」と聞いたとき、青空市場のような、井戸端会議のような、のどかなおしゃべりのような印象を抱いていました。

が、これは州の最高議決機関が行うれっきとした投票なのです。

アッペンツェルの街の中心にある「ランズゲマインデ広場」に住民が集まり、なんと挙手によって投票を行うという昔ながらの(?)直接民主制スタイル。

このランズゲマインデが行われているのは、2016年4月の時点でグラールス州とアッペンツェルインナーローデン準州の2箇所だけだそうです。

1378年から行われているというので、638年もの歴史がある伝統行事で、議会に参加する住民だけではなく観光客も訪れる一大イベント。

2016年は4月24日に開催されたので、足を運んでみました。

11時半からはブラスバンドが出動します。

ランズゲマインデが行われる広場から目抜通りのハウプトガッセに続くところからスタート。

賑々しい音楽を奏でて行進します。

しかし、今日はあいにくの雪。

しかも、暖かい春のお天気から一転しての雪。

ブラスバンドは・・・うつむき加減で、笑顔なし・・・

小さい子供たち(推定6歳くらい)も正装して行進していたのですが、頬と鼻が寒さで真っ赤になって震えながらの行進でした・・・

こんな雪だから、そんなに人は来ないのでは?

11時45分くらいの広場の様子。

近くのカフェに展示されていた、今日のためのディスプレイ。

ランズゲマインデ広場の中心にある像のミニチュアです。

続々と人が集まってきたのは開始15分前の11時45分くらいから。

中にはスーツを着ていたり、敬意を表してか(?)伝統衣装に身をつつんでサーベルまで下げていたり。

気合十分です!

「雪だから家であたたかいお茶でも飲んでいるのでは」などと思う怠け者は私くらいなのでしょう、広場はあれよあれよという間に人で埋め尽くされました。

12時からは、市庁舎から議長をはじめとした重要人物が正装し、ハウプトガッセを行進してランズゲマインデ広場に到着。

少し高くなった席から、議長が挨拶をしてスタート。

今回は5つの議題について住民が賛成なら挙手をし、「投票」しました。

「あ、隣の人は手をあげている」とか誰も気にしないのか、自分の意見を堂々と表明する住民たち。

日本の投票所の、仕切りのある記入台で、匿名で議員名や政党名を記入し、誰にもわからないように用紙を折りたたんで投票するスタイルに慣れていた私にとって、このプライバシー皆無のオープンな投票は驚きの連続でした。

そういえば、アッペンツェルインナーローデン準州では女性の参政が認められたのが1991年。

スイスの中で一番遅く、連邦裁判所がほぼ強制的に女性に参政権を与えたところ、女性は「そんなことをしている暇はない!」と反発したというから、とても保守的で「伝統」を守る州だといえそうです。

今日は、もちろん女性もたくさん訪れていました。

さて、緑色の紙を片手に広場に集まってきた人々。

ここでは紙をかざすことなく、手だけの挙手。

今回は5つの議題について投票が行われました。

・情報保護法の改正について(投票結果は「Ja=yes」)

・税法の改正について(投票結果は「Ja=yes」)

・水圧法の改正について(投票結果は「Ja=yes」)

・公共機関に関する法について(投票結果は「Ja=yes」)

・小学校システムの強化について(投票結果は「Nein=no」)

途中で、声明を読み上げるとき人名を間違えて言い直したり、ゲホゲホゲホゲホずっと咳き込んでいたり、なんだか緊張感はあまりありませんでした・・・

このゆるい雰囲気もおもしろかったのですが、数の数え方(=集計)が素晴らしいです。

なんと、「適当に見当をつける」のです。

日本では紅白歌合戦のようなお祭でさえ野鳥の会のみなさんを動員し、カウンターで必死に正確に数えます。

が、れっきとした議会にもかかわらず、その印象で決めるというから・・・のどかですね・・・

雪だからか、1時半には終了して、住民はそそくさとカフェや帰途へ!

帰りにもブラスバンドが出動し、議長などの重要人物や警官、子供たちはゆっくりゆっくり行進しながら市庁舎に戻っていきました。

お腹がすいたのでカフェで食事をしていたら、相席だったアッペンツェルインナーローデンの老夫婦が、「今年は雪だから少なかった!」「あの数え方はなんだ、なってない」と笑顔でブツブツ言っていました。

これから継続されるか不明なこのランズゲマインデ。

あまり効率的ではないのですが、この老夫婦を見て、誇りにしている楽しめる行事なんだという印象を受けました。

なんだか、ずっと続けていってほしいな、とも思います。

2016年4月24日 日曜日

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